イランがウラン濃縮を加速へ IAEAの非難決議に反発

2025/06/13 09:28 

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 国際原子力機関(IAEA)理事会は12日、核開発を続けるイランに対する非難決議を採択した。イランは「政治的だ」などと強く反発し、ウラン濃縮を加速させる方針を示した。イランは核開発を制限する代わりに対イラン経済制裁の解除を引き出すことを目指し、米トランプ政権と交渉を続けているが、ウラン濃縮の停止を求める米国との溝はさらに広がりそうだ。

 ロイター通信などによると、IAEAの決議は、イランが保障措置(査察)協定に違反し、保有するウランや核施設に関して技術的に信頼できる説明をしていないなどと非難する内容で、米英仏独の4カ国が提案した。理事会では中国、ロシア、ブルキナファソの3カ国が反対したが、賛成多数で採択されたという。

 これを受け、イラン外務省と原子力庁は12日、共同声明で「この政治的な決議に対処するほかない」と述べ、「安全な場所」で新たに濃縮施設を稼働させると発表。中部フォルドゥの核施設で稼働中の第1世代の遠心分離機を最新の第6世代に更新することも明らかにした。

 英仏独は2015年、イランが核開発を制限する代わりに制裁を解除する「核合意」を結んだ。しかし、イランの核開発が加速する中、いったん解除されていた国連安全保障理事会の対イラン制裁を再び発動させることも示唆して圧力を強めている。

 これに対し、イランの国連代表部は11日付の書簡で、制裁が復活すれば核拡散防止条約(NPT)から脱退する可能性があると警告するなど、欧米との駆け引きが続いている。

 一方、イスラエルがイランの核施設を攻撃する準備を完了したと報じられたことを巡り、イランの精鋭軍事組織・革命防衛隊のサラミ司令官は12日、「どのようなシナリオや状況にも対応する用意ができている。我々の仕事は、どんなスケールの戦争にも準備を整えておくことだ」と語り、イスラエルをけん制した。イランメディアが報じた。

 イランと米国との交渉は15日、仲介国オマーンで6回目の協議が開かれる見通し。だが、依然として両国の隔たりは大きく、進展するかは見通せない情勢だ。交渉の行方やイスラエルの出方次第で、中東の緊張は一気に高まる恐れがある。【カイロ金子淳】

毎日新聞

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