孤立のイスラエルと追い詰められたハマス 停戦合意は「利害の一致」
パレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスとイスラエルは現地時間9日、戦闘を停止し、ガザ地区で拘束された全ての人質を解放することで事実上合意した。
発効すれば、ガザの住民は1~3月の一時停戦以来、約7カ月ぶりに戦火から解放される。ただ、ハマスの武装解除などを巡る交渉はこれからで、戦闘終結と中東の安定につながるかは予断を許さない。
「神は偉大なり!」。停戦合意の発表を受け、SNS(交流サイト)では9日未明、ガザの住民が路上に繰り出し、手をたたいて踊ったり歓声を上げたりする様子を映した動画が投稿された。23万人以上の死傷者を出し、人道危機が深刻化しているガザの住民にとって、停戦合意は待望のニュースだった。
今回の交渉は、トランプ米大統領が9月末に包括的な和平案を提示したのをきっかけに動き始めた。国連総会に合わせて訪米していたアラブ・イスラム諸国の首脳らからいち早く支持を取り付け、イスラエルのネタニヤフ首相も同意した。
戦争継続を求めてきたネタニヤフ氏としては、ハマスが和平案を拒否することを見越していたとも報じられている。
だが、ハマスは10月3日の声明で和平案の一部受け入れを表明。トランプ氏はこれを歓迎し、イスラエルに「爆撃の停止」を要請した。ハマスの回答は全面的な承諾ではなかっただけに、ネタニヤフ氏はトランプ氏の反応に驚いたとも報じられている。
イスラエルはガザの戦闘を始めて以降、国際的な孤立を深めてきた。
レバノンやイランなど周辺国に戦線を拡大し、中東情勢は一気に不安定化。9月上旬にはハマス幹部を狙うため、停戦交渉の仲介国で、米国の同盟国でもあるカタールの首都ドーハを空爆した。中東諸国だけでなく、欧米からも強い非難を浴びることになった。
その後、英仏などはパレスチナ国家を承認。今回、米国の和平案に従って停戦に合意しなければ、最大の後ろ盾である米国の支持も失いかねない状況だった。
一方、ハマスも和平案に同意する以外に現実的な道はなかった。
これまでの戦闘で、ガザ地区の指導者シンワル氏ら最高幹部を軒並み殺害されたうえ、地下トンネルなどの軍事インフラも多くが破壊された。人道状況の悪化に伴い、ハマスに対する住民の反発も広がっており、戦闘を継続する意味はほとんどなかった。
これまでの停戦交渉は、ハマスが人質解放後の恒久停戦を求めたため、決裂していた。一方、今回の和平案では、米国がイスラエルに戦闘を再開させないことを約束しており、ハマスは米国を信頼したとみられる。
また、エジプトなどアラブ諸国による圧力も強まっていた。中東情勢は、ガザの戦闘で不安定化しており、停戦は喫緊の課題だった。米国の提案は、アラブ諸国が拒否してきたイスラエルによる占領や併合、住民の追放を認めないことが明記されており、十分に支持できる内容だった。
交渉が決裂すれば、戦闘激化にともなう隣国への難民流出という最悪のシナリオもあり得たとみられる。
停戦合意を受け、交渉の焦点はハマスの武装解除や戦後統治のあり方に移る。和平案では武装解除や軍事インフラの破壊を進め、ガザを「非軍事化」する一方、イスラエル軍が段階的にガザから撤退するとされている。
だが、ハマスは「イスラエルの占領が続く限り、武器は放棄しない」との立場を堅持。これに対し、イスラエルは「武装解除しない限り、ガザから撤退しない」と主張しており、溝は埋まっていない。
また、戦後のガザはブレア元英首相らによる暫定統治機構が主要な役割を担うとされているが、ハマスはブレア氏がメンバーになることを拒否しているとの情報もある。これらの点について交渉が長期化すれば、再び決裂する可能性も残る。【カイロ金子淳】
-
北朝鮮が最新ICBM「火星20」公開 米国向け政治的メッセージか
北朝鮮国営の朝鮮中央通信は11日、首都・平壌で10日に朝鮮労働党の創建80周年を記念する軍事パレードが開催されたと伝えた。パレードでは、最新型の大陸間弾道ミサ…国 際 9時間前 毎日新聞
-
韓国「指導者の歴史直視望ましい」 石破首相の戦後80年所感受け
韓国外務省は11日、石破茂首相が10日に発表した戦後80年の先の大戦に関する所感を受け、「日本の責任ある指導者たちが過去の歴史を直視し、国家間、国民間の信頼の…国 際 10時間前 毎日新聞
-
マクロン仏大統領、4日前辞任の前首相を再任命 混乱続く可能性も
フランスのマクロン大統領は10日、2026年度予算案などを巡る野党との対立で6日に辞任したルコルニュ前首相を、首相に再任命した。マクロン氏は中道左派・社会党に…国 際 10時間前 毎日新聞
-
トランプ政権、職員4000人超を「クビに」 政府閉鎖長期化で
米連邦政府機関の一部閉鎖をめぐり、トランプ政権は10日、政府職員の人員削減を開始したと明らかにした。対象は少なくとも7省庁計4000人超に上るという。与野党対…国 際 11時間前 毎日新聞
-
トランプ氏が健康診断 「並外れた健康」維持 心血管機能14歳若く
トランプ米大統領は10日、首都ワシントン近郊のウォルター・リード軍医療センターで健康診断を受けた。トランプ氏は現在79歳だが、心血管の機能は実年齢よりも14歳…国 際 11時間前 毎日新聞