米作りで景観守る 日本遺産「龍田古道」 地元有志の挑戦

2024/11/01 13:30 

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 大阪と奈良にまたがる日本遺産「龍田古道」の景観を守ろうと、地元・奈良県三郷町の住民が奮闘している。地域の原風景である水田が減っていることを危惧し、宅地化の危機にさらされた田んぼを買い取って米作りに挑戦している。【塩路佳子】

 龍田古道は奈良時代に平城京と河内、難波を結んだ古代の官道で、府県境に位置する「亀の瀬」は古くから地滑り地帯として知られている。2020年には「もう、すべらせない‼~龍田古道の心臓部『亀の瀬』を越えてゆけ~」の名称で日本遺産に認定された。

 景観の保全は風の神様として親しまれる龍田大社を中心に、カフェの店主や写真家ら地元の有志11人が23年にプロジェクトを立ち上げて取り組んでいる。代表の垣本麻希さん(48)は、古道沿いで代々続く金属加工会社の長女として生まれ、「古道は龍田の清らかな風と太古の歴史を感じられる場所」と魅力を語る。

 町内の古道周辺にはかつて美しい田園風景が広がっていたが、「宅地化がどんどん進み、現在は限られた地域にしか田んぼが残っていない」と垣本さん。高齢化や後継ぎ問題に悩む米農家も少なくなく、プロジェクトは農業の継続や振興を促す狙いもあるという。

 米作りは農家と連携しながら減農薬で進められた。地元・信貴山の水をたたえた田んぼにはカエルやカモの姿も見られたという。10月13日には田んぼで収穫祭があり、龍田大社の神職による神事の後、約40人の参加者が鎌を片手に黄金色の稲穂を一株一株刈り取っていった。プロジェクトメンバーで兼業農家の乾隆寛さん(53)は「実りはいい」と笑顔を見せた。

 収穫した米は「風乃田園 龍(たつ)ひかり」のブランド名で、11月下旬から近鉄百貨店橿原店(橿原市)や垣本さんが営むギャラリー「ギャラリーカワリ」(三郷町)などで販売される。垣本さんは「龍ひかりが田園を守る希望の光になることを願っている」と語っていた。

 「龍ひかり」の問い合わせはギャラリーカワリ(0745・51・8001)へ。

毎日新聞

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