“焼酎割り”市場、レモンサワーの牙城崩すのは「お茶割り」? 1.6倍に伸長、“食中酒”の優…

2026/07/30 09:10 

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お茶割り専門店でつくられる、さまざまなお茶割り(茶割 学芸大学)

 焼酎をお茶で割って飲む「お茶割り」。かつてはボトルキープするようなスナックや居酒屋で出ていた程度だったが、その状況が様変わりしている。若年層を中心に、甘くない・炭酸ではない、食事に寄り添う酒を選ぶ傾向が強まっており、各社が“緑茶割り”や“紅茶割り”といったRTD飲料を発売。サントリーによると、同カテゴリーであるJJ缶の購入層は20〜30代が7割程度を占め、市場規模はこの2年で1.6倍に拡大したという。絶対王者であるレモンサワーの牙城を崩せるのか? 専門店と、市場を仕掛けるメーカー、双方に話を聞いた。

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■日本茶・本格焼酎の生産者から熱視線「国内で必ず成熟させる」

 2016年にお茶割りを専門として提供する居酒屋「茶割」をオープンさせ、現在都内で3店舗を展開するオーナー・多治見智高さんは、オープン当時「日本中を見渡しても、お茶割りを主役に据えた専門店は一軒もなかった」と振り返る。

「2010年代にEXILEさんが飲み会でレモンサワーを豪快に飲む逸話が伝説のように語られ、『ハイボールの次に流行るお酒はレモンサワー』と流れが確立されていくのを横目で見ていました。ネクストレモンサワーとなるお酒は何かと考えたときに、味わいや料理とのペアリングに広がりを持たせられそうな“お茶割り”に勝機があるのではと専門店を作ったのが2016年です。お茶自体のブームは定期的に来ていて、お酒のジャンルでもトレンドの波に乗れる幅の広さと深さがあると思っています」(「茶割」オーナー・多治見智高さん)

 直近ではタピオカミルクティーが流行り、現在は空前の抹茶ブームが継続中。「お茶は数年に一度、必ず流行る」と周期性を感じ取り、静岡の“静岡割り”、鹿児島の“天文館割り”など、地域発で普及の試みはなされてきたが、残念なことにいずれも大衆的な定着には至らなかった過去がある。

「お茶割りは、よくも悪くも“好きな人は好き”で留まっていたジャンルでした。お茶割りの専門店が多いとされる東京の恵比寿、目黒、三軒茶屋あたりは、“自分はこういう飲み方が好き”と方向性が分かっている人がお酒を楽しむエリアです。その特徴も相まって、ニッチなトレンドが作られやすい傾向にあり、お茶割りは期待されていたのにブレイクしきらない状況がここ数年続いていました」

 しかしいま、日本茶と本格焼酎の両者から“熱視線”が送られているという。「僕は仕入れで日本茶の生産者、本格焼酎の蔵元、両方と取引があるのですが、どちらの業界からも熱い期待が寄せられているのを感じます。抹茶をはじめとしたブームがあり、焼酎も香り系芋焼酎など『これが焼酎の味わい?』と驚くようなテイストが増えている。どちらも日本由来のものなので、“いま日本で成熟せずして、どこで広がるのか”と(笑)。サントリーさん、宝焼酎さんなどRTDで飲めるお茶割りがここまで増えて、大衆に広がる土壌ができてきました。いま国内でカテゴリとして成熟させることにこそ、意味があると考えています」。

 多治見さんが現場で肌で感じているこの手応えは、実はメーカー側が見ているデータとも合致する。

■お酒の”低負荷ニーズ”を邪魔しない、”お茶割り”に寄せられる期待値

 飲み会自体の楽しみ方という面では「何を飲むかより、誰と飲むか。仲間との楽しい時間をどう過ごすか」がより重要になっているとサントリーの佐野弘さんは話す。

「居酒屋で皆でワイワイ語り合う時は、お酒はその“楽しい時間”を過ごすためのどちらかというと“脇役”として捉えられていると考えています。お酒の低負荷ニーズが高まっていて、お話を楽しみたいからあまり酔いたくなかったり、食事を味わうため強い刺激や味がするアルコールは避けたかったり。ストレスを発散するような飲み方ではなく、一緒にいる環境や時間自体を楽しみたい傾向があります」(サントリー株式会社リキュール・スピリッツ部の佐野弘さん)

 こういった低アルコール・低刺激志向の広がりとともに、最初の1杯からお茶割りを選ぶ若年層が増えているという。JJ缶の購入層は20〜30代が7割程度を占め、市場規模はこの2年で1.6倍に拡大。なかでも20〜30代の購入量は3倍以上伸びているという。象徴的なのが、佐野さんが担当している『茉莉花〈ジャスミン茶割・JJ〉缶』だ。

「ジャスミン焼酎『茉莉花』として、ボトルで発売されていたものを2024年4月にRTD缶で全国発売しました。缶が登場したことで、現在では飲んでくださる方の7割ほどが20〜30代の若年層となっています。従来のお茶割りといえば、焼酎の香りが強くて飲みにくいイメージがあったり、年配の方が食事に合わせて飲まれる、ちょっと地味なカテゴリーという位置づけだったりしたと思うのですが、JJ缶が登場したことによって“飲みやすいお酒”である認識を持ってもらうことができました。お茶割りを“自分たち向けのお酒”へと、若年層のイメージを転換することができたのではないかと考えています」(サントリー株式会社リキュール・スピリッツ部の佐野弘さん)

■”焼酎の脇役”から”お茶が主役”へ 「お茶割りが次の”食中酒”になれるのではないか」

 JJ缶が広げた裾野の先に、同社がさらなる挑戦として据えたのが『お茶のこさいさい〈緑茶割〉〈紅茶割〉』だ。国産抹茶を使用するなど原料にもこだわり、お茶の濃さと香りが楽しめる中味になっている(東北6県で期間限定発売)。商品を手がけたサントリー株式会社 未来創造本部 新製品開発部の中村美保子さんは、開発の狙いをこう語る。

「勉強のために専門店や飲食店で様々なお茶割りを飲みに行くのですが、近年は味わいの設計が“お茶の香りや風味”を活かしたものに変わってきた感覚があります。焼酎の味を楽しむこともできるし、お茶を主軸にしたテイストにも寄せられる。自分が馴染みあるお茶をお酒で楽しめるよう環境が整えられたからこそ、“飲みづらいお酒”のイメージも払拭されています。お茶の味わいが中心になることで若年層が飲みやすくなるのであれば、お茶の濃さや香りを主軸にするお酒を出すことで、さらに間口を広げられるのではないかと考えました」(サントリー株式会社 未来創造本部 新製品開発部の中村美保子さん)

 かつて“渋いおじさまの飲み物”というイメージが強かったお茶割りに、JJ缶が築いた親しみやすい世界観を重ね合わせるーーそれが『お茶のこさいさい』の位置づけだという。数量・地域を限定した発売は、若年層にとどまらない受容の広がりを見極めるための試金石でもある。中村さんによれば、発売後の実績は計画を上回り、レモンサワーなど別カテゴリーの食中酒を飲んでいた層からも「親しみやすくて買ってみた」という声が届いているという。

 お茶割りは今後、家飲みの中でどんな存在になっていくのか。「ハイボールやレモンサワーが食中酒として定着したように、お茶割りが次の“食中酒”になれるのではないか」と中村さんは展望を語る。炭酸が抜けず、ぬるくなっても美味しく飲めるという特性を武器に、専門店とメーカーがそれぞれの立場から広げてきたこのカテゴリーは、まだ伸びしろを残しているようだ。
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