イランの「報復」にアラブから非難 両者のしこりにほくそ笑むのは?
イランは、イスラエルとの停戦合意が成立する直前の23日夜、湾岸アラブの小国カタールにある米軍基地にミサイル攻撃を行った。米軍によるイラン核施設攻撃への報復という位置づけだ。
これを受け、近隣のアラブ諸国からは紛争の発端となったイスラエルと並び、イランを批判する声も相次いだ。攻撃では大規模な被害はなかったが、アラブ諸国が今後、イランに対する警戒心を再び強める可能性もある。
「(イランの報復は)どのような状況でも正当化できず、受け入れられない行為だ」。アラブの「盟主」を自任するサウジアラビアは24日、声明でこう批判した。
王政をとる湾岸アラブ諸国は長年、宗教国家イランの軍事力に強い警戒心を抱いてきた。中でもイスラム教スンニ派大国のサウジは、宗派を異にするシーア派大国のイランと、中東で覇権争いを続けてきた経緯がある。
両国は2023年3月に中国の仲介で関係正常化に合意し、近年は関係修復が進んでいた。だが、依然として「サウジはイランを敵国だとみている」(エジプトの専門家)との指摘もある。
核開発への警戒心も強く、サウジで実権を握るムハンマド皇太子は23年9月、米メディアの取材に「イランが核兵器を持てば、我々も持たねばならなくなる」と語っていた。
23年10月のイスラエルによるパレスチナ自治区ガザ地区への侵攻開始以降、イスラエルは周辺の親イラン勢力を次々と弱体化させた。ガザのハマス、レバノンのヒズボラが大きな打撃を受けたほか、間接的に影響を受けたシリアではアサド政権が崩壊した。
こうした中でもイランは、イスラエルや米国に軍事的に対抗する姿勢を堅持してきた。今回のミサイル攻撃は、イランの軍事力を改めて示しただけに、アラブ諸国にとって看過できない事態と言える。
自国の領土が標的となったカタールも声明で「主権侵害」だと反発し、「軍事行動の拡大は地域の安定を揺るがす」と訴えた。
天然ガスの輸出大国であるカタールにとって、中東の緊張緩和は自らの国益にも直結する。仲介外交を得意としており、今回のイランとイスラエルの停戦合意にも貢献したとされる。
事態はいったん沈静化に向かったが、イランのカタール攻撃は、アラブ諸国との関係に一定のしこりを残したと言えそうだ。
湾岸アラブ諸国のある政府関係者は、ロイター通信に対し、次のように指摘した。「イランの行動(報復攻撃)は、イランと湾岸諸国の関係改善を阻害したいイスラエルの思うつぼだ」。【カイロ金子淳】
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