赤沢氏主導、使用者側は反発 最低賃金「6%」引き上げ、決着の内幕
2025年度の最低賃金の引き上げ幅(目安)は、過去最大の63円(6・0%)で決着した。近年4~5回でまとまっていた審議だが、今回は44年ぶりとなる異例の7回に及んだ。政府主導でかつてないペースでの上昇が続くが、労働者の暮らしと中小企業の経営にどう影響するか。
◇審議長期化の背景
最低賃金の改定額の発効は例年10月ごろ。発効が遅くなればそれだけ労働者が不利益を被る。10月1日発効のためには、取りまとめは8月4日がタイムリミットだった。
審議長期化の背景にあるのは、使用者側の強い警戒感だ。目安を巡っては近年、政府主導による大幅引き上げが続く。政府は「2020年代に全国平均1500円」との目標を掲げ、達成には今年度を含め年7%程度の引き上げが必要だ。この政府目標ありきの引き上げを懸念する中小事業者の声が、委員らに届いていた。
労働者側が大幅引き上げを求める一方、使用者側は中小の経営を圧迫するとして、7月中旬の初回の審議から、「合理的かつ納得性の高い根拠を示すことが中央審議会の役割」とけん制した。
政府関係者によると、使用者側が6%以上の引き上げに反発する一方、「賃金向上担当」を兼ねる赤沢亮正経済再生担当相はより高水準の引き上げにこだわった。審議終盤には、赤沢氏が経済団体と会談し、直接理解を求めた。
最終的に審議会は、食料の物価指数のほか、家賃や光熱費などの生活必需品も含む「基礎的支出項目」の物価指数などを参考に、長引く物価高を重視。一方、賃金改定状況調査の結果などから、小規模事業者の支払い能力を考慮し、「引き上げ率の水準には一定の限界がある」として、6・0%で決着した。また地域間格差是正にこだわる労働者側の要求を反映し、初めてCランクの目安額をAより高くした。
目安通りに引き上げられれば全国加重平均は1118円となる見込みだが、日本の最低賃金は国際的に見て、いまだ低水準だ。厚生労働省によると、フルタイム労働者の賃金中央値に対する最低賃金の比率は46・8%で、韓国(60・5%)やフランス(62・5%)、英国(61・1%)を下回る。
◇地方審議、チキンレース化の恐れも
法政大学大学院の山田久教授(労働経済学)は「国際水準や物価高を考えれば、全国加重平均で1500円以上になるような引き上げが求められる」と指摘する。一方で、「高水準の引き上げを持続するためにも、専門家による客観的調査や丁寧なヒアリングなど、納得性を高める審議のあり方を再検討すべきではないか」と語った。
今後、議論の舞台は各都道府県の審議会へと移る。昨年は徳島県が目安を34円上回る大幅改定を行い衝撃が走った。そのほか目安に5円以上上乗せした県も14県に及んだ。昨年度のように地方の審議会で目安を上回る改定が相次ぐと、全国加重平均はさらに高くなる可能性がある。
地方では、隣接する都道府県との差が人材流出を招くとの懸念がある。中央審議会の委員の一人は「(近隣より高くしたいという思惑から)地方審議会の議論がチキンレース化する恐れがある」と危機感を示す。【塩田彩】
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