減税で消費喚起? 財政悪化? 英国では通貨急落の経済危機

2025/07/02 05:01 

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 3日公示、20日投開票の参院選では、消費税の減税が大きな争点になる。野党が5%への引き下げや食料品の消費税ゼロなどを訴え、与党でも減税論がくすぶる。減税が消費者の生活を支えるという主張の一方で、大幅減税に踏み切れば財政悪化につながるリスクも指摘される。

 石破茂首相は先月23日の記者会見で「消費税は医療、年金、介護などの社会保障を支える大切な財源だ。安定財源なしに減税するような無責任なことはできない」と改めて訴えた。

 2012年の「税と社会保障の一体改革」で消費税の10%への引き上げが法律で決められた際、税収は全て社会保障財源に充てることが定められた。

 消費税を充てることが決められている医療、年金、介護、子育ての社会保障4分野の経費は、25年度予算で34兆円。このうち約20兆円は消費税収が財源だ。消費税率を1%下げるたびに、国は約2兆円、地方は約6000億円の税収を失うとされる。

 減税推進派は、減税が消費を喚起し、必ずしも税収減につながらないなどと主張するが、日本の財政状況は国際的に見ても悪い。

 国際通貨基金(IMF)によると、政府が保有する金融資産を差し引いた純債務残高の対国内総生産(GDP)の割合は、23年時点で日本は136%。米国は94%、英国は91・8%で、日本は主要7カ国(G7)の中で最も高く、他の諸外国と比べても最悪水準だ。

 25年度末の国債発行残高は1129兆円に上る見込みだ。

 財政悪化が進み、国債や円の信認が低下すると、金利が大きく上昇したり、過度な円安で物価が急上昇したりするリスクがある。

 近年の経済危機では、英国の「トラス・ショック」が有名だ。

 22年9月に発足したトラス政権は、減税総額が5年間で約450億ポンド(約9兆円)に上る減税プランを発表。財政悪化への懸念から、通貨ポンドが急落するなど市場の混乱を招いた。トラス首相(当時)は在任約1カ月半でのスピード辞任に追い込まれた。【田中裕之】

毎日新聞

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