猛暑対策で夏休み延長…全国の公立学校 家庭の負担増懸念の声も

2025/06/23 14:30 

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 あと一月ほどで子どもたちは夏休み。最近は猛暑対策で公立学校の休みを数日~約1週間延長する自治体が増えている。子どもたちの熱中症リスクを減らすのが目的だが、休みが延びることで保護者の負担が増えるといった懸念の声もある。

 ◇猛暑日が急増

 大分市は2025年度から、夏休みの終了日を8月24日から同31日に変更した。市内の8月の猛暑日(最高気温が35度以上)は14年に0日だったが、24年は15日あった。

 かつて夏休みは8月末まであったが、学習指導要領の改訂で20年度から授業数が増えるのに備えることなどを理由に、17年度から7日間短縮していた

 今回、2学期の授業日数は前年度の83日から78日に減り、授業時間も約20時間減る。ただし、国の定める年間の標準授業時数は満たすため、冬休みや春休みの長さは変えない。市教委の担当者は「夏休みが延びても(標準を)クリアできる状態だった。休み明けに子どもたちの様子を確認し、延長の効果や影響を見極めたい」と話す。

 ◇国も呼びかけ

 総務省消防庁によると、幼稚園や大学などまで含めた教育機関からの熱中症の救急搬送は年4000人前後で推移している。公立校のクーラー設置率(24年9月時点)は普通教室こそ約99%だが、体育館は小中学校が19%、高校が14%にとどまる。

 文部科学省は近年、熱中症対策に関する通知の中で、夏休みの延長を一案に示している。教職員の働き方改革に関し標準授業時間数を大きく上回る学校がないか点検するよう通知もしており、一連の通達が自治体の夏休み延長を後押ししている。

 栃木県鹿沼市や兵庫県尼崎市も24年度から、埼玉県上尾市や大分県津久見市も25年度から延長した。いずれも10~19年度に授業数を増やすため、夏休みを短縮していた。

 ◇冬休み短縮のケースも

 延長の動きが特に相次いでいるのは群馬県と北海道だ。

 関東内陸の群馬県は全国屈指の暑さで有名だ。24年度から前橋市や桐生市など6市町村が、25年度から館林市など12市町村が夏休みを3~7日延長し、いずれも8月末までになった。前橋市はかつて8月末までだったが、土曜授業の廃止を理由に05年から短縮していた。

 北海道も例外ではない。23年8月下旬に猛暑が襲い、暑さを理由に臨時休校する学校が続出。23年秋に道教委が道立校の夏休みを長くできるよう規則を改正すると、市町村も追随して24年から各地の小中高校で延長が相次いだ。

 札幌市は24年度から小学校の夏休み日数を25日から30日に増やし、代わりに冬休みを5日減らした。27年度末までに市内全校の普通教室にエアコンを完備するまでの暫定措置としており、将来的な方針は「児童生徒や市民の声を広く聞き検討する」という。

 ◇保護者の負担増は

 一方、共働き世帯が増え、物価高が続く中、子どもの夏休み延長で保護者の負担が増えるとの懸念も出ている。

 上尾市は夏休み延長の決定に先立つ24年秋、小中学生、教職員、保護者にアンケートを実施。延長か現状維持か2択で尋ねたところ「延長した方がよい」との回答は児童生徒の76%、教職員の88%を占めたが、保護者は49%にとどまった。

 「延長派」は熱中症リスクの回避を筆頭に▽児童生徒の心身のリフレッシュ▽家族や友達と過ごす時間が増える▽教職員の負担軽減――などを理由に挙げた。

 これに対し、保護者からは昼食づくりや子どもの世話など保護者の負担が増えることを懸念する意見が多く出た。さらに、学力低下や生活リズムの乱れ、食費や光熱費といった経済的な負担の増加を心配する声が目立った。

 上尾市教委は「学期初めの給食開始日を調整し、年間の給食提供日数は同等のままにした」としている。【尾崎修二】

毎日新聞

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