中国機へのスクランブル、無人機の活用を検証へ 防衛省
日本周辺空域を飛行する中国の無人航空機に対して自衛隊機が行う緊急発進(スクランブル)について、防衛省は2026年度から無人機の活用に向けた検証を開始する。中国の無人機が「試行から運用段階に入った」との危機意識の下、効率的で実効性を伴う対領空侵犯措置につながるかを確かめる考えだ。関連費用として26年度予算の概算要求に11億円を計上した。
航空自衛隊によるスクランブルは、警戒管制レーダーで領空侵犯の恐れがある航空機を発見した場合に実施。原則として戦闘機2機が警戒に当たり、領空侵犯が確認されれば信号弾などで警告することもある。
ただ、戦闘機は燃料などの制約から数時間しか飛行できず、比較的安価で長時間飛行が可能な無人機に対し「コストが釣り合わない」とされる。空自トップの森田雄博・航空幕僚長は11月の定例記者会見で「中国の無人機が近年、日本周辺で飛行を活発化させる中、対領空侵犯措置は費用対効果の観点を含め、実効性をより向上させていくことが重要」との認識を示し、検証を通じて無人機の活用に必要な手順や注意点の確認などを行うとした。
防衛省によると、検証には米国製の無人偵察機「シーガーディアン(MQ9B)」を用いる予定。全長約11メートル、全幅約24メートルと無人機としては比較的大型で高性能カメラや赤外線センサーを搭載し、24時間以上の航続性能を有するとされる。
防衛省は4機を取得して28年度から海上自衛隊の鹿屋航空基地(鹿児島県)を拠点に運用を始める計画を進めており、この合間を縫って26~28年度に検証を行う。スクランブルで警戒に当たるような事態を想定し、MQ9Bが迅速に出動可能か▽他国の航空機を発見・監視できるのか――といった点を調べる。
一方、対領空侵犯措置は情報収集のようにあらかじめ設定されたルートを飛行するのではなく、相手の動きに応じる必要がある。無人機の限られたセンサー能力では対応が難しい場面も想定される。また、MQ9Bは警告を発したり、攻撃したりする能力を備えていない。検証結果次第では、攻撃能力などを備えた別の機種で改めて検証を行う可能性もある。
空自がスクランブルで対応した中国無人機(推定を含む)の数は、防衛省の発表ベースで24年度に30機に上り、23年度の9機から急増した。25年度も11月末時点で20機に達し、台湾と沖縄・与那国島間の空域が目立つ。自衛隊関係者によると、空自は無人機の飛行パターンを分析するなどし、部隊運用の効率化を図っているという。【松浦吉剛】
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