警視庁が「仮装身分捜査」実施 全国初 詐欺未遂の容疑者を摘発

2025/06/09 10:28 

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 警視庁は9日、捜査員が身分を偽って「闇バイト」に応募し、犯人グループに接触する新たな捜査手法「仮装身分捜査」を特殊詐欺事件で実施し、5月に詐欺未遂容疑で容疑者を摘発したと明らかにした。仮装身分捜査による事件の摘発は全国初。

 警視庁によると、首都圏(1都7県)で特殊詐欺の被害につながる恐れのある事案を警察が発見。交流サイト(SNS)上での闇バイトの募集に対して、警察官が架空の身分証を示して応募し、5月中に容疑者1人を摘発したという。

 警視庁は事件の詳細について「犯人グループに警察の手の内が知られることになる恐れがある」などの理由で明らかにしていない。容疑者の人定や犯人グループ内での役割についても、相手に対抗措置を講じられる可能性があることや捜査員の安全確保を考えて明らかにしていない。

 捜査関係者は「被害に遭いそうだと気づいていなかった被害者や、犯罪の具体的な方法を事前に察知できた。被害の未然防止、容疑者摘発の両面において意義があった」と説明した。

 仮装身分捜査は、2024年8月以降に闇バイトが絡んだ強盗が相次いだことを受け、政府が現行法の範囲内で実施可能なあり方を検討。今年1月に警察庁が実施要領を策定した。4月22日には坂井学・国家公安委員長が一部の都道府県警が運用を開始したことを明らかにしていた。

 実施要領では、対象事件を闇バイトが絡んだ強盗や特殊詐欺に限定することや、都道府県警本部長が捜査を指揮し、計画書を承認する形で進めることなどを規定。偽の身分証は、原則として犯人以外には提示しない運用としている。【菅健吾、朝比奈由佳、松本ゆう雅】

毎日新聞

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