<皇室スケッチ>変わる皇居観光の玄関口 目玉は屋上デッキ設ける「大手休憩所」

2026/10/17 10:00 

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 皇居観光の玄関口が、これまでにない変化を遂げようとしている。

 目玉となるのは、新設の「大手休憩所」。皇居初となるカフェは「特別感」を演出し、屋上デッキからの眺めはひと味違うという。

 国内観光の拠点としての役割も担う休憩所。関係者の期待が高まっている。

 ◇11月開業に向け、大詰めの作業

 皇居の東側、地下鉄各線の大手町駅に近い「大手門」。9月下旬、工事用の白い壁が取り払われると、休憩所の外観が現れた。11月3日に迫るオープンに向けた作業は大詰めとなっている。

 「くつろぐだけでなく、観光拠点として情報発信を担っていきます」。宮内庁管理課長の伊藤良治さんはその特徴をアピールする。

 延べ床面積2800平方メートル、木造平屋建ての一角にはカフェが入る。コーヒー専門店を展開する「猿田彦珈琲」が運営する。

 皇居でしか味わえないオリジナルのコーヒーや食事を提供する。具体的な内装は明かされていないが、皇居の景観を損なわず、周辺と調和した色彩にするという。

 休憩所には屋上デッキも設けられる。これまで地上から見上げていた皇居内の石垣ややぐらは、高い場所から見物できるようになる。

 ◇地方への誘客機能果たす

 建設が進む東御苑は、四季折々の豊かな自然を楽しめる場所だ。一般に無料開放されており、人気のスポットとなっている。

 2025年の入園者は213万人で、過去最多の19年(223万人)に迫った。とりわけ、外国人の来園者は10年前から倍増している。その割合は全体の6割近くに達し、日本人を上回っている。

 こうしたインバウンド需要を見込み、休憩所は国内観光の玄関口としての役割が期待されている。

 英語表記は「インペリアル・パレス・ビジター・センター」。日本語で「観光案内施設」の意味合いがある。

 施設内では、日本各地の映像が大型ビジョンで映し出される。草原が広がる熊本県の阿蘇地域、厳島神社のある宮島(広島県)などが紹介されるという。

 流れる映像にはQRコードを表示。これをスマートフォンで読み込むと、観光地への行き方を指南するシステムになっており、地方への誘客を促す工夫もちりばめている。

 ◇「皇室の理解も深まれば」

 もちろん、皇室の活動紹介も欠かせない。外国や地方を訪問する天皇、皇后両陛下らの動画を流すほか、皇室での稲作や雅楽はタッチパネルで閲覧できる。歴代の天皇をたどれる展示もあるという。

 併設される売店では、皇室から連想されるデザインを取り入れた民芸品など、ここでしか手に入らない記念品を新たに販売するという。詳しい商品はオープン時に明かされる。

 伊藤さんは「カフェで買った飲み物を手にしながら、日本の歴史や自然を新たに発見し、皇室への理解も深まれば」と期待を込める。

 「日本の魅力を網羅的に伝える施設が乏しかった」。皇居内に休憩所を整備する背景について、観光庁の担当者はこう説明する。

 皇居そばの東京駅は言わずと知れたターミナル。日本各地に観光客を運ぶ拠点となっているが、駅周辺での観光関連情報の発信には物足りなさがあったという。

 ◇民間企業の事業運営は異例

 休憩所の整備には観光庁も協力。費用は約75億円に上り、「出国税」が財源となっている。日本を出国する際、国籍を問わずに3000円徴収される税だ。観光基盤の拡充や強化に向けた事業に充てられ、休憩所にも生かされることになった。

 新設に当たり、宮内庁は民間のノウハウを活用した。事業者側が運営に向けたアイデアを提案する「公募型プロポーザル方式」を採用し、複数の企業が応募した。

 この結果、カフェ運営については猿田彦を選定。休憩所全体は「JTBコミュニケーションデザイン」と「丹青社」の共同企業体が選ばれた。両社はそれぞれイベント運営や空間作りを得意としている。

 皇居の公開エリアで、民間企業が事業を運営するのは極めて異例だという。

 ◇皇居三の丸尚蔵館もリニューアル

 「相乗効果」が期待されるのは、皇居三の丸尚蔵館のリニューアルオープンだ。7年に及ぶ工事が終わりを迎え、休憩所と同じ11月3日から営業を始める。

 三の丸尚蔵館は、皇室で代々受け継がれてきた絵画や工芸品、書道作品などを保存・公開するため、1993年にオープンした。今は独立行政法人が運営しており、工事によって展示室は従来の8倍に広がる。

 三の丸尚蔵館にはゆっくりくつろげるスペースがなかったことから、リニューアルに合わせて休憩所が整備された形だ。

 宮内庁の黒田武一郎長官は定例記者会見で、休憩所について「来園者のアメニティー(快適さ)向上、皇室や伝統文化の情報提供の強化を目的として整備してきた」と強調。三の丸尚蔵館との連携を進める考えを示し、「効果的な運用を図っていきたい」と述べている。【柿崎誠】

毎日新聞

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