多くの矛盾をはらむ「平和の祭典」 IPC会長の言葉から見えたもの
祝祭にそぐわない光景だった。
開会式会場には、ウクライナを侵攻中のロシアと同盟国ベラルーシの国旗がはためいた。両国が国を代表する形で出場できることに反発したウクライナは式をボイコットした。
欧州の6カ国が同調したほか、競技に向けた調整を理由に欠席した国・地域も続出した。結局、出場する55の国・地域のうち約半数の28の選手しか会場に現れなかった。
2022年の前回北京大会では、開幕直前にロシアのウクライナ侵攻が起きた。国際パラリンピック委員会(IPC)のパーソンズ会長は開会式のあいさつで「ピース(平和を)」と声を張り上げ、話題を呼んだ。
5日の開幕前日記者会見で、パーソンズ会長は改めて当時の思いを語った。
「(「ピース」は)感情をそのまま吐露したもの。平和への切実な叫びは今も世界に必要なものだ」
翻って、今大会の開会式、パーソンズ会長のあいさつには熱を感じられなかった。
「指導者の名前で知られる国もある世界で、私はアスリートの名前でその国を知りたい。スポーツは世界に別の道筋、視点を提供する」
具体的な国・地域の名前に言及しないまま、世界の分断を憂えるのが精いっぱいだった。
世界情勢は悪化の一途をたどっている。
今大会開幕直前の米国とイスラエルによるイランへの攻撃により、イランの選手は安全に渡航できず、開幕当日に不参加が決まった。一方、米国とイスラエルの選手は予定通りに出場する。
「平和の祭典」は、多くの矛盾をはらんでいる。
オリンピックの開幕1週間前から、パラリンピックの閉幕1週間後までが、国連総会で採択された「五輪休戦」の期間中だが、世界各地で戦闘が続く。
記者会見で「五輪休戦」の形骸化について問われたパーソンズ会長は「(五輪休戦が)理想を掲げた拘束力のない文書であるため、パラリンピックは困難な立場に置かれている」といらだちを隠せなかった。
パーソンズ会長は開会式のあいさつで、こうも語った。
「ここでは国同士が隣人として集い、選手たちは激しく公平に競い合い、互いに敬意とスポーツのルールを尊重して団結している」
繰り返して強調した「ここ」とは、今大会が開催される競技会場や選手村のことだ。
裏を返せば、大会外には影響力や実行力を持てないIPCの組織の脆弱(ぜいじゃく)さがある。【コルティナダンペッツォ下河辺果歩】
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