浜松医科大が「献体不足」 解剖実習や若手研修への対応に苦慮「ご理解を」

2025/09/06 09:26 

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 浜松医科大(浜松市中央区)で、医学の向上のために自身の遺体を提供してもらう「献体」が不足し、関係者が実習や研修での対応に苦慮している。献体への関心の低下や死生観の変化など複合的な要因が絡むとみられ、静岡県内唯一の医師教育機関の同大は「医療を担う学生の教育に、解剖実習は必要」と協力を呼びかける。
 解剖実習は主に医学科2年生が、病気が起きる場所が人体であることを理解し、その構造を手に取って理解するために臨む。同大解剖学講座の佐藤康二教授は「遺体にメスを入れるのは基本的には許されないが、医学生は社会のためだからこそ行える」と話す。同大の卒業式で毎年のように卒業生が答辞で「解剖実習で命の大切さを改めて学ぶことができた」と謝意を述べるなど、貴重な機会になっている。
 献体登録には静岡県内在住で55歳以上であることなどの条件があり、引き取り数は現状、同大に必要な数に足りていない。学生実習での遺体の割り当ては、従来は学生4人に対して1体だったのが24年からは5人に1体になった。
 同大では学生の実習のほか、19年からは若手医師らの手技・手術研修「カダバー・サージカル・トレーニング(CST)」も開始。同研修により必要な献体の数は10体増えた。現在は年間40体の引き取りと翌年に備えた60体程度を保管できるのが理想だが、引き取りは24年時点で39体だった。
 減少の原因には国民の死生観の変化に加え、遺体引き取りから返却までに数年かかることへの遺族のためらいなどもあるという。佐藤教授は「解剖実習は医師として命を扱うメンタルを養うためにも非常に重要な機会。県民の皆さまにもご理解いただきたい」と訴える。
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