岡澤セオン、高校からボクシングを始めて世界王者へ もし人生が映画化されるなら主役は「ボクサ…
岡澤セオン、高校からボクシングを始めて世界王者へ

【写真】幼少期から鋭い目つき!レスリングに打ち込む岡澤セオン
今回から岡澤の素顔を探る連載がスタート。第1回目は「ボクシングを始めたきっかけ」、「競技人生の振り返り」、「アマチュアボクシングの魅力」などを掲載。新しいスタイルで競技界の仕組みをも変えてきた原点や、意外な素顔にも迫る。
──小学1年から中学3年まで9年間レスリングに打ち込んでいたそうですね。ボクシングを始めたきっかけは?
岡澤:叔父がレスリングをしていて、その影響で自然とレスリングをはじめて、結構成績も良かったので、1つの高校から推薦が来ていました。でも、違う高校に入りたいと思い、受験をしたら落ちてしまい‥併願していた日本大学山形高等学校に合格したんです。
しかし入学した高校にはレスリング部がなく、当時アイシールド21(※アメフト漫画)にハマっていたので、ラグビーとかいいなとか、中学の時にレスリングをしながら陸上部にも所属していたので、陸上やろうかなとか思っていたのですが、入学式の日に歩いていたら強面の先輩に「お前ボクシング部に入るだろ」と突然声をかけられ、怖すぎて首を縦に振ってしまいました。それがボクシング人生のスタートです。
だから、もともとボクシングに特別な関心があったわけじゃないんです。漫画やアニメにハマって始めたとかそういうのも一切なくて(笑)。最初は競技の知識もなかったし、周りの会話についていくために必死で勉強しながら、練習に励んでいました。
そして、高校生の時に初めて出た大会で、先輩から「ジャブが上手いから、ジャブだけ打て」とアドバイスを受けて、本当に“ジャブだけ打って避ける”を繰り返したら、当時の東北チャンピオンに勝ったんです!その時にボクシングってただの殴り合いではないと気がつきはじめて、一気にのめり込んでいきましたね。
──レスリングの道が絶たれたとき、ボクシングでここまで成功するイメージはありましたか?
岡澤:全然ないです(笑)。正直、ボクシングがオリンピック競技だということすら小学生のときは知らなかったくらいですから。高校でボクシングを始めて、中央大学法学部に進んで、卒業のタイミングでも最初はボクシングを仕事にするつもりはなかったんです。就職活動もして内定も出ていました。
でも後輩からの強い誘いがあって、鹿児島県体育協会から国体に向けた強化指導員兼選手として競技を続ける道が急に開けました。最初はリュックひとつで乗り込むような状態で行きましたけど、そこから「ボクシングでお金をもらっているからには結果を出さなければいけない」という覚悟が固まっていきました。
あの選択がなければ、今の自分はなかったと思いますし、人生で一番大きな分かれ道でした。
──競技キャリアの中で、最もうれしかった瞬間と最も悔しかった瞬間を教えてください。
岡澤:うれしかった瞬間は、2021年の世界ボクシング選手権で金メダルを獲ったときですね。日本人初の快挙で、スポンサーさんへの大きな恩返しができたと感じた瞬間でした。支援してくれる方々がいて初めて遠征にも行けるので、結果を出したときの「報われた」感覚はあのときが一番大きかったです。
ただ、その優勝がほとんどメディアで取り上げられなかったことが、本当に悔しかった。日本人初の世界王者なのに、ほぼ報じられない。アマチュアボクシングって、プロと違ってなかなかメディアに出てこない競技なんです。そのとき「自分が動かないと変わらない」と強く思いました。悔しさとうれしさが同時に来た瞬間でしたね。
──アマチュアボクシングの魅力を、改めて言葉にしてもらえますか?
岡澤:プロボクシングと一番違うのは、プロが相手に与えた「ダメージの重さ」を競うのに対し、クリーンなパンチをいかに「多く」当てたのかが勝敗を左右するところです。
ダウンを取ることが目的ではなく、3分3ラウンドという早いテンポの中で、どれだけ多く自分の攻撃を相手に当て、逆に被弾を少しでも減らせるかが重要になるので、プロボクシングよりもテクニカルな要素が多いのが特徴です。
採点方式もユニークで、審判が当たったパンチの数をリアルタイムに数え、それを元に採点するので、僕たち選手は自分のパンチやスタイルを審判に「どう見せるか」を考えることが必要になります。そのため試合中にはさまざまな駆け引きがあり、知れば知るほど奥が深い競技だと思っています。
──以前は日本ボクシング連盟の選手に個人スポンサーがつけられなかったと聞きました。それを変えたのが岡澤さん自身だとか。
岡澤:そうなんです。当時は大学卒業後にボクシング競技を続けるなら自治体職員か自衛隊体育学校に属するか、ほぼ2択しかなかった。それももちろん有難いのですが、それだけじゃなく、もっと夢のある形があってもいいんじゃないかと思ったんです。固定給ではなく、競技で結果を出して、自分でスポンサーを集めて生計を立てる選手がいてもいいと思いました。
ちょうど僕が東京オリンピック出場を決めた時ですかね。鹿児島での恩師である荒竹俊也会長(Wild.b sports代表)と一緒に連盟に掛け合って、個人スポンサーをつけてもOKという仕組みに変えてもらうことができました。当時の連盟の方々も尽力してくださって…。自分が動いたことで後輩たちの選択肢が増えたなら、それはすごく意味のあることだったと思っています。
今15社の企業からサポートをいただいていて、そのほとんどがずっと昔から応援してくれている人たちなので、何で恩返しができるか?と考えた時にやっぱり(ロスオリンピックでの)金メダルしかないと思っているんですよね。でも、それでも今までの恩は返しきれないと感じているので、一生を懸けて返していきたいという気持ちです。
──高校からボクシングを始めて世界チャンピオンになった自分の人生、もし映画化されるなら誰に演じてほしいですか?
岡澤:あえてボクサーっぽくない人がいいですね。霜降り明星のせいやさん!ボクシング映画って、いかにもボクサーっぽい見た目の方や、少し強面な雰囲気の俳優さんがやりがちじゃないですか。
でも、ボクシングなんて知らなかった普通の高校生が世界王者になっていく話なので、むしろそういうギャップのある人の方がリアルかなって思って。ヒロインは、長澤まさみさん、満島ひかりさん、加藤小夏さんとかが良いなと強く思っています(笑)。
──もしボクシングをしていなかったら、今頃どんな仕事をしていたと思いますか?
岡澤:バンドマンになっていたかもしれないです(笑)。中学の頃からロック音楽にどっぷりハマっていて、「LOSTAGE」というバンドに本気で入れ込んでいました。全国のライブハウスに足を運んでいましたね。
また世界的ボクシングカメラマンの福田直樹さんに弟子入りを志願した時期もありましたし、レコード店で働きたいという気持ちがすごく強い時期もありました。
大学卒業時はボクシングをやめて就職する道も真剣に考えていたので、今とは全然違う人生を歩んでいた可能性が十分あります。でも、あの分かれ道でボクシングを選んでよかった。まだ夢の途中なので、悔いのないように戦い続けたいです。
■岡澤セオン(おかざわ・せおん)
1995年12月21日生まれ、山形県山形市出身。ガーナ人の父と日本人の母を持つ。本名:岡澤セオンレッツ クインシー メンサ。中央大学法学部卒業。INSPA所属。大橋ジム拠点。小中学校でレスリングを経験後、高校入学を機にボクシングを始める。2021年AIBA世界選手権ウェルター級で日本人初の金メダル。東京・パリ2大会連続オリンピック出場。2025年World Boxing世界選手権70キロ級銀メダル。2026年9月に愛知で開催されるアジア競技大会で2大会連続の金メダル獲得を目指し、2028年ロサンゼルスオリンピックでの金メダル獲得を目標に掲げる。
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