「基礎体力」奪われた介護現場にダブルの波 深刻な物価高と人材不足

2026/02/05 07:15 

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 物価高と慢性的な人手不足の波がダブルで押し寄せているのが介護の現場だ。

 広島県内で訪問介護やグループホームなどを手がける「ニックス」(広島市)は2025年、デイサービスで提供する昼食を1食当たり50円値上げした。グループホームの1日当たりの食費も、約5年前と比べて400円ほど上げざるをえなかった。

 ◇介護事業者の倒産は2年連続過去最多

 「利用者さんの年金は上がっておらず、日々の生活に困っている高齢者はたくさんいる。それなのに値上げするのは心苦しいが物価高で仕方なかった」。ニックスの代表取締役を務める西川直希さん(36)は苦しい胸中を明かした。

 食費やガソリン代などの高騰は介護の現場を直撃している。東京商工リサーチのリポートによると、25年の介護事業者の倒産は全国で176件となり、2年連続で過去最多を更新した。リポートでは「コスト上昇などへの対応は自助努力では追いつかないレベルまで深刻さを増している」とし、今後も倒産が続く可能性を指摘している。

 その中でも特に厳しいのが訪問介護だ。25年の倒産は91件で介護事業全体の倒産件数の半分以上を占める。

 ◇訪問介護は24年に基本報酬引き下げ

 訪問介護は24年の介護報酬改定で基本報酬が引き下げられ、経営の基礎体力を奪われていたところに物価高が押し寄せた。さらに西川さんによると、利用時間が集中しやすい訪問介護は、ほかの介護事業と比べてヘルパーを多数抱える必要があり、人材が不足しやすい。「うちのように比較的規模の大きなところはなんとか耐えられたが、小さな事業所ほど人材を効率的に回せず厳しい」と説明する。

 ◇40年には介護職員57万人不足

 介護現場の人手不足は深刻だ。厚生労働省によると、全国の介護職員数は22年の215万人から減少傾向。団塊ジュニア世代が高齢期に入る40年には、介護職員が57万人不足すると推計される。

 低賃金とされる介護職の待遇を上げるため、政府は09年度から段階的に賃金の改善に取り組んでいるが、他業種でも賃上げが進んでいるため追いつけていない。西川さんは「相対的に介護職の魅力が下がっている」と残念がる。

 8日投開票の衆院選では、与野党がこぞって消費税の減税を掲げている。だが、高齢化社会で医療や介護の費用はさらに膨らみ続け、消費税はそれら社会保障の財源になっている。減税によって財源が大きく減れば、ただでさえ厳しい介護の現場を維持できなくなるかもしれない。

 西川さんは「たしかに減税で負担を減らせば助かる家庭はある。でも、誰しもいつかは年老いて介護が必要になる。消費税を減らしても社会保障を守れるという納得できる説明を聞きたい」と訴える。【山本尚美】

毎日新聞

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