「息子のSOS拾ってくれた」 千葉小6いじめ自殺認定、遺族の思い

2025/05/29 12:45 

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 2019年に千葉県野田市立小6年の男子児童(当時)が自殺した問題で、市が設置した調査委員会は28日、別の第三者委員会が先に出した報告を覆して「いじめが自殺の主要因」とする調査結果をまとめた。決め手は、男子児童が残したノートの記述。遺族は「息子のSOSを拾ってくれた」と報告書を高く評価した。【高橋努、中村聡也】

 「調査委は果たすべき役割を果たし切ってくれた。心より感謝したい」

 調査委の報告書が発表された後、男子児童の遺族代理人を務める石田達也弁護士が遺族のコメントを読み上げた。

 その横には、男子児童が自殺の直前に「SOS 助けてほしい むしされる さけられる 物をなげられる」などと記した学習ノート、児童の姉が描いた児童の肖像画、ランドセルが並べられた。

 遺族はコメントで、今回の報告書を評価する一方、自殺の16日後に市教育委員会が設置した第三者委員会を批判した。第三者委が21年に「いじめは認められるが、自殺の要因とは判断できない」との報告書をまとめていたからだ。

 「(第三者委は学習ノートに記された)SOSメッセージを『いつ書いたものなのか、誰に対して書いたものなのかなど不明』として目を背けた」と指摘。「調査が余りにも不十分、不完全、不適切だった」と断じた。

 SOSメッセージが無視されたことについて、石田弁護士も「裁判であれば日付、宛名がないからでいいだろうが、(いじめ問題の)調査での判断としては理解できない」と非難した。

 対照的に今回の調査委報告書はこのメッセージについて、男子生徒が自殺する前月に受けた「SOS出し方授業」に由来し、自殺直前の心理状況を表す重要な資料と評価。いじめと自殺を関連付ける証拠と位置付けた。

 委員長を務めた濱口佳和筑波大教授は28日に記者会見し、第三者委と置かれた状況の違いを解説した。「第三者委はゼロからスタートし、さまざまなデータを短期間で集めた。その努力は評価できるが、掘り下げることができなかった。我々は既にデータがあり、掘り下げることから始めることができた」

 いじめ問題に詳しい千葉大の藤川大祐教授(教育方法学)は「第三者委が児童のメッセージを精査し、遺族に丁寧な聞き取りをして、必要ならさらなる調査を行っていれば、こういう結論にならなかったのではないか」と指摘した。

 調査委報告書は、学校にいじめに関する記録が残っていない、児童のいじめに対する認識が不十分などの課題も指摘。「教員が子ども同士の力関係にも踏み込んで理解する」などの再発防止策を提言した。

 遺族は、児童をいじめた同級生について「許せない、でも、許すしかないのかもしれない」と複雑な心境を吐露。「二度と同じ悲しい思いをする遺族が現れないよう、徹底した対策を進めてほしい」と呼び掛けた。

 ◇相談窓口

・24時間子供SOSダイヤル

 いじめやその他の悩みについて、子どもや保護者などからの相談を受け付けています。原則として電話をかけた所在地の教育委員会の相談機関につながります。

 0120・0・78310=年中無休、24時間。

・子どもの人権110番

 「いじめに遭っている」「家の人に嫌なことをされる」など、先生や親には話しにくい相談に法務局の職員や人権擁護委員が応じます。

 0120・007・110=平日の午前8時半~午後5時15分

・まもろうよ こころ

 さまざまな悩みについて、LINEやチャットで相談を受けている団体を紹介する厚生労働省のサイトです。年齢や性別を問わず、自分に合った団体を探せます。

・こころの悩みSOS

 悩みを抱えた当事者や支援者への情報のほか、相談機関を紹介した毎日新聞の特設ページです。

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