両陛下と愛子さま、東京都慰霊堂で供花 空襲犠牲者の遺族と交流

2025/10/23 21:03 

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 天皇、皇后両陛下と長女愛子さまは23日、東京大空襲や関東大震災の犠牲者の遺骨を安置する東京都慰霊堂(墨田区)を初めて訪問され、供花した。4月の硫黄島(東京都小笠原村)に始まり、沖縄、広島、長崎を訪ねた戦後80年の戦没者慰霊の締めくくり。沖縄、長崎に続き愛子さまも同行してご一家で平和を願い、戦争の記憶を次世代に継承する姿勢を示した。

 ご一家は霊殿前にそれぞれ白い花束をささげ、拝礼した。太平洋戦争で東京は米軍から100回以上の空襲を受けた。1945年3月10日の東京大空襲では一晩で10万人以上が死亡したとされる。慰霊堂には遺骨約16万3000柱が安置されているが、大半が身元不明だという。

 遺族4人も参列した。大空襲で祖父母や出征前のおじら親族8人を亡くした大日向弘行さん(84)=墨田区=が「平和になってもらいたい」と伝えると、天皇陛下はうなずいていたという。田中洋子さん(82)=同=は警防団員だった夫の父親が住民の避難誘導中に死亡した。皇后雅子さまからは「大変でしたね。ご苦労なさったんですね」と声をかけられたといい、「お墓には髪の毛一本入っていない。罪のない人が犠牲になる戦争はやめるべきだ」と話した。

 戦後80年の今年、両陛下の戦没者慰霊は硫黄島から始まった。島内の慰霊施設で供花し、遺族や元島民らと懇談した。6月には沖縄の平和祈念資料館で激しい地上戦の実態を紹介する展示を見学し、広島では被爆者の体験に耳を傾けた。9月には長崎へ向かい、ノーベル平和賞を受賞した日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)代表委員の田中重光さん(84)らと懇談し、祝意を伝えた。

 沖縄、長崎には愛子さまも伴い、ご一家で平和教育や戦争体験の継承に取り組む若者とも交流した。宮内庁の西村泰彦長官は23日の定例記者会見で「戦争の悲惨さを次の世代にどうつなげていくかが課題と思い、後世に引き継いでいく観点から愛子さまもご同伴されているのだと認識している」と話した。【柿崎誠】

毎日新聞

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