「1000%戦争のせい」 空路混乱、東南アジアの観光地から悲鳴
米国・イスラエルとイランの戦闘を受け、東南アジアで観光業への打撃が広がっている。空路の混乱により外国人観光客が減少する中、原油価格高騰による物価上昇も重なり、観光地は「二重苦」に直面している。
「観光客はほとんど消えてしまった。100%、いや1000%、戦争のせいだ」
巨大な涅槃(ねはん)像で知られるタイ・バンコクの寺院「ワット・ポー」。炎天下で客待ちをしていたトゥクトゥク(自動三輪)の男性運転手(58)はそう言い切った。
トゥクトゥクの借り賃とガソリン代は1日当たり700バーツ(約3500円)。これ以上稼がなければ赤字だが、イランで戦闘が始まってからは、一人も客がつかまらない日もある。「コロナ禍もつらかったが、政府の給付金があったし、燃料や物価も安かった。今の方が厳しい」
背景にあるのは、航空便の混乱だ。中東のハブ空港を経由する欧州便が激減したうえ、迂回(うかい)路を取る航空便の運賃も高騰。米ブルームバーグ通信によると、アジアと欧州を結ぶ主要路線の価格は最大560%上昇した。
地元メディアによると、古都アユタヤではツアー予約の約7割がキャンセルとなった。アユタヤのレストラン経営者、アカラポン・ソンオンさん(24)は「客は6割以上減り、先週の平日はついに2日連続でゼロだった」と肩を落とした。
タイでは観光業が国内総生産(GDP)の約2割を占めており、打撃は大きい。政府の試算では、中東情勢の混乱が半年間続けば外国人観光客が約300万人減少し、1500億バーツ(約7500億円)の損失が出るという。
タイ以外でも影響が広がっている。各国メディアによると、マレーシアの首都クアラルンプールでは空港送迎を担うタクシー運転手の収入が激減。インドネシア政府も3月、外国人観光客の減少で1日当たり約1800億ルピア(約17億円)の外貨収入が失われるとの試算を出した。フィリピンでは3月下旬、マルコス大統領が「国家エネルギー非常事態」を宣言し、観光客に人気の地方祭りが中止になった。
各国はインドや中国など近隣諸国の観光客誘致に力を入れるが、穴埋めは簡単ではない。戦闘が長期化すれば、コロナ禍以来の打撃となる可能性がある。【バンコク国本愛】
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