従軍の父へ ウクライナ・マルサク、会心ノーミス フィギュア男子SP
オリンピックの舞台に初めて立つ喜びと、従軍する父への思いを胸に、氷上で躍動した。ミラノ・コルティナ冬季五輪で10日に実施されたフィギュアスケート男子ショートプログラム(SP)で、ウクライナから唯一出場したキリロ・マルサク選手(21)は、ノーミスの会心の滑りを見せた。
ロシアによる全面侵攻開始から24日で4年。観客は何枚ものウクライナ国旗を振り、連帯を示す大きな歓声と拍手を送った。
得点は86・89点(11位)で自己ベストを大幅に更新した。マルサク選手は演技が終わると、跳びはねて喜びを爆発させた。報道陣に「自分の期待を超える信じられない結果でした」とはじける笑顔を見せ、前線でライブ配信を見たはずの父に対しては「僕を誇りに思ってくれることを願います」と語った。
父アンドリーさん(50)は2024年9月に徴兵されて以降、ロシアが支配地域を広げる東部ドンバス地方で軍務に就いている。SPの曲はイタリアの歌手アンドレア・ボチェッリさんと息子マッテオ・ボチェッリさんによるデュエット曲「Fall On Me」。父子が対話するように絆を確かめ合うピアノバラードだった。
そんな「父と僕にぴったりの曲」に乗り、マルサク選手は伸びやかに、リンクを縦横無尽に滑り抜けた。「何も考えず、ただ跳んでいる感覚でした」。最も気に入っている「目を閉じると、どこにでもあなたが見える」という歌詞のタイミングに合わせたコンビネーションジャンプも完璧に着氷した。
会場には母と姉が応援に駆けつけた。「彼女たちにとっても特別な瞬間になったと思います」
祖国はいまだ戦火の中にある。世界に向けたメッセージを聞かれると、力強く言った。「私たちは強い国です。世界が何をしてきても耐え抜きます。決して諦めません」
13日のフリーでは、母の手作りの衣装をまとい、戦争が続く苦悩と、祖国を支援してくれる世界の人々への感謝を表現する。【ミラノ福永方人】
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