仙台育英・吉川「自信のない自分を…」 最終打席の感謝 夏の甲子園

2025/08/17 16:53 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 ◇高校野球・夏の甲子園3回戦(17日)

 ◇●仙台育英(宮城)3―5沖縄尚学○

 2点を追う延長タイブレーク十一回、2死三塁。仙台育英の左腕・吉川陽大(あきひろ)は打席に立つと、涙が止まらなくなった。

 「打力に自信のない自分を打席に立たせてくれた(監督の)須江(航)先生の顔が浮かんで……」

 フルカウントからの8球目。変化球に懸命にバットを合わせたが、二ゴロに打ち取られた。

 「あの時、バッピ(バッティングピッチャー)をしてくれたのに」

 「控えの選手がサポートしてくれたのに」

 申し訳なさがこみ上げ、一塁ベース付近でしばらく立ち上がれなかった。

 試合は沖縄尚学の2年生左腕・末吉良丞(りょうすけ)との投げ合いになった。3―3で延長タイブレークに突入し、十回は無失点で切り抜けた。

 だが、十一回に失策で勝ち越され、なおも1死二塁で甘く入った球を適時三塁打とされた。「ふがいないピッチングで、仲間に申し訳ないです」と肩を落とした。

 2年秋からエースナンバーを背負うが、当初は「仲間のサポートに気づけない自分がいた」。プレーに納得がいかないと、ふてくされた態度を取った。

 高校時代は控えだった須江監督に「控え選手では味わえない悩みがあることは幸せなんだ」と諭され、意識を変えた。3回戦の前夜、野球日誌に「仲間のために投げる」と書いた。

 試合後の取材でも涙を抑えられなかった。ただ、係員に着席を促されても座らず、気丈に振る舞った。

 「(今後の進路は)周囲と相談して決めます。仙台育英で、須江先生とこの仲間じゃなかったら、ここまで頑張れていなかった」

 今大会、確かな存在感を放った左腕。最後は感謝の言葉を残し、甲子園を後にした。【深野麟之介】

毎日新聞

スポーツ

スポーツ一覧>

注目の情報