イスラエル、反ハマス民兵を支援? ISと関わり指摘も 混乱に拍車

2025/06/06 09:14 

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 イスラエルがパレスチナ自治区ガザ地区で、イスラム組織ハマスとは別の民兵組織に武器を供与するなどの支援をしている疑惑が浮上している。民兵組織は過激派組織「イスラム国」(IS)との関係も取り沙汰されている。ガザを実効支配してきたハマスの影響力を低下させる狙いがあるとみられるが、ガザ地区の混乱に拍車がかかる可能性がある。

 複数のイスラエルメディアによると、イスラエルが支援している疑惑があるのは、ガザ地区南部ラファを拠点とするヤセル・アブシャバブ氏が率いる民兵組織。約100人の戦闘員で構成され、ハマスに反対の立場を取っているとされる。

 民兵組織にはイスラエル軍がハマスから押収した武器が提供されており、イスラエル軍の占領地域で、人道支援物資を運ぶトラックの護衛や、ハマスとの戦闘を担っているという。

 アブシャバブ氏は5月24日、自身のSNS(交流サイト)で、「国際機関と協力し、小麦粉が避難民に確実に届くように活動している」と投稿した。

 一方で、テルアビブ大学の研究者によれば、この民兵組織は、ガザで麻薬の密売や略奪などに関与しているとされ、2024年末にガザで横行した支援物資の略奪にも関わった疑いが持たれている。米紙ワシントン・ポストが入手した国連の内部メモでは、アブシャバブ氏が、大規模な略奪の背後にいる最も影響力のある人物だと分析しているという。

 さらにイスラエルのリーベルマン元国防相は5日、この民兵組織を念頭に「政府が内閣の承認を経ずに、ISと関わりのある犯罪集団に武器を提供している」と非難した。現在もISとの関係があるかは不明だが、カタールメディアによると、民兵組織には、ガザに隣接するエジプト・シナイ半島のIS系組織との関わりがあったメンバーもいるという。

 ハマスは5日、「占領軍はガザ地区の犯罪組織を武装させ、組織的に治安の混乱を引き起こし、支援物資を略奪するという計画を推し進めようとしている」と非難。ガザの住民に対して、民兵組織に協力しないように呼びかけた。

 ガザの戦後統治を巡って、イスラエルのネタニヤフ政権は、ハマスの統治を受け入れず、パレスチナ自治政府の統治も拒否する構えを示している。

 一連の報道について、イスラエル首相府は5日、「治安当局の勧めに基づき、さまざまな方法でハマス打倒のために行動している」との声明を出した。【エルサレム松岡大地】

毎日新聞

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