1年で失職、タイ・ペートンタン首相どんな人? 政治経験乏しさ裏目

2025/08/29 21:04 

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 タイの憲法裁判所は29日、ペートンタン首相の解職を決めた。ペートンタン氏は職務停止命令を受けた7月1日にさかのぼって失職する。隣国カンボジアとの国境紛争に関する対応が、憲法で定められた首相としての倫理基準を満たしていないと判断した。新たな首相を決める指名選挙が近日中に下院で行われる見通し。

 ペートンタン氏は就任から1年あまりで、前任の首相と同様に司法の判断で座を退くことになった。判決は裁判官9人のうち6人の多数意見。ペートンタン氏は決定に「常に国のために尽力してきた」と悔しさをにじませた。

 問題となったのは、未画定の国境を巡って起きた両国軍の衝突に関し、ペートンタン氏がカンボジアの上院議長を務めるフン・セン前首相と交わした電話での会話だった。6月中旬に音声がネット上に流出し、ペートンタン氏がフン・セン氏を称賛し、自国軍を非難するような内容が国益を損ねたとして批判を浴びた。

 ペートンタン氏は緊張緩和のためだったと弁明したが、退陣を求める大規模な市民集会も開かれた。上院議員からの訴えを受けた憲法裁は7月に職務停止を命じていた。首相解職に伴い、内閣も総辞職した。

 ペートンタン氏は、タイ政界で影響力を誇ってきたタクシン元首相の次女で、タクシン派の「タイ貢献党」の党首。前任のセター氏が閣僚人事を巡って倫理上の違反があったとして憲法裁から解職命令を下されたことに伴い、2024年8月に当時37歳で後継に選出された。今回の解職命令は自身の失言が原因であり、政治経験の乏しさが裏目に出た。

 保守派は王制や既得権益を揺るがす民主派の台頭を阻止するために貢献党と手を組んで連立政権を樹立したが、決して一枚岩ではない。今回もペートンタン氏に対する国民感情の悪化を利用し、保守派がタクシン派の影響力をそぐ機会にしたという見方もある。

 ただし、両者とも連立を維持して早期の総選挙を回避したいのは同じで、次期首相の指名選では共闘が求められる。貢献党の首相候補はチャイカセム元法相だが、高齢で健康不安があるとされる。また14年のクーデターを陸軍司令官として主導し、23年8月まで首相を務めていたプラユット元首相らの名前も候補に挙がる。

 国立開発行政研究院(NIDA)の6月の世論調査では、貢献党への市民の支持は大きく低下しており、指名選を前に政党間の駆け引きが行われるとみられる。【バンコク武内彩】

毎日新聞

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