関根明良『天幕のジャードゥーガル』第1話で10テイク以上のシーンあった 師匠・土師孝也さん…

2026/07/05 09:00 

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『天幕のジャードゥーガル』場面カット

 テレビアニメ『天幕のジャードゥーガル』が7月4日より放送がスタートした。同作は、宝島社「このマンガがすごい!2023」オンナ編で第1位を獲得、「マンガ大賞」に2023年と2024年の2年連続でランクインを果たすなど、大きな注目を集めている歴史漫画を基にアニメ化。オリコンニュースでは、主人公・シタラ役の声優・関根明良にインタビューを実施。原作を読んで衝撃を受けたこと、演じる上でキャラクターをどう解釈したか、アフレコの裏話、役者として活動する上で大切にしている昨年亡くなった事務所の先輩・土師孝也さんからの金言などを聞いた。(取材・文:遠藤政樹/編集:櫻井偉明)

【画像】濃厚すぎる!話題アニメ『天幕のジャードゥーガル』の場面カット

■原作のかわいらしい表紙の裏に潜む“無慈悲な歴史”に受けた衝撃
 原作者・トマトスープによる秋田書店「Souffle」(スーフル)にて連載中の『天幕のジャードゥーガル』は、13世紀のモンゴル帝国の時代を舞台に、過酷な運命の中で“知”を武器に生き抜こうとする少女・シタラの姿を描いた歴史後宮譚。

 キャスト発表時、関根が発した「原作を拝読したときの衝撃は忘れられません」というフレーズは単なる驚きを超えた切実さだった。言葉の奥底にある魂を突き動かしたものの正体は何だったのだろうか。

 「原作の表紙を見てかわいらしく感じ、台本も読んでいたのでシビアなシーンがあることは知りつつも、あそこまでとは思わず、かわいらしい歴史物として読み進めました。いろんな人と出会って学びを得て、歩みはじめた子、まさかここまで大切なものをなくしていくとは…。こんなに崖から突き落とされるのかという衝撃が忘れられませんでした」。

 本作が描くのは個人の感情を無慈悲に飲み込む歴史の荒波。過酷な物語がキャラクターに与える影響は、単なる悲劇の一言では片付けられない。本作の魅力を認めつつも、ハッピーエンドをこよなく愛するという関根は、「幸せな期間があまりにも幸せだったからこそ、シタラはもうこの道から逃げられなくなったのかもしれないと思うと、さらにせつなくなり。ハッピーエンドはあるのだろうか…」と行く末を案じつつ、「彼女なりのハッピーエンドに向かってくれたら」と願いを語る。

■第1話で10テイク以上の試行錯誤 伊瀬茉莉也の言語化でつかんだ手応え
 関根が演じるシタラは、過酷な運命の中で知を武器に生き抜こうとする少女。復讐心に身を焦がす役どころで、関根も「最初は、復讐の炎に燃えて突き進む強い子という印象を受けました」と話すも、「読み進め収録を重ねていくうちに、この子はそんなに強くないのではという思いが生まれていきました」と、決して生まれながらの強い子ではないと分析する。

 「1、2話で描かれる幸せな日々の輝きがもう少し弱ければ、復讐の炎は弱まっていたかもしれない。でも、思い出が輝き続けてしまったがゆえに離れられない。環境に順応する賢さもある子なのに、運命の歯車が必ずその思い出を思い起こさせるきっかけをつくり炎に薪をくべていく。シタラは繊細で賢く、たくさんのことを学び知識を身につけたけれど無垢なところもあり、自分ですら理解できない感情も多い。もがき続ける彼女の姿をみると、強くあろうとしている女の子という印象に変化していきました」。

 この繊細な解釈がいかにして演技として結実したのか。その真価は、関根自身が「冒頭の走っているシーンがすごく思い出深い」と話す、第1話で特に印象に残っている場面に刻まれている。

 「何回録ったのだろうというほど、テイクを重ねた」と振り返り、「アニメの画としては前傾姿勢で走っているけど、もっとかわいく、逆に後ろに引いているように走ってほしいとディレクションを受けて。何回も挑戦したけど、なかなかそれを表現できなかった」という。そんな悩める関根にアドバイスをくれたのが、アニース役の伊瀬茉莉也だった。

 「伊瀬さんが『子どもって走っているときに縦に弾むかもしれない』と教えてくださって。『どちらかといえば前にボールが前回転で進んでいくよりは、逆の回転をかけながら前に進んでいくイメージでやってみたら』とアドバイスをいただいた。ディレクションで言われたことに対し、私の理解が追いつけない部分を伊瀬さんが言語化してくれ、それを自分なりに表現したらすぐにOKが出ました。感謝の思いでいっぱいですし、まだまだ精進せねばと感じました。いろいろな意味で思い出深いシーンです」。

 該当シーンは10テイク以上も重ねたそうだが、関根は「どんなシーンでもこだわりや愛が詰まっていて、時間いっぱいまでかけて何度も挑戦させていただける現場だった。とてもありがたいなと思います」と感謝した。

 『天幕のジャードゥーガル』の収録現場には妥協という言葉が存在しない。1つのシーンに対してさまざまなパターンを録っていて、少なくとも3パターン、多いときに4~5パターンもの声を録り、関根も「前後の流れを鑑みて、どの解釈でいくかは会議しますということも多い現場でした。シーンによっては何パターンも収録したため、どのテイクが採用されたかわからないくらいです」と話すほど、緻密な作業が日常的に行われている。

 「時間いっぱいまで使って、キャストの休憩中もミキサー室では音響監督や監督も含め、さまざまな方々が熱い会議を繰り広げている。解釈一つとっても会議が行われるという、愛と情熱にあふれていて、これは私自身もなんとしても応えねばならないと感じていました。大変というよりは、必死に食らいついていかねばという思いの方が強いです」。

■城跡巡りで育った戦国武将ガチ勢の素顔 推しは…?
 歴史を題材にした作品にちなみ、好きな歴史上の人物を聞くと、「戦国時代が好きで、学生時代に友人といろんな武将について調べていて、私は武田信繁という方が推しでした」と返ってきた。

 「人徳にあふれたエピソードにあふれていて、すごいなと好きになりました。本作でも兄弟愛にあふれた方がいるのですが、関根の推しになりました。誰とは言いません。観ていただけたらわかると思います」。

 戦国武将推しになった経緯を、関根は「高校時代、歴史が好きな友人から帰り道に、戦国武将の豆知識を毎日聞いていた。また、もともと家族旅行が神社仏閣や城跡巡りなどが多く、両親と遊園地に行った記憶がほぼない(笑)。そういう下地もあり知っていることもあって、友人と話が盛り上がっていたんです」と説明する。

 「教科書に載っているような人はなかなか覚えられず。特に徳川家は覚えなきゃいけないことが多すぎて…(笑)。すてきなエピソードは間違いなくあるのでしょうけど、何代目なのあなたみたいになることが多く、教科書にのっていない範囲を調べることの方が多かったですね」

 教科書に太字で載るような人物を暗記するのは苦手だが、自ら興味を持って調べることに面白さを感じていた関根にとって、高校時代の日本史のテストで「説明しなさいという記述問題では満点を取ったこともありました。プラス点ももらっていましたね」というエピソードは実に彼女らしい。そんな関根に勉強し直したい科目を聞くと、「国語の文法」と応じる。

 「本作ではナレーションも担当させていただいているのですが、ナレーションぽくなりすぎないように読んでくださいというディレクションがあって。語りだけど語りすぎない。回想であり回想すぎない。未来のシタラが夜のゲルで人に語り聞かせるようで、自分でも思い返している。そんな絶妙なラインを調整していったのですけど。その中でも観ている方に伝わるように読まなきゃいけない。どこが大切で、その大切なところを強調するための接続詞はどこなのかなど、台本のチェックをするたびに頭を悩ませていたため、学生の時にもっとちゃんと学んでいたらと思いました」。

■“師匠”土師孝也さんの言葉が役者としての指針に
 第1話でシタラは、「勉強して賢くなれば、どんなに困ったことが起きたって何をすれば一番いいのかわかるんだ」というムハンマドの言葉に心を揺さぶれる。関根自身、そのような感銘を受けた言葉はあるのだろうか。

 関根は、「胸に残る言葉であり忘れないようにしているのは、役者として師匠だと思っている土師孝也さんにもらった『心の伴わない演技はクソだ』『頑張るな、楽しめ』という2つの言葉。役者を続けていく上で絶対に忘れてはいけないと日々思っています」と明かす。

 「事務所の養成所に通っていた時、土師さんから『お前はそれっぽい演技が上手い。どこで学んできたかわからないけど上手い。だからこそ心の伴わない演技はクソだ』と指摘されました。自分が役者を続けていく上であの頃に諭していただいたことは本当に感謝でいっぱいです。私にとって、忘れてはいけない言葉ですね」。

 最後に作品の行く末を見守る視聴者に向けて、彼女は優しく、しかし確信に満ちたメッセージを贈ってくれた。

 「復讐劇ではありますが、悪と戦うというより、登場人物の誰もがそれぞれの信念のために行動していて、とても魅力にあふれており、信念と信念のぶつかりあいには、心がゆすぶられました。そんな素敵な登場人物たちと見守っていただけたら嬉しいです。また、キャラクター、映像美や音楽のすばらしさ、そして、何気ない仕草や掛け声の中にはモンゴルの風習が随所に散りばめられています。ぜひ気になった所は調べてみていただき、モンゴルの文化にも注目していただければ嬉しいです」。
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