南海トラフ地震による停電…発災1日後も8割 新被害想定が示すのは? 静岡県内、初動体制調整…

2025/05/11 09:00 

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 内閣府が13年ぶりに更新した南海トラフ巨大地震の被害想定。上下水道施設や電気、ガスなどのライフラインへの影響は長期に及ぶ可能性があらためて示された。各想定と静岡県内の対策の状況を点検する。

 内閣府の新被害想定では、電力への影響が広域に及ぶ可能性が示された。発災直後の停電は約160万軒(停電率90%)、1日後も約140万軒(82%)と大半の地域に及ぶ。2024年の能登半島地震では、発生から1カ月程度でおおむね復旧したが、土砂災害やがれきの発生により道路が寸断し、復旧が遅れた地域もあった。こうした課題を踏まえ、早期復旧に向けた道路啓開や初動体制の調整、無電柱化などが進められている。
 能登半島地震の発生直後、被災地を管内とする北陸電力送配電は立入困難な場所で設備の被害状況を把握するためにドローンを活用。避難所や医療・福祉施設を優先して電源車による電力供給を試みた。ただ、いずれの運用も国や自治体との事前調整が不十分だったことが明らかになった。
 高圧電源車について、静岡県の富士川以東を管内とする東京電力パワーグリッドは66台、富士川以西が管内の中部電力パワーグリッドは62台所有し、災害発生時は人命救助を優先して病院などに配備する。能登半島地震を受け、国は電源車や燃料補給用のタンクローリーの運用に関するガイドラインを各一般送配電事業者に通知。各事業者は支社や営業所ごとに燃料の貯蔵方法や実施計画を調整した。
 道路啓開に関する連携も課題になったことから、東電、中電の各送配電事業者は4月までに、関東、中部の各地方整備局と災害協定締結を完了した。倒木による停電を避けるための事前伐採についても、管内各自治体と協議を進めている。
 国が近年推進する無電柱化事業も、電柱倒壊による停電や道路閉塞[へいそく]の防止に一定の効果があるとされる。県内で事業が完了した道路は13年度末時点で約159キロ、23年度末時点は約187キロ。国土交通省によると、21年度末時点の本県の無電柱化率は、全国12番目の2%未満にとどまる。
 無電柱化が進まない背景に、事業のコスト高や工期の長さがある。県によると、工事には各一般送配電事業者や通信会社、自治体などとの合意形成が必要で、一般的に完成まで7年を要する。県は「管路を浅い位置に埋設するなど多様な整備手法を活用し、さらなるコスト削減や事業の加速化を図る」としている。
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