漫画『はだしのゲン』誕生から現在までを追うドキュメンタリー公開決定、BS12が初の映画製作

2025/08/06 08:15 

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ドキュメンタリー映画『はだしのゲンはまだ怒っている』劇場公開決定 (C)BS12 トゥエルビ

 アメリカによって人類史上初めての原子爆弾が広島に投下されてから80年――。不朽の反戦漫画『はだしのゲン』の〈誕生〉から〈現在〉までを見つめ直すドキュメンタリー映画『はだしのゲンはまだ怒っている』が、11月より東京・ポレポレ東中野、広島・サロンシネマほかにて順次劇場公開されることが決定した(配給:アギィ)。

【画像】ドキュメンタリー映画『はだしのゲンはまだ怒っている』場面写真

 『はだしのゲン』は、原爆で家族を失い、貧困や偏見の中でも力強く生き抜こうとする少年・ゲンの姿を描いた漫画。主人公ゲンのモデルは、6歳で被爆した作者・中沢啓治氏自身である。1973年に「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載が始まってから半世紀、これまでに多くの言語で翻訳・出版され、世界中で読み継がれてきた。

 一方、近年では「描写が過激」「誤った歴史認識を与える」などの理由から、学校図書館での閲覧制限を求める声が上がったり、広島市の平和教材から削除されるなど、議論を呼んでいる。

 本作は、メディア・アンビシャス映像部門大賞、第15回衛星放送協会オリジナル番組アワード〈ドキュメンタリー部門〉最優秀賞を受賞したBS12スペシャル『「はだしのゲン」の熱伝導~原爆漫画を伝える人々~』(2024年9月放送)を映画化したもの。なお、BS12が自ら映画製作を手がけるのはこれが初となる。

 監督は、本作が映画初監督となる込山正徳。これまで数多くのドキュメンタリー番組を演出してきた実績を持つ。制作はテレビ版と同じく東京サウンド・プロダクションが担当。映画化にあたっては、込山監督を敬愛する大島新(『香川1区』『国葬の日』)と前田亜紀(『NO選挙, NO LIFE』)が共同プロデューサーとして参加している。

 戦後80年を迎えたいま、映画は『はだしのゲン』という作品を通して、の世界にあふれる怒りや悲しみ、そして人間の優しさをあらためて浮かび上がらせながら、反戦のメッセージを現代に問いかける。

■企画・監督・編集:込山正徳のコメント

 私の祖父は東京大空襲で殺され、骨も出てこなかったそうです。母親はその悲惨な出来事を、私が子どもの頃、何度も語っていました。現代は、あの戦争のことを語る方が高齢になり、戦争によって苦しんだ記憶を皮膚感覚で知る機会が、極端に減りました。つらい記憶が伝承されないことに危惧を感じています。また戦争が起こるのではと。戦争によって命を落とすのは一般人なのに、なぜ我々は戦争を止められないのでしょうか。未だに核兵器によって、他国を脅すことが普通に行われています。人類は、ヒロシマ、ナガサキから何を学んだのでしょうか。『はだしのゲン』から学ぶことは、たくさんあります。この映画から感じ取っていただけたら幸いです。

■プロデューサー:高橋良美のコメント

 2024年に放送したテレビ番組『『はだしのゲン』の熱伝導~原爆漫画を伝える人々』が、より力強い内容になり、映画となりました。BS12が自ら映画を作ることはこれが初めてです。この作品のテーマは、「怒り」。「なぜこんな目に合わなければいけないのか」というゲンの怒り、その怒りを今に伝える人々の熱を感じてほしい、その思いで映画化までたどり着きました。ゲンの怒りは、2025年のこの今にこそ伝えるべきものだと、思いはますます強くなっています。

■共同プロデューサー:大島新のコメント

 込山正徳監督とはもう30年の付き合いになる。ずっと尊敬する先輩ディレクターだったが、目標にするのは早くからあきらめた。なぜなら「込山スタイル」は、とても真似ができないから。込山さんは、人懐こい笑顔と優しい人柄で、難しい被写体とも自然体で向き合う。差別に苦しむ人たちや難病患者、百姓家族や悪ガキたちにカメラを向け、数々の傑作ドキュメンタリーを作ってきた。そんな込山さんが初めて映画に挑んだのが『はだしのゲン』だ。ところが今回の込山さんは、いつもとちょっと違う。果てしない優しさに、静かな「怒り」が加わった。映画は叫んでいる。「日本人よ、人類よ、これでいいのだろうか」と。
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