60代夫婦、震災経験が変えた人生の選択 キャンピングカーでの日本一周「地図を埋める旅ではな…

2026/07/22 07:10 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

キャンピングカーで日本一周をスタート/どうみん夫婦(@douminfufu)さん提供

 「いつかやりたい」と思っていたことを、いつ始めるのか。その答えを求めるように、定年退職後、日本一周の旅へ踏み出した夫婦がいる。地元・北海道で起きた地震での大規模停電をきっかけに、退職金を投入してキャンピングカーを購入。日本一周を目指し、日々の管理や費用面の工夫など、旅を続ける中で見えてきた生活のリアルを発信している。「元気なうちに、やりたいことをやる」と定年後だからこそ選べた、“自分たちらしい人生の楽しみ方”とは? キャンピングカーで日本一周を楽しむどうみん夫婦(@douminfufu)さんに話を聞いた。

【写真】退職金全力投入で購入した、ボレロブイマックスの全貌「本当に車の中?」

■“自由だけど自由じゃない” 震災がきっかけでスタートした「動く家」生活

――キャンピングカー旅を始めたきっかけは何だったのでしょうか。

【どうみん夫婦】旅の始まりは約25年前。子どもたちと週末に家族でキャンプへ出かけるようになったのがきっかけです。その後はバンガローや格安ホテルを利用しながら旅を楽しみ、子どもの独立を機に夫婦二人になった時に「ホテルに泊まるくらいなら車中泊をしてみよう」と思い、ミニバンでの車中泊旅を始めました。

 その頃から「いつかはキャンピングカーで旅をしたい」という憧れがありましたが、決定的なきっかけは北海道胆振東部地震のブラックアウトです。長時間の停電を経験し、「旅だけでなく災害時のシェルターとしても心強い」と感じ、本格的に購入を決意しました。

 もともと海外旅行が好きだったので定年後に海外で暮らすことも考えていましたが、コロナ禍や円安をきっかけに「日本にもまだ行ったことのない素敵な場所がたくさんある。まずは日本をゆっくり巡ってみよう」と方向転換。雇用延長などもありましたが休みを利用した「分割旅」を続け、63歳で退職したタイミングで、日本一周を楽しむために希望を詰め込んだキャンピングカーを特注して、今に至ります。

――実際にキャンピングカーで旅を続けてみて、「想像以上に良かった」ことはありますか?

【どうみん夫婦】一番は、「人との出会い」です。旅に出る前は景色や観光こそが旅の醍醐味だと思っていましたが、実際には各地で出会った人とのご縁が、旅を何倍も豊かで楽しいものにしてくれました。SNSを通じた交流からおすすめの場所やグルメを教えていただくことも多く、自分たちだけでは出会えなかった景色や体験がたくさんありました。振り返ってみると、絶景の思い出よりも「あの時、あの人と出会えた」という記憶の方が、心に深く残っているように感じます。

 また、キャンピングカーは「動く家」のような存在です。好きな景色を眺めながら食事をしたり、朝は窓の外に広がる景色を見ながらコーヒーを飲んだり…。そんな“自分たちのペースで旅を続けられる自由さ”は、ホテルでは味わえないキャンピングカーならではの魅力だと感じています。

――一方で、実際に始めてみてギャップを感じたことは?

【どうみん夫婦】意外だったのは、「思っていたほど自由ではない」ということです。少し矛盾に聞こえるかもしれませんが、時間に縛られない自由さがある一方で、暮らしていくためにやることは意外とたくさんあります。給水や排水、ゴミ捨て、電気の管理など、家では気にすることのないことを毎日考えながら行動しなければなりません。また、車が大きいため、道幅や駐車場、車中泊できる場所なども事前に調べながら計画を立てる必要があります。

 それでも、その少しの不便さも今では旅の楽しさの一つです。工夫しながら暮らすことで、その土地で生活しているような感覚を味わえるのも、キャンピングカー旅ならではの魅力だと思っています。

■キャンピングカー生活で夫婦関係も良好? 「急がず、無理せず、背伸びをせず」 

――キャンピングカーで旅をしていると、ご夫婦で一緒に過ごす時間も自然と長くなるかと思います。そんな暮らしの中で、お互いへの見方や関係性に変化はありましたか?

【どうみん夫婦】旅を始めてからは、トイレとお風呂以外は常に一緒に過ごす生活になりました。「ずっと一緒で疲れませんか?」とよく聞かれますが、実は不思議と喧嘩は少なくなりました。キャンピングカーは限られた空間なので、険悪な雰囲気になっても自分たちが居心地悪くなるだけ。そのためか「まあ、いいか」と思えることが増えましたし、最近は何で喧嘩したのか忘れてしまうこともあります(笑)。

 お互いに完璧を求めず、少しくらいのことは笑って流す。その積み重ねで、夫婦というよりも、同じ趣味を楽しむ気の合うパートナーという感覚が以前より強くなりました。

――長い旅を楽しく続けるために、ご夫婦で大切にしていることやルールなどはあるのでしょうか。

【どうみん夫婦】YouTubeやInstagramなどのSNSで旅の様子を発信し、全国の皆さんと交流できることは、旅を続ける大きな励みになっているので発信の継続を大切にしています。「ここがおすすめですよ」「次はぜひこちらへ」と教えていただくことで、自分たちだけでは出会えなかった景色やグルメに巡り合えることも多く、コメントには全てお返事するようにしています。

 また、旅を長く続けるためには、お金の使い方も大切です。道の駅やスーパーを利用したり、キャンピングカーで自炊をしたりしながら、無理のない範囲で旅を楽しむことを心がけています。旅は一時の贅沢ではなく、これからも長く続けていきたい“暮らし”の一部。だからこそ「急がず、無理せず、背伸びをせず」。それが私たち夫婦の大切なルールかもしれません。

――日本各地を巡る中で、改めて感じた北海道の魅力は?

【どうみん夫婦】北海道を離れて旅をしてみると、その魅力を改めて実感することが増えました。四季によって表情が大きく変わる景色はもちろん、旅先で各地の名物を楽しむたびに、「やっぱり北海道の食はすごいな」と感じることも多いです。
また、北海道は広大な土地ならではの魅力があり、地域ごとに景色や文化、食の特色が大きく異なるので、同じ道内でもさまざまな表情を楽しめます。

 さらに、キャンピングカーで全国を巡ってみて、北海道は道幅が広く、駐車場や道の駅も充実していて、車旅がとてもしやすい環境だということにも気づきました。北海道にいると当たり前に感じてしまうことも、一度外へ出て旅をしたからこそ、その良さを改めて実感することができました。

――もし40代で同じ旅をしていたら、今とは違う旅になっていたと思いますか?“60代だからこそ”感じる旅の魅力を教えてください。

【どうみん夫婦】まったく違う旅になっていたと思います。現役時代は限られた休みの中で旅をしていたので、どうしてもスケジュール優先でした。天気が悪くても出発しなければならず、混雑していても予定どおり観光するしかありませんでした。

 でも60代になった今は、「今日は雨だから明日にしよう」「混んでいるから平日に来よう」と、自分たちのペースで“時間に縛られない旅”を楽しめます。急がなくなったことで、景色をゆっくり眺めたり、その土地の人との会話を楽しんだり、予定になかった場所へ立ち寄ったりする時間が増えました。

 私たちにとって60代の旅は、「たくさんの場所へ行く旅」ではなく、「一つひとつの場所をじっくり味わう旅」になっています。

■“いつか”が必ず来るとは限らない 「自分が納得できるタイミングでの決断」が大切

――旅に出たことで、時間やお金に対する考え方などに変化はありましたか?

【どうみん夫婦】一番変わったのは時間の使い方です。仕事中心だった毎日から、自分たちのために時間を使えるようになり、気に入った場所では予定を変えてもう一泊することもあります。そんな時間の使い方が、とても贅沢だと感じています。
お金についても考え方が変わりました。以前より計画的に使うようになりましたが、節約ばかりでは旅は楽しめません。「ここまで来たからには食べてみたい」と思うものにはしっかりお金を使い、その分、自炊をしたり外食を控えたりして調整しています。我慢ばかりでも贅沢ばかりでも長続きはしないように思います。無理のない範囲でメリハリをつけながら、自分たちらしい旅を続けていきたいと思っています。

――定年後は「ゆっくり過ごす」という選択もある中、日本一周という新たな挑戦を選ばれた理由を教えてください。

【どうみん夫婦】定年後は「ゆっくり家で過ごす」という選択もあると思いますが、私たちは「元気なうちに、やりたいことをやろう」と考え、日本一周の旅を選びました。60代になると、同じ年代でも元気に活動している人と、急に家にこもりがちになる人に分かれてくるように感じています。

 旅をしていると、新しい景色を見たり、その土地の歴史や文化に触れたり、初めて会う方と話したりと、毎日が新しい発見の連続です。キャンピングカー旅では自然と歩く機会も増え、心にも体にも良い刺激になっているように感じています。
「これが元気でいられる秘訣です」とまでは言えませんが、旅を続けることが、日々を前向きに楽しむきっかけになっていると思います(笑)。

――旅という決断を支えた考え方や、今の人生で大切にされている価値観を教えてください。

【どうみん夫婦】今大切にしているのは、身の丈に合った楽しみ方です。お金をたくさん使うことが贅沢だとは思っていません。その土地ならではの景色を眺めたり、地元のスーパーや市場で見つけたものをキャンピングカーで味わったり、そんな何気ない時間にこそ十分な贅沢があると感じています。

 私たちの日本一周も、「地図を全部埋めること」が目的ではありません。その土地の景色を見たり、人との出会いを楽しんだりしながら、夫婦でゆっくり歳を重ねていくことを大切にしています。

 急がず、無理せず、自分たちらしいペースで。10年くらいかけて、日本各地をじっくり巡っていけたらいいなと思っています。

――これから定年後の生活や新しい挑戦を考えている方へ、何か伝えたいことはありますか。

【どうみん夫婦】私たちと同じ年代の方と話していると、「仕事を辞められないんだよね」という声をよく聞きます。実は私たちも同じで、辞めたい気持ちはあっても、将来への不安や「本当にこれでいいのかな」という迷いがありました。

 新しいことに挑戦するのは、誰でも不安があります。でも、その一歩を踏み出すことで、今まで知らなかった世界や、新しい楽しみが待っているかもしれません。もちろん、仕事を辞めるタイミングや人生の選択は人それぞれです。大切なのは、自分が納得できるタイミングで決断することだと思います。

 私たち自身、旅の途中で体調を崩し、北海道へ戻って入院や手術を経験しました。その時に「元気なうちに旅を始めていて本当によかった」と心から感じました。「いつかやろう」と思っていても、その“いつか”が必ず来るとは限りません。だからこそ、体が元気で動けるうちに、自分が本当にやりたいことへ少しずつでも挑戦してみることが大切なのではないかと思います。
ORICON NEWS

エンタメ

注目の情報