無罪判決の母親「ほっとした」 てんかん発作原因の可能性 乳児死亡
福岡県川崎町で2018年、生後11カ月の長女の頭に暴行を加えて死亡させたとして、傷害致死罪に問われた同県糸田町の無職の母親、松本亜里沙被告(29)に対し、福岡地裁の裁判員裁判は3日、無罪(求刑・懲役8年)の判決を言い渡した。鈴嶋晋一裁判長は、てんかんを患う被告が長女を抱いた状態で発作を起こし転倒した可能性も十分にあり得るとし「間違いなく故意の暴行を加えたとは言えない」と判断した。
被告は18年7月28日午前7時15分~11時50分ごろ、当時住んでいた川崎町の自宅で長女の笑乃(えの)ちゃんの頭部に強い衝撃を与える何らかの暴行を加え、急性硬膜下血腫などで死亡させたとして起訴された。
被告は公判で無罪を主張。「虐待による乳幼児頭部外傷(AHT)」が死亡の原因と言えるかが争点だった。検察側は長女が倒れた状況について被告の供述が変遷しているのは不自然だとし、けがの状況は外から強い力が加わらなければ説明できないとも訴えた。
判決はまず、被告が以前からてんかん発作を繰り返していたと認定。発作による記憶の消失で、当時の状況を正確に説明できないことも十分あり得ると指摘した。
頭部のけがを巡っては公判で証言した複数の専門家の意見が分かれた。判決は「弁護側証人の医師らが示した疑問などを合理的に解消できているか」を判断基準とし、検討。脳内の腫れや頭部の骨折はいずれも「それほど強くない力によっても生じる」可能性があり、被告がてんかん発作によって長女を落下させた事故などでも同様の負傷はあり得ると結論付けた。
25年8月まで約3年半勾留が続いた松本被告は判決後の報道陣の取材に「家族が待っていたので、ほっとした。死ぬまで反省し続ける」と語った。弁護人の堂前遼司弁護士は「捜査機関が医学的見解をきちんと吟味していれば逮捕、起訴されることはなかった。被告や家族は非常に長い時間を奪われた」と述べ、検察側に控訴しないよう求めた。
福岡地検の森博英次席検事は「上級庁とも協議のうえ、適切に対応する」とコメントした。【森永亨】
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