高裁、元少年の母親も賠償命令 監督義務を指摘 福岡・女性刺殺

2026/03/25 19:32 

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 福岡市の大型商業施設で2020年に吉松弥里さん(当時21歳)が刺殺された事件を巡り、遺族が加害者の元少年(20)=殺人罪などで受刑中=と母親に計約7800万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、福岡高裁は25日、元少年のみに計約5400万円の賠償を命じた25年3月の1審・福岡地裁判決を変更し、母親も連帯して同額を支払うよう命じた。松田典浩裁判長は「母親が元少年を監督する義務を怠らなければ、事件を防げた」と判断した。

 刑事事件の確定判決などによると、元少年は家族から虐待を受けて育ち、両親の離婚後は母親に引き取られた。幼少期から粗暴性が表れ、少年院などへの入退院を繰り返し、20年8月26日に少年院を仮退院したが母親は引き受けを拒否。更生保護施設に入所した元少年は翌27日に脱走し、28日に殺人事件を起こした。こうした経過を受け、遺族側は母親にも責任があるとして提訴したが、1審判決は母親が元少年と同居していたのは約4年半前で事件は予見できなかったとし、母親への請求を棄却。元少年の賠償責任が確定する一方、遺族側は引き続き母親の責任を追及すべく控訴していた。

 高裁判決はまず、最高裁判例に基づき、親の監督義務違反と未成年者の不法行為によって生じた損害との間に相当の因果関係が認められる場合、親も賠償責任を負うと指摘した。その上で、母親は施設職員とのやりとりを通じて元少年の問題を把握していた上、仮退院の際に身元の引き受けを拒否すれば暴力を誘発する懸念もあったとし、「元少年が他者に重大な危害を加える恐れを予見できた」と認定。元少年は当時15歳で義務教育の過程にあり、母親に指導監督義務があったのに「仮退院前後を通じ、(元少年に)一切の働きかけをしなかった」と批判した。

 吉松さんの母親は判決後の記者会見で「間違ったことは言っていないと信じてきた。訴えが認められ、うれしい」と涙ぐんだ。遺族側の代理人弁護士は「施設への長期入所後も、親権者の指導義務があったとする判断は画期的だ」と判決を評価した。【栗栖由喜】

毎日新聞

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