「美容内服薬」で人気のトラネキサム酸、感染症流行時には供給不足も…“配合薬”による新たな解…

2025/08/15 08:10 

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人気の美容成分は?

 昨今、SNSなどで話題の「美容内服薬」。手軽に美肌効果を得られると聞くけれど、「どの成分が何に効くの?」「飲み合わせは大丈夫?」といった疑問を持つ人もいるはず。さらに成分によっては、美容目的の人気の高まりから、医療として必要とする人に行き届かなくなる…という社会問題も。正しい知識の重要性が高まる今、クリニックフォア監修医兼ナチュラルスキンクリニック院長の皮膚科医・圓山尚先生に聞きました。

【画像】めっちゃ便利!これが5種の人気成分をまとめた配合薬

■体の内側から作用する美容内服薬の需要増、特に人気の成分は?

──美容目的の飲み薬、美容内服薬がSNSなどで話題になっています。クリニックでも処方する機会は増えましたか?

 「とても増えています。みなさん、SNSなどで勉強されているようで、具体的な成分を挙げて『○○と○○をください』とおっしゃる方も増えました。美容目的の内服薬の使用は自由診療となるので、ご希望に沿って処方することは可能ですが、皮膚科医としてはきちんとカウンセリングをした上で、安全かつ効果的なお薬を提案したいというのが正直なところです」

──美容内服薬は、塗り薬(外用薬)やスキンケアよりも効果が期待できるのですか?

 「外用薬やスキンケアは皮膚の表面にしか届かないものですが、シミの種類によっては表面からアプローチしたほうが改善が早い場合もあります。一方で内服薬は体の中から作用するので、お肌の広範囲に効かせたい場合に有効です。また、外用薬は成分によっては肌に塗るとピリピリと刺激が出ることもあるので、お肌が敏感な方には内服薬を提案することもありますね」

──特にどの成分が人気ですか?

 「昨今は以下の5つが、美容内服薬のスタンダードになっています。まず美白を求めるのであれば、<ビタミンC>が一般的ですね。一方で<ビタミンB群>には皮脂の分泌を抑える作用のあるため、オイリー肌や毛穴の開き、ニキビが気になる方向け。<グルタチオン>も美白効果が期待できますが、加えて紫外線やストレスに対する抗酸化作用があります。<L-システイン>には肌のターンオーバーを促す効果があり、日焼けや肌荒れの改善が期待できます。最後に<トラネキサム酸>ですが、こちらは炎症を抑える効果があり、肝斑というタイプのシミへの効果が報告されています」

──トラネキサム酸は最近よく耳にする成分です。

 「肝斑の改善が期待できるので、トラネキサム酸を指名される方は多いですね。ただしトラネキサム酸には血を固める作用があるので、注意が必要です。特に女性の場合、低用量ピルとの併用は避けたいところですし、血栓系の病歴のある方には禁忌になる場合もあります。リスクがない方には、トラネキサム酸単体よりもビタミンCと併用することで、より効果が期待できますのでおすすめです」

──そうした相互作用のある成分もあれば、逆に併用することでリスクやデメリットのある成分はないですか?

 「先ほど挙げた5種の有効成分に関しては特に飲み合わせの問題はないですし、私の患者さんでも5種類すべて処方している方は多いです。とはいえ、毎日5種類のお薬を飲むのはなかなかご負担のようです。3ヵ月分を処方しても、予定どおり3ヵ月後に再来院される方は本当に少なくて、だいたい1ヵ月遅れで来られる方が多いでしょうか」

──飲み忘れをしている方も多いということですか?

 「そうですね。厳密に言えば病気を治すためのお薬ではないので問題はないのですが、効果をより感じるためには、用法用量を守って継続して服用することが大切です。そういう意味では、複数の美容内服薬を併用するデメリットは、『服薬管理がしづらい』という1点に尽きるかもしれません」

■感染症流行時はトラネキサム酸の配給が制限、配合薬により問題を解決

──5種の有効成分をひとまとめにした<美肌プレミアム内服5種(配合薬)>が新登場したと聞きました。こうしたものはどんな人に向いているのでしょうか?

 「1回3錠・1日2回で5種の有効成分を服用できるので、個別で飲むよりも圧倒的に服薬管理がラクになります。また5種すべてを別々に処方した場合に比べて、費用負担が抑えられるのもメリットの1つ。ピンポイントにお肌のお悩みがあるというよりも、幅広い美肌効果を得たい方にはおすすめですね。手軽に始められるので、美容内服薬のエントリーモデルにもいいと思います」

──逆に注意したほうがいい方は?

 「トラネキサム酸が配合されているので、先ほども言ったように低用量ピルとの併用はおすすめできないですし、血栓症リスクのある方はNGです。低用量を服用されている場合は、ミニピルという併用可能なピルへの変更を提案したり、トラネキサム酸を含まない内服薬を処方することも可能なので、カウンセリングでは必ず病歴や服薬歴を教えていただきたいです」

──カウンセリングは大事ですね。また、トラネキサム酸は飲み合わせもさることながら、昨今は美容内服薬として処方されることが増え、供給不足の問題も起きていると聞きます。

 「肝斑に悩む方に、美容内服薬として処方されることが増えているのはたしかです。ただ本来、トラネキサム酸は喉の炎症を抑制するお薬。そのため、インフルエンザなど感染症流行の時期には治療目的での供給が優先されるため美容皮膚科目的での処方は一時的に制限される可能性があります」

──メーカーとしても、美容よりも病気の治療を優先するわけですね。

 「当然のことだと思います。しかし、供給制限がない状態であれば、単剤のトラネキサム酸は炎症を抑えることで、肝斑だけでなく炎症後の色素沈着やくすみにも効果が期待できるお薬です。美白や透明感を目指す方にも、日々のスキンケアと組み合わせて取り入れることで肌全体の印象アップにつながります。配合薬は、トラネキサム酸とビタミンCなど他の有効成分とがバランスよく配合されつつ、医療目的での処方が優先される場合でも安定してお薬をお届けできるため、服用される患者様にとっても安心だと思いますね」

──<美肌プレミアム内服5種(配合薬)>が開発された背景には、単剤のトラネキサム酸の供給不足という社会問題に加えて、美容目的であっても安定して服用を継続することができるという意味合いもあったわけですね。

 「そうですね。私たちも日頃から、医療として必要とする方にトラネキサム酸をきちんとお届けできるよう配慮した処方判断を行うよう心がけています。その上で、トラネキサム酸をはじめ複数の有効成分をバランスよく組み合わせた配合薬なら、安定して継続できる環境をご提供できます。対面・オンライン、どちらの診療も行っていますので、気軽にご相談いただければと思います」

【監修】
圓山 尚(えんやまたかし)
ナチュラルスキンクリニック院長兼クリニックフォア監修医。金沢医科大学医学部卒業後、日本医科大学附属病院皮膚科に入局し皮膚科・皮膚外科・レーザーを中心とした診療を行う。その後、湘南美容クリニックでの勤務を経て、2019年にクリニックフォア新橋院を開院。現在はクリニックフォア監修医と永福スキンクリニック(現ナチュラルスキンクリニック)の院長を務め、”美のかかりつけ医”として活動している。

(文:児玉澄子)
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