JR東海、リニアの湧水低減対策を取りやめ 同種工事で崩落事故

2025/06/04 09:31 

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 JR東海は3日、岐阜県瑞浪市大湫(おおくて)町で実施していた湧水(ゆうすい)を減らす工事の取りやめを明らかにした。工事は、リニア中央新幹線のトンネル工事に伴って発生した地下水位の低下、地盤沈下などの対策として実施されていた。

 非公開で開かれた地元の住民説明会で明らかにした。JR東海は「低下した地下水位を元に戻す方策は見つかっていない」としている。現地でのトンネル掘削工事は中断しており、再開時期に影響を与えそうだ。

 対策工事はこれまでに、急硬材を混ぜたセメントをトンネルの周囲に注入。最終工程として、粒子の細かいセメントを注入する「本注入」を実施する予定だった。しかし、同種の対策を行った鹿児島県のトンネルで昨年7月、壁面崩落事故が発生。JR東海は今年1月の住民説明会で、本注入の可否を慎重に検討するとしていた。

 3日の住民説明会では、本注入を実施した場合、トンネルの安全面に危険が生じたり、地表面が陥没したりする恐れがあると説明。40~70メートル低下した場所もある地下水位は本注入後も4~7メートル程度しか回復しない見通しで、十分な対策効果が得られないとの判断が伝えられた。住民からは、水位の回復方法を「もっと検討してほしい」との要望がでたという。

 JR東海は今後、深さ約170メートルの深井戸の整備や新たな水源地を確保、活用。地下水位を調査するなどし、住民の理解を得た上で、掘削工事の再開時期を検討したいとしている。

 大湫町地区では昨年2月以降、地下水位の低下や地盤沈下が各所で確認された。住民の要望などを受け、昨年5月から掘削工事が中断されている。【安達一正】

毎日新聞

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