部員5人時代の高知農OB、甲子園で躍動する弟に感激 センバツ
21日の1回戦で日本文理(新潟)に挑んだ高知農。一塁側のアルプス席では、山本滉壬朗(こうざぶろう)捕手(2年)の兄慧仁朗(けいじろう)さん(19)が弟の活躍を見守った。慧仁朗さんは高知農が部員不足から他校との連合チームを組んでいたときのメンバーだ。
高校時代は山本捕手と同じ要のポジションを務めたが、入学当初は野球をするつもりはなかったという。
少年野球の経験はあるものの、中学で始めたテニスを高校でも続けるつもりだった。
ただ、当時の野球部員は3年生が5人だけ。1学年上はおらず、最も部員不足に苦しんでいた時期だった。
「(新年度で9人が集まる可能性があり)単独チームに復帰できそうだったので、やってみないかと頭を下げた」という下坂充洋監督(33)らの必死の勧誘も最初はごまかしていた。
しかし、少年野球時代の先輩からの誘いを断り切れずに参加した体験入部が楽しくて野球部の一員になった。
ただ、硬式球は初めて。しかもポジションは捕手。スピードにもなかなか慣れないため、試合が怖かった。
逃げ出したい気持ちもあったが、部をやめる気持ちはまったくなかった。「やっぱり楽しかったので」
同期は自身を含めて5人。2022年夏の高知大会は単独チームで出場することができたが、3年生が引退した同年秋と翌23年春は再び連合を組んでいる。
農業高校のため実習も多く全員で練習を始められない日もあった。
「先生の指導には厳しさと優しさがあったし、少ないなりに全員で工夫して練習をした。週末は連合チームとして他校といろんな練習ができたのも良かった」
他校の選手と練習することで互いに刺激し合いながら意識を高めるなどプラスの面もあった。
慧仁朗さんはこの日、十数人の野球部OBとともにグラブを手にファウルボールから応援団らを守った。
通常なら補欠部員が務めるが、部員不足を解消したとはいえ現役の部員は出場32校中最少の18人(女子マネジャー3人を除く)。登録可能な20人にも満たないため全員がベンチ入りし、OBたちに声がかかった。
今でも4月にならないと誰が野球部に入ってくれるのか分からない状況だ。
「また連合になることだってありますよ」と下坂監督は苦笑いする。だが、そんな歴史を何とかつないで21世紀枠での初めての出場を果たしただけに、「(連合チーム時の部員が)今のチームの礎。あの子たちのおかげです」と感謝する。
試合は1―8で負けはしたが、山本捕手は盗塁を三つ刺すなど守備で活躍した。慧仁朗さんは「のびのびとプレーしていた。僕もここでプレーしたかった。テニスより野球を選んで良かったです」。憧れだった広いグラウンドを駆け回る弟や後輩たちに目を細めた。【中田博維】
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