青森震度6強から1週間、日常へ一歩ずつ 鉄塔近くの住民避難は続く
青森県八戸市で震度6強を観測した8日夜の地震で、初めて発表された「北海道・三陸沖後発地震注意情報」が16日午前0時に終了した。地震後に損傷が見つかったNTT東日本の鉄塔や、運休が続くJR八戸線。発生から1週間が過ぎ、地元では住民たちが不安や不便を抱えながらも、いつもの日常を取り戻そうとしている。
市中心部に近い同市柏崎にあるNTT青森八戸ビル。6階建て(29メートル)の屋上に、高さ約70メートルの赤白に塗り分けられた鉄塔が建つ。その柱やボルト接続部に損傷が見つかった。再び地震が起きた場合に倒壊の恐れがあるとして、ビルから半径50メートルの35世帯が市内のホテルなどに避難しているほか、周辺の幹線道路の国道45号などが通行止めとなり、路線バスも通行止めを余儀なくされた。
通勤途中に鉄塔を眺めるという同市旭ケ丘、会社員、大谷正さん(58)は「周囲ではひときわ高い建物で、町のランドマークタワーのようなもの。まさか倒壊するかもしれないなんて」と驚いていた。
避難の対象を外れた近くに住むパートの女性(68)は、9日は公民館に避難したが、10日以降は自宅に戻った。「市役所に聞くと鉄塔が倒れても我が家は大丈夫だということだったが、不安は大きい。早く修理してほしい」と心配そうだった。
NTT東日本は当初、復旧工事の完了に「3週間から1カ月程度」と説明していたが、15日夜に「年内の工事完了のめどが立った」と発表。ビル周辺では営業に支障が出ている店舗なども多く、同市の熊谷雄一市長は「市が事業者の声をとりまとめ、NTT東と補償などについて協議する」とした。
地震発生から初めての日曜となった14日。同市河原木神才の観光施設「八食センター」は、年末年始に向けて海産物や乾物を購入する家族連れらでにぎわっていた。
約70の鮮魚店や青果店などが並ぶ同センターは、地震による大きな被害はなく、9日から通常通り営業を始めていた。事務局によると、土日には通常約1万人が訪れるが、地震後は1割ほど客足が減ったという。
家族で食事に来た同市内の会社員、井戸上靖さん(66)は「地震では食器が割れるなどしたが、電気や水道は止まっておらず、普段通りに生活できている。ここは買い物だけでなくおいしい食堂もたくさんあるので、たくさんの人に来てもらいたい」と話していた。同センター事務局も「安心してお買い物を楽しんでもらえるよう環境を整備している」としている。
市中心部でも日常は戻りつつある。居酒屋などが集まるエリアでも地震発生後、数日は営業休止している店もみられたが、徐々に再開する店も増えている。
東京都世田谷区から旅行に来ていた会社員、奥原和人さん(34)は「こんな時期に来ていいか迷ったが、想像していたよりも活気がある」と話す。お目当ての居酒屋は休業中だったというが、「おいしい店が多くて楽しい」と語り、屋台村「みろく横丁」を楽しんでいた。【竹田直人】
◇JR八戸線、一部区間で運転再開へ
JR東日本盛岡支社は16日、青森県東方沖で8日発生した地震の影響で全線運休しているJR八戸線について、22日から一部区間で臨時列車による運転を再開し、代行バスの運行も始めると発表した。
臨時列車は鮫―久慈(岩手県久慈市)間、代行バスは八戸―鮫間で走らせる。
同支社によると、全線復旧の見通しは立っていない。臨時列車は地震発生前に久慈駅に止まっていた2編成で運行するため、減便が予想される。代行バスは約20台を使い、いずれも通勤や通学で使っている定期券などで乗車できる。
八戸線では本八戸―小中野間の高架橋で、地震の影響とみられる損傷約20カ所が見つかった。9日の始発から全線運休している。
青森県教委によると、八戸市内の県立高6校で計約450人の生徒が同線を使って通学。そのうち八戸北高では全校生徒620人中190人が利用している。同校は10日から授業を再開しているが、毎日70~80人が同線運休のため登校できていないという。
◇岩手・洋野は臨時バス運行
一方、八戸線沿線の自治体である岩手県洋野町では独自に、15日から臨時バスを運行し、町内在住の高校生向けに通学手段を確保した。同町内にある県立種市高の長内誠副校長は「八戸線の運休で7、8人が欠席せざるを得ない状況だった。JRの代行バスや一部区間の運転再開も決まり、まずは安心している」と話す。
いち早く臨時バスの運行を決めた同町企画課の久保田昌照課長補佐は「臨時バスは八戸方面と久慈方面に朝夕運行している。八戸線の被害の様子から『運休が長引くだろう』と予想し、まずは高校生のために運行を決めた。親御さんからは『大変助かった』という声もいただいた」と言う。「JRのダイヤは19日に決まると聞いている。それを見て、今後の運行をどうするか決めたい」と話した。【竹田直人、佐藤岳幸】
◇青森・七戸町の一部では断水続く
青森県東方沖で8日発生した地震の影響で、青森県七戸町の一部で16日も断水が続いている。町は早期の復旧を目指している。
断水しているのは、石沢、一本木など4地区の計147世帯(308人)。10日に漏水が分かり、町が調査を始めたが、配水管が地下約5メートルの深い場所にあるため漏水箇所の特定が難航。16日に仮配水管の敷設工事を始めた。
町は給水所を2カ所設置した他、希望者には水を配布している。また、風呂に入るための水が確保できない住民向けに研修施設の浴場を無料開放している。
給水所には15日、みぞれが降る中、軽トラックで住民たちが水をくみに訪れていた。
研修施設の湯につかって一息ついていた男性会社員(40)は「きのうは銭湯に行った。家族3人で、ウエットティッシュや紙皿などを使って節水しながら生活している。家のトイレが使えず、洗濯もできない。早く元の生活に戻りたい」と話した。【足立旬子】
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