「厄介者」ヨシ刈るツアー、応募が定員の8倍 湿原保護へ奮闘 岐阜
ミズバショウの群生地として知られる岐阜県飛驒市の池ケ原湿原で、ある「厄介者」が問題となっている。放っておけば、湿原の植物が絶滅してしまう危険性もあり、市民らは頭を悩ませている。
◇異変は25年前
標高1000メートル付近にあり、広さ約5ヘクタールに及ぶ池ケ原湿原。全国的にも珍しい植生が見られることから「湿原植物の宝庫」と呼ばれ、春はミズバショウやリュウキンカ、夏はサワオグルマやシラヒゲソウ、秋は紅葉や白樺など、年間を通じて変わりゆく湿原の自然を楽しむことができる。
岐阜県の天然記念物にも指定され、4月下旬から11月のシーズン中には、毎年約3000人が訪れる。
そんな湿原に異変が起きたのは25年ほど前。7月ごろになると背丈を超える高さの植物が異常繁殖し、湿原内に整備された木道が通れないほどに生い茂り始めた。
その植物の正体は、イネ科の多年草「ヨシ」。繁殖力が強く、短期間で地中深くに根を張り、背高く成長するのが特徴だ。
湿原を定期的に調査している任意団体「池ケ原自然保護センター」の岩佐勝美所長(75)によると、生活環境の変化によって周辺の山の樹木が成長し、森が雨水を蓄えるようになった。その結果、湿原に流れる水の量が減って富栄養化が進み、ヨシの繁茂につながったとみられるという。
ヨシが湿原の水を吸い上げてしまうため、土壌の乾燥化が進行。さらに、高い背丈で日光が遮られ、他の植物が育たなくなった。ミズチドリやシラヒゲソウなど夏の希少植物は死滅し、姿を消した。
◇「ヨシ刈りツアー」に応募殺到
湿原の危機に、岐阜県が動き出した。2010年7~8月、県文化財保護審議会の指導を受けながらヨシを刈り取って運び出し、ヨシの繁殖を弱らせる事業をスタートさせた。
翌11年度には全国に通用する地域資源を選ぶ「岐阜の宝物」の一つに湿原を認定した。
ヨシの刈り取りの県事業は5年間で終了したが、その後も岩佐さんら同センターのメンバーや、地域のボランティアらが飛驒市の支援を受けながら刈り取りを継続。
22年には1泊2日のヨシ刈りツアーを企画したところ、定員10人に対し全国から80人の応募が殺到した。「湿原を未来に残そう」という輪が広がり、ツアーの参加者が翌年以降も保護活動に訪れるようになった。
毎夏の2回の刈り取りや根切りなどを続けた結果、ヨシの繁茂と土壌の乾燥化が抑制され、少しずつ湿原に植生が戻ってきた。
岩佐さんは「調査のたびに思いがけない場所に、思いもよらぬ植物を発見し、改めて湿原の植生の豊かさを感じる」と喜ぶ。
19年には、湿原の中に車いすが通れる木道が完成。高齢の夫婦や特別支援学校の生徒らが散策する姿も見られるようになった。「人間には自然と触れ合い、喜びを共有できる権利がある。そのことを発信できる場所になってほしい」。岩佐さんはそう願う。
ただ、悩みは尽きない。毎夏の刈り取り作業をやめると、ヨシはたちまち繁茂してしまう。今後も継続的な活動が欠かせない。
さらに近年は、雪解け水の減少や、イノシシなど獣害被害の増加といった新たな問題も起きている。岩佐さんは「多くの人の力を借りながら、この素晴らしい湿原の自然を守り、地域のために活用していきたい」と力を込める。【稲垣洋介】
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