実刑判決で「頭が真っ白に」 法廷に両親の涙 静岡バス置き去り死
静岡県牧之原市の認定こども園「川崎幼稚園」で2022年9月、園児の河本千奈ちゃん(当時3歳)を送迎バスに取り残し熱中症で死亡させたとして、業務上過失致死罪に問われた前園長、増田立義被告(74)に対し、静岡地裁(国井恒志裁判長)は4日、禁錮1年4月(求刑・禁錮2年6月)の判決を言い渡した。
「『執行猶予』という言葉が判決文になかったのが分かった瞬間に、頭が真っ白になった。自分でも訳が分からず、何も考えられなかった。ただこれで『裁判がようやく終わった』と伝えることができる」。判決後に静岡市内で開かれた記者会見で、千奈ちゃんの父親(40)はほっとした表情を浮かべた。
公判では被害者参加制度を利用して意見陳述し、「実刑」を求めていた。自宅では毎日、千奈ちゃんの写真に「助けられなくてごめんなさい」と手を合わせている。この日は法廷で判決が読み上げられる間、すすり泣きながら夫婦で手を握り合っていた。
会見では、2021年7月に福岡県の認可保育園で起きた同種事件の判決と同じように「増田被告にも執行猶予が付くと思っていた」としたうえで、実刑になり「不適切かもしれないが『やった』と思ってしまった」と率直な心情を明かした。
千奈ちゃんが亡くなってから間もなく2年。会見では、当時はまだ生後まもなかった妹(2)に触れた。日に日に成長し、音楽に合わせて踊る姿が「元気で、ひょうきんで、表情豊かだった」千奈ちゃんの面影と重なるといい、妹が千奈ちゃんの写真を見て「ねえねえ」と手を合わせているのを見ると「つらくて耐えられなかった」とも語った。
また、時期は明らかにしなかったものの、今後、園側を相手取り、損害賠償を求める訴訟を起こす考えを明らかにした。
一方、増田被告と西原被告はこの日、上下黒色のスーツ姿で出廷。判決が言い渡される間、時々うなずきつつ、まっすぐ前を見つめていた。法廷を出る際は千奈ちゃんの両親に深々と頭を下げた。
増田被告は事件の3日後に園長を辞任した。これまでの公判では起訴内容を認め、降車確認を怠った理由を「病院での打ち合わせがあったので急いでいた」などと説明。謝罪の言葉を述べた。
判決後は文書で「判決を重く受け止めております。自らの責任に真摯(しんし)に向き合っていく所存です。今後とも千奈さんの慰霊、ご遺族への謝罪、償いを続けてまいります」とコメントした。【丘絢太】
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