厳冬期で選挙戦は様変わり 「ハコもの」中心、SNS発信に注力
36年ぶりとなった2月の衆院選で、道内12選挙区の各陣営は雪と寒さに悩まされている。候補者らは選挙カーで地域を回る時間や街頭演説の回数を減らし、屋内会場に支持者を集める「ハコもの」中心の選挙戦を展開するが、「有権者が街中で選挙情報に触れにくくなった」と問題を指摘する声も上がる。
1月31日、JR札幌駅前で演説した候補者の頭と肩には雪が積もり、集まった数百人の支持者らもフードを深くかぶって寒さに震えていた。陣営関係者は「正午の集会のためにスタッフが早朝から何度も雪かきに来た」と疲れをにじませた。
選挙期間中、札幌圏を中心に道内は大雪に見舞われた。最も大きな影響を受けたのが、選挙運動のメインである街頭演説だ。
札幌圏のある候補者は、2024年10月の衆院選では役場前や農協前などのスペースを借りて街頭演説をしてきた。ただ、今回は雪による移動の難しさや寒さなどから、街頭演説の数を大幅に絞り、人口の多いエリアの屋内で個人演説会を開く形式に切り替えたという。陣営からは「選挙区内の全町村を街頭演説で回りきれない」とため息が漏れる。
札幌市中心部の状況も様変わりした。従来の選挙戦では、札幌駅前や大通公園でほぼ毎日、街頭演説が行われている。だが、地下歩道に人が流れる冬は札幌駅前の地上を歩く人はまばらで、大通公園はさっぽろ雪まつりの会場となり雪像が立ち並ぶため使用できない。ある野党関係者は「雪像に向かって演説しても仕方ない。天気が良くてもこの寒さで足を止める人はいない」と嘆き、屋内の演説会場確保に追われていた。
選挙区をすみずみまで回るために必須の選挙カーも、冬ならではの課題に直面している。吹雪の時は窓を開けて手を振ることはできず、雪で道幅が狭くなっている場所では車を寄せられないなど陣営の悩みは尽きない。道東のある候補の陣営は、雪で道路が通行止めになる恐れも考慮しながら日程調整に苦心している。
札幌圏の選挙区では、一部の陣営同士が「午後6時以降は街宣車のスピーカーを鳴らさない」ことを申し合わせた。雪道は通行人が少なく、住宅も二重窓を閉め切っていて宣伝効果が見込めない。候補者は「夜に大きな音を出して雪で狭くなった道を走っていたら、ひんしゅくを買う」と背景を打ち明ける。
支持者以外の無党派層に対面で訴えにくい分、候補者らはSNS発信でしのぎを削る。大雪を逆手に取り雪かきに励む様子や、タイヤが雪にはまる「スタック」により動けなくなった一般車両の救助を手伝う動画を載せる候補者もいる。
ある陣営はSNSに載せるコンテンツについて「前回は街頭演説の風景中心で『雰囲気だけ』だったが、政策・実績中心に短い言葉で分かりやすい発信を心がけている」と力を入れる。「ポスター掲示場は雪で減ったが、代わりがSNSだ」
集会に集まった支持者らによる拡散を重視する戦略も目立つ。1月28日のある演説会では「(候補者と応援弁士の)写真を撮ってくれましたか? 雪道を走り回らなくていいから、スマホで広めて」と呼びかけたり、自ら支持者と2ショットを撮りに回ったりする候補者の姿が見られた。
雪と寒さを避ける工夫により、選挙運動が見えにくくなっている点に戸惑いもみられる。ある野党関係者は「雪国の有権者は、街中で自然に候補者の情報にアクセスする機会が減った。不平等だ」と厳冬期の超短期決戦に疑問を呈した。【後藤佳怜、水戸健一、森原彩子】
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