本物の警察官なのに信じられず…詐欺被害 「警察官騙り」の手口とは

2026/02/03 15:18 

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 京都府警にはスパイがいる――。目の前に本物の警察官がいても、だまされてしまう「偽物」のマインドコントロールの一端が判明した。

 府内の2025年の刑法犯認知件数が、1万2398件(前年比339件増)だった。新型コロナウイルス感染拡大を受けた緊急事態宣言が出される前年の19年から、2738件減(18・1%減)と全国最大の減少率となった。ただ、戦後最少だった21年(1万483件)からは4年連続で増加した。新たな手口による被害が増えている特殊詐欺が、認知件数を押し上げている。

 ◇詐欺犯が大幅増加

 府警犯罪抑止対策室によると、殺人や強盗などを含む凶悪犯は、111件と前年比で22件減少。窃盗犯(8355件)に含まれる自転車盗(2958件)は刑法犯総数のうち約20%を占める。前年比で39件減となったが、同室の井浩幸室長は「7割は鍵をせずに盗まれている。基本的な防犯をお願いしたい」と呼びかける。

 大幅に増加したのは、特殊詐欺などを含む詐欺犯(738件、前年比142件増)。このうち特殊詐欺の認知件数(暫定)は292件(前年比91件増)で、被害額は約25億2139万円(前年比約13億7422万円増)に達する。警察官を装って被害者をだます「警察官騙(かた)り」が顕著に多く204件で、被害額は約21億3112万円で大半を占める。

 警察官騙りとは、犯人側が被害者に「あなたは犯罪に加担した」「捜査対象になっている」などと説明して、身の潔白を示すための資産調査などの名目で金銭をだまし取る手口。ビデオ通話で警察官の制服様のものを着た犯人が偽の警察手帳や逮捕状を示すこともあり、全国で被害が急増している。

 中には、家族や金融機関の通報を受けて駆けつけた本物の警察官が、被害者に偽物だと疑われるケースもあるという。

 ◇偽物によるマインドコントロール

 25年には高齢女性が正当な理由なく高額出金しようとしたため、金融機関が府警に通報。女性の親族とともにだまされていることを気づかせようと、女性の説得を試みた。警察官は女性の目の前で犯人側とスピーカー通話をして犯人側に強く警告もしたが、女性は「両方警察官だと思います」と説得を拒んだ。

 偽の警察官は「京都府警にもスパイがいる」などと被害者に話し、マインドコントロールをしていた。最終的に女性を警察署に連れて行くと、女性はだまされていたことに気がつき、金銭的な被害はなかった。しかし、府内では本物の警察官が訪れても信じずに現金を振り込んでしまうケースもあった。

 被害者が説得に応じない理由は、犯人側が被害者を孤立させることが原因とされる。犯人側は「極秘捜査で、あなたには守秘義務があります」と話し、被害者が親族や警察に相談をしないよう仕向けることが多い。相談できないことで、だまされる期間も長くなり、被害額が膨れ上がる傾向にある。府内では25年、1億円以上の被害額になった事例が3件あった。

 府警は親世代を対象とするオレオレ詐欺と比べて、全世代がターゲットになる警察官騙りは、犯人側にとって都合の良いやり方であるため、件数が増えていると分析する。府内でも10~30代の被害者が確認されているという。

 府警特殊詐欺対策室の高瀬道隆室長は「警察がSNSのビデオ通話を通じて、逮捕状や手帳を示すことはない。資産を預かることも絶対にない」と断じる。また、被害防止のため、固定電話では国際電話の利用休止、スマホでは迷惑電話対策アプリの活用を促し「接触をブロックすることをお願いしたい」と呼びかけている。【水谷怜央那】

毎日新聞

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