韓国大統領府はどこに? 再移転案が浮上、旧庁舎は駆け込み見学急増

2025/05/13 18:47 

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 韓国大統領選(6月3日投開票)で、新大統領が大統領府をどこに置くのかが関心を集めている。現在は首都ソウルの旧国防省庁舎だが、進歩系の野党「共に民主党」から出馬した李在明(イ・ジェミョン)氏(61)は、長く大統領府だった青瓦台に戻す考えを示している。与野党からは首都移転構想も浮上している。

 大統領府は長年、ソウル市中心部の青瓦台だった。だが尹錫悦(ユン・ソンニョル)氏が2022年、「青瓦台を国民に返還する」として、ソウル市竜山(ヨンサン)の国防省庁舎に移転。青瓦台は市民や観光客が観覧できる場所にした。

 支持率でトップを走る李氏は「私が当選したら、いったん竜山の大統領府を使うが、青瓦台を迅速に改修して移った方がいい」と述べた。共に民主党の関係者は「竜山の庁舎は尹氏や戒厳令のイメージがつきまとう」と指摘した。

 一方、保守系の与党「国民の力」の公認候補、金文洙(キム・ムンス)氏(73)は、当選すれば竜山の庁舎を使う考えだ。

 李氏が勝利した場合、選挙後は一般市民が青瓦台に入れなくなる可能性があり、「駆け込み見学」が急増している。韓国紙「朝鮮日報」によると、1日平均の入場者数が以前の3倍ほどになっているという。

 ただ、青瓦台に戻す案には懸念も出ている。外国人も含む多数の観光客が出入りしており、共に民主党関係者は「内部の構造などが広く知れわたり、大統領が使うには保安上の問題がある。改修が必要だが、時間がかかりそうだ」と漏らす。

 一方、李氏、金氏、保守系野党「改革新党」から出馬した李俊錫(イ・ジュンソク)氏(40)がいずれも掲げるのが、大統領府・国会を含む首都機能を中部・世宗(セジョン)市に移転させる計画だ。もともと進歩系の盧武鉉(ノムヒョン)政権(03~08年)がソウル首都圏への過度な人口や国家機能の集中を解消するために目指し、一部の省庁はすでに移されている。

 だが首都移転計画は憲法裁判所が04年、違憲だと判断しており、実現には改憲が必要だ。交通インフラの整備など多くの課題も指摘されている。各種世論調査では賛否が割れており、新大統領が5年の任期中に実現できるかは見通せていない。【ソウル福岡静哉】

毎日新聞

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