ウクライナ東部の要衝ポクロウシク、露軍が95%制圧 NATO発表
北大西洋条約機構(NATO)高官は2日、ウクライナに侵攻するロシア軍が東部ドネツク州の要衝ポクロウシクの95%を制圧したと明らかにした。
ウクライナ軍は市内に残る拠点で抵抗しながら撤退を進め、防御網の再構築を急いでいるという。
ポクロウシクは露軍の侵攻前、約6万人が居住したドネツク州の主要都市。防御に適したビルなどの遮蔽(しゃへい)物が多いほか、複数の幹線道路が交差する地の利から、ウクライナ軍が他の前線への補給拠点としてきた。
だが露軍はポクロウシクを3方向から包囲し、ドローン(無人航空機)などによる攻撃で補給路を遮断するとともに、市内への砲撃を継続した。ウクライナ軍はドローンで武器や食料などを補給したが十分ではなく、次第に劣勢が鮮明になった。
NATOによると、露軍は7月下旬以降、少人数の歩兵部隊を徐々にポクロウシク市内に浸透させ、1日あたり数百人規模の戦死者を出しながら、制圧地域を拡大。露大統領府は12月1日、ポクロウシクを「解放した」と発表していた。
プーチン露大統領は2日、モスクワで記者団の取材に応じ、ポクロウシクについて、軍事作戦で設定された全ての任務を遂行する上で有効な「橋頭堡(きょうとうほ)」だと語った。その上で、もともとウクライナ軍の強力な要塞(ようさい)地帯があったが、「いまは完全に露軍の手中にある」と強調した。
露軍は、ポクロウシクの東部に位置する都市ミルノフラードもほぼ包囲するなど優勢だ。ポクロウシクは完全制圧後、補給や攻撃用ドローンの拠点として利用し、ドネツク州の主要都市クラマトルスクなどを攻撃するとみられる。
ただ、すぐにウクライナ軍の防御ラインが崩壊する可能性は低い。
NATO高官は、露軍の兵力補充に限界があり、進軍速度も上がっていないと指摘。ロシア側が全面割譲を求めるドンバス地方(ルハンスク、ドネツク両州)を露軍が完全制圧するには1~2年はかかるとしている。
英国防省によると、ウクライナ侵攻による露軍の死傷者は、2025年だけで約38万2000人に上る。22年2月の侵攻開始からの累計死傷者は約116万8000人に達している。【ブリュッセル宮川裕章】
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