宮城・女川原発2号機の再稼働差し止め訴訟 27日に控訴審判決
東北電力女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)の重大事故時の避難計画には実効性がないとして、石巻市の住民16人が東北電力に再稼働の差し止めを求めた訴訟の控訴審で、仙台高裁(倉沢守春裁判長)は27日、判決を言い渡す。1審・仙台地裁判決では避難計画について判断せず、原告の請求を棄却。高裁が踏み込んだ判断を示すのか注目される。
避難計画の不備のみを理由に差し止めを求めた全国初の訴訟で、2021年5月に提訴した。避難計画の不備を理由に初めて、日本原子力発電東海第2原発(茨城県東海村)の運転差し止めを命じた水戸地裁判決(同年3月)を踏まえ、専門的知見がある東北電側に有利な科学論争を避ける戦略をとった。
1審で原告側は、県と石巻市の避難計画では、事故発生後に被爆状況を調べるための検査所が渋滞で設置できず、避難用バスも確保できないなどとして「原告らの人格権が侵害される具体的危険がある」と主張した。
ところが地裁は23年5月、「住民側は事故の危険について具体的な主張・立証をしていない」として、計画の実効性について言及しないまま請求を棄却。原告側は「門前払いだ」として控訴した。
控訴審で、原告側は事故の進行に応じ段階的に安全対策をとる全5層の「深層防護」に基づき「大事故の発生は否定できず、第5層にあたる避難計画の実効性が欠如していれば、住民側に重大な危険が及ぶ」と改めて差し止めを求めた。
一方、東北電側は「(原告側は)避難計画の不備について主張することに終始している」として、請求棄却を求めた。
控訴審判決のポイントは、1審判決が触れなかった実効性の中身についてどれだけ踏み込むかだ。高裁の瀬戸口壮夫裁判長(当時)は当初、実効性について審理する方針を示したが、結審前に裁判長が交代した。
原告側弁護団の小野寺信一団長はこの経緯を踏まえ「裁判所の当初の姿勢が維持されるかが最大の問題だ。計画の実効性まで判決が踏み込めば、勝訴できる」と指摘する。
女川原発は11年3月の東日本大震災で被災し、全3基が停止した。東北電は耐震強化や津波対策を講じ、原子力規制委の審査を通過した2号機は宮城県など地元自治体の同意を得て10月29日、13年半ぶりに再稼働した。
しかし直後に機器のトラブルで一時停止し、11月13日に改めて原子炉を起動。東北電は12月中の営業運転開始を目指している。【遠藤大志】
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