日産、過去3番目の赤字額 社長「より踏み込んで早く取り組みを」

2025/05/13 20:59 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 日産自動車は13日、国内外で車両を生産する7工場を2027年度までに閉鎖すると発表した。現在の17工場を10カ所に統合し、これに伴い国内外2万人の人員削減も進める。同日発表した25年3月期連結決算は、最終(当期)損益が6708億円の赤字(前年は4266億円の黒字)だった。販売不振に伴う国内外の工場の減損損失の計上が主因。従来の事業再生計画より踏み込んだ経営合理化策を実施し、経営の立て直しを急ぐ。

 最終赤字額は経営危機に陥っていた00年3月期(6843億円)、新型コロナウイルス禍の20年3月期(6712億円)に次いで過去3番目。4月に7000億~7500億円と過去最大の赤字見通しを示していたが、数字を精査し圧縮された。イバン・エスピノーサ社長は横浜市で開いた記者会見で「より踏み込んで、より早く取り組みを進めていかなければいけない」と述べた。また、工場閉鎖は「(日産の)存続のため実施する」とも強調した。

 日産は主力市場の北米や中国で販売不振に陥り、24年9月中間連結決算で最終利益が前年同期比約9割減るなど急速に業績が悪化。これを受けて事業再生計画を策定し、国内外での従業員9000人の削減▽タイを含む3工場の閉鎖▽世界生産能力の2割(年間100万台分)削減――などを柱としていた。

 新たな計画では、27年度までに人員削減の規模をグループ全体の約15%に当たる計約2万人に拡大。24年度実績比でコストを5000億円削減する方針も盛り込んだ。ただ、国内5工場も対象になる工場閉鎖計画の詳細は「現時点ではそれ以上言えない」(エスピノーサ社長)と述べるにとどめた。

 25年3月期の世界販売台数は、前期比2・8%減の334万台。売上高は0・4%減の12兆6332億円と微減にとどまった。ただ、値引きやローン金利の優遇に充てる販売奨励金のコストがかさみ、本業のもうけを示す営業利益は87・7%減の697億円だった。

 トランプ米政権が自動車や自動車部品に課した25%の追加関税の影響は、利益が最大で4500億円下押しされると見込んだ。同時に発表した26年3月期の連結業績予想では、売上高は前期比0・1%減の12兆5000億円としたが、営業損益や最終損益の数字は公表を見送った。

 関税の影響を最小化するため、北米向けスポーツタイプ多目的車(SUV)「ローグ」の一部生産について、福岡県苅田町の工場から米国工場への移管を検討している。日産は米国での生産を強化し、更なる影響軽減を図る方針。【鶴見泰寿】

毎日新聞

経済

経済一覧>

注目の情報