お菓子から推しの対象に? 映画公開の『たべっ子どうぶつ』が守り続ける“あの頃の味”、定番を…

2025/05/16 09:10 

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5月1日より上映されている『たべっ子どうぶつ THE MOVIE』(C)ギンビス (C)劇場版「たべっ子どうぶつ」製作委員会

 1978年発売以来、長きにわたって愛され続ける国民的お菓子『たべっ子どうぶつ』。近年はパッケージに描かれた動物たちのグッズも人気で、お菓子のキャラクターを推しの対象とする異例の現象を生み出した。ロングセラーお菓子が続々と生産終了になる中で、『たべっ子どうぶつ』が人々の心を掴み続けるのはなぜか。映画『たべっ子どうぶつ THE MOVIE』も話題を呼んでいるギンビスに話を聞いた。

【写真】揃えたくなる可愛さ! 推されるきっかけをつくった「たべっ子どうぶつ」カプセルトイ

■カプセルトイをきっかけに、10~20代のタッチポイントを増やしたグッズ展開

 2019年にカプセルトイを発売して以来、今やすっかり"推しの対象"にもなった『たべっ子どうぶつ』。グッズの人気はもとより、お菓子の売上も2019年から連続で2桁増を推移し、昨年度にはついに2019年比200%を達成するなど、推し活ビジネスの成功事例として注目を集めている。

「もともと『たべっ子どうぶつ』はお子さまに安心して与えられるお菓子として、親世代が主な購買層でした。一方で10~20代とのタッチポイントが弱かったことも課題でした。カプセルトイをはじめとするグッズ展開は、やがて親世代となる若い世代の方々に対して、お菓子とは違った角度からアプローチし、ファンを増やすための施策でした」

 2019年は推し活ブームが本格的に盛り上がる"前夜"だった。

「当時はむしろ喫茶店やアナログレコードといった昭和レトロブームが盛り上がっていました。たべっ子どうぶつのグッズに対しても『懐かしい』『小さい頃によく食べた』というリアクションが多かったですね。SNSではパッケージと同じ並びで、9体の動物さんたちのグッズを配置した投稿をよく見かけました」

 それから6年。近年はたべっ子どうぶつの箱推し勢のみならず、特定のどうぶつを単推しする人も増えている。

「グッズ展開が始まった当初は、9体がまとまった形でないと『たべっ子どうぶつ』としては認識していただけませんでした。やがてさまざまな企業さまからコラボのお声がけをいただくなどして、動物さんたちの姿が多くの方の目に触れたことから、1体1体の可愛らしさや個性に気づいていただけたのかなと思います。カラフルなキャラクターも、"推しカラー文化"と親和性があったのかもしれません」

■ただ可愛くて癒されるだけではない、描きたかったのは“お菓子の本質”

 5月1日からは『たべっ子どうぶつ THE MOVIE』の劇場公開が始まった。近年加熱する"たべっ子どうぶつ推し"にあやかった映画化かと思いきや、企画は2020年2月に始まっていたという。

「弊社の営業車には『たべっ子どうぶつ』のキャラクターたちがプリントされているのですが、それを街で見かけたプロデューサーの須藤孝太郎さんから映画化のお話をいただいたんです。弊社もより広い層へのタッチポイントを増やす施策として映像化をしたいと考えていた頃でしたので、とてもありがたいご提案でした」

 須藤孝太郎氏と言えば、アニメ『ポプテピピック』シリーズの仕掛け人。視聴者の予想の斜め上を行く内容で大バズりした同シリーズだが、『たべっ子どうぶつ THE MOVIE』もまた、ストーリーから映像まで、"可愛くて癒されるお子さま向け映画"といったヌルい先入観を遥かに超えたクオリティに仕上がっている。

「映像に関しては弊社はまったくの素人ですので、どうぶつさんたちの色やフォルム、そして『お菓子に夢を!』『お菓子を通して世界平和に貢献する』という弊社の企業理念を守っていただきたいとお願いし、クリエイターのみなさんの自由な発想とご経験にお任せしました」

 映画の舞台はおかしから生まれたキャラクター“オカシ―ズ”と“人間”が仲良く暮らすスイーツランド。そこでは世界的アイドルグループ「たべっ子どうぶつ」が人気を博している。特筆すべきはギンビスだけでなく、他メーカーのおかしのキャラクターも多数登場すること。これだけでも本作が単なる『たべっ子どうぶつ』のプロモーション映画ではなく、同社の理念やメッセージが込められたものであることが伺えるはずだ。

「お菓子を食べなくても生きてはいけます。それでもお菓子を食べることで笑顔になったり、心が豊かになったり、誰かに優しくできたり──。そういう存在だと信じて、人生100年時代にお菓子を必需品に感じていただけるよう、私たちはお菓子を届け続けています。映画もまた、そうしたお菓子の本質をきちんと描いていただいたことに大満足しています」

■天候や季節によっても味を微調整、企業命題として“あの頃の味”を守り続けるワケ

 1978年発売から47年。国民的お菓子として愛され続ける『たべっ子どうぶつ』。その秘訣は「いつ食べても変わらない"あの頃の味"」を守り抜いていることだという。

「製法やレシピを変えなければ味を守れるわけではありません。特に近年は気候変動で、小麦粉などの原材料の味そのものが変わっています。また季節によっても味の出方が変わりますので、工場では日々の微調整が欠かせません。さらに社長が毎日、工場から出荷される『たべっ子どうぶつ』を食べてチェックするなど、会社全体で"あの頃の味"を守る努力を続けています」

 近年は、惜しまれながら生産終了となるロングセラーお菓子が目立つ。お菓子のトレンドの移り変わりはますます加速しており、定番を生み出す以上に、継続することはますます難しくなっている。

「弊社のお菓子が最も重視しているのは、安心安全に召し上がっていただけること。そのために大切なのはトレンドを追いかけるよりも、"あの頃の味"を守り続けることだと考えています。積極的に新商品の発売を続けながらも新フレーバーは奇抜さではなく、誰もがホッとできる飽きのこない味を目指しています。その上でトレンドのお菓子にも負けないように、これからもさまざまな形で『たべっ子どうぶつ』に親しんでいただける施策を考えていきたいと思います」

 ちなみに『たべっ子どうぶつ』が変えていないのは味だけでなく、動物たちのキャラクター造形も発売当時のままにこだわっている。『たべっ子どうぶつ』が推しの対象となったのも、パッケージから飛び出したキャラクターたちが"あの頃の味"とともに優しい思い出を喚起させるからだろう。

 世界20ヵ国以上の国と地域で発売されている『たべっ子どうぶつ』は、世界の子どもたちにとっても"あの頃の味"となりつつある。映画も「世界展開を目指したい」と意欲を燃やしているだけに、「お菓子を通して世界平和に貢献する」というギンビスの理念が広く伝わることに期待したい。

(取材・文/児玉澄子)
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