戸田恵梨香「私には何もない」恐怖と断捨離で越えた“どん底” 伊藤沙莉と共鳴する“貪欲さ”を…

2026/04/29 08:00 

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Netflixシリーズ『地獄に堕ちるわよ』細木数子役で主演を務める戸田恵梨香(左)と、作家・魚澄美乃里役の伊藤沙莉(右)

昭和から平成にかけて国民的な人気を博した占い師・細木数子さんの半生を描くNetflixシリーズ『地獄に堕ちるわよ』が、4月27日より世界独占配信される。オリコンニュースでは、細木数子役で主演を務める俳優の戸田恵梨香と、細木の自伝小説の執筆を依頼された作家・魚澄美乃里役の伊藤沙莉にインタビュー。出演オファーを受けての心境、細木数子という人物についての印象、久しぶりの共演となって互いに感じたこと、作品にちなみ自身の“どん底”と“貪欲さ”について聞いた。(取材・文:遠藤政樹)

■年齢の離れた役に不安が募るも脚本の面白さに魅了

「アンタ死ぬよ」「地獄に堕ちるわよ」といった強烈な決めゼリフで一世を風靡した細木さん。著書は世界で最も売れた占い本としてギネス世界記録を樹立し、2000年代には社会現象を巻き起こした。一方で、40代半ばで占い師となるまでの経歴は謎に包まれており、その波乱に満ちた半生が今回初めて映像化される。

実在し、かつ強烈なパブリックイメージを持つ人物を演じることは、俳優にとって一種の挑戦ともいえる。そんな難題に対して、どう感じ、どのように向き合ったのだろうか。

――本作の出演オファーを受けたときの率直な感想をお聞かせください。

【戸田】 はたして本当に自分が細木数子さんを演じきれるのかという大きな不安はありました。でも、とにかく脚本が面白かったので、その世界観に入ることができる楽しみも大きかったです。

【動画】戸田恵梨香&伊藤沙莉『地獄に堕ちるわよ』インタビュー映像

【伊藤】 私も脚本が面白かったですし、どういうことになるのだろうと興味が湧きました。なにより戸田さんが細木さんを演じること、そして瀧本(智行)監督、いろんな要素が自分の中の“きらめきポイント”として感じたので、「やりたいです!」という気持ちになりました。

――戸田さんは実在の人物で、しかも知名度の高い人物を演じるにあたり、役作りで研究されたことは?

【戸田】 今回は実際の細木さんに体型もしゃべり方も似せなくていい、いわゆるモノマネをしなくていいということだったので、脚本から感じる細木数子を監督と一緒に作っていきました。目とか耳から得られる役作りよりは、内面の部分を参考にさせてもらいました。

■強烈なパブリックイメージを持つ人物の体現を支えた3時間半の特殊メイク

視覚的なリアリティを支えるのが特殊メイク。膨大な時間をかけて完成した姿には、単なる再現を超えたプロフェッショナルな取捨選択があったという。そして戸田と伊藤の2人は、細木数子という人物に対してどのようなイメージを抱いたのだろうか。

――60代のメイクは特殊メイクだとうかがいましたが、完成までにどれくらい時間がかかり、どんなこだわりが込められているのでしょうか。

【戸田】 3時間半かかりました。当初は、おでこや手も特殊メイクをする予定でしたが、実際の細木さんはお年を召しても(肌に)ハリがあり、非常に艶っぽく、生き生きした印象を受けました。私の骨格に合わせた特殊メイクだと、シワ感が強調されてしまい、細木さんが持つすごみや迫力が足らなかったため、リアリティを追求するためにおでこなどは外させてもらいました。目尻のシワなどは私の目の位置に合わせた微調整をしていただきました。

――伊藤さんは戸田さんの完成した特殊メイクを見て、どう感じられましたか?

【伊藤】 先輩にそういうことはしてはいけないと思いつつ、まじまじ見てしまいました(笑)。カメラを通すとよりだと思いますけど、肉眼でもしっかり年齢を重ねた重みがメイクで見えて。プラス口調などもあって「うわぁ……」と感じました。

――細木さんに対しては、どのような印象をお持ちでしたか?

【戸田】 細木さんがテレビに出られていた時期は私も仕事をはじめていて、あまりテレビを見る時間はありませんでした。豪快に楽しそうに笑っているくらいのイメージしかなく、「地獄に堕ちるわよ」などを発言している記憶はなかったです。

――演じてみて変化した部分は何かありますか?

【戸田】 脚本を通して初めて細木さんの人生を知り、こんなにも壮絶な人生を歩んでこられたことに驚きました。この業界しか知らない私にとって、外の世界に触れた感覚があり、胸が高鳴りしました。誤解を恐れずに言うと、ドラマのような人生を歩まれてきたことへの羨ましさも感じました。

――伊藤さんは今作で取材を通して細木数子という人物を知っていく役柄ですが、実際の細木さんに対しての印象は?

【伊藤】 実家で細木さんが出演されていた番組がよく流れていたなって。強烈な言葉を放つ姿も観たことあると思いますけど、年齢的に前のめりというわけではなく、ふわっとしたイメージですね。作品を通して、美乃里として対峙して、人間味や壮絶な人生を目の当たりにしたというか。食らうことができた気がします。作品として面白いし、知れてよかったことがたくさんありました。

――観始めると最後まで一気に観てしまうくらい強烈に引き込まれました。

【戸田】 うれしい!ありがとうございます。この作品のすごさは、すぐに没入感があること。それもまた細木数子という人物が引き寄せた力だと思いました。

■久しぶりの共演で感じた、互いの変わらぬ魅力と成長

戸田と伊藤の共演は約15年ぶり。キャリアを重ね日本を代表する俳優となった2人の共演は、物語の奥行きと深みを増してくれる再会といえるだろう。

――2011年に放送されたドラマ『大切なことはすべて君が教えてくれた』(フジテレビ系)以来の共演となりますが、 改めてお互いの印象を聞かせてください。

【戸田】 沙莉ちゃんは幼な顔なのにハスキーボイスでいつも笑っていて、何者なのだろうと衝撃を受けた記憶があります(笑)。人懐っこさがあって、きっとみんなに愛される人柄なのだろうなと感じていましたが、再会してもその印象は変わらずそのまま。当時の無垢な感じからたくさんの経験をしてきた自信や誇りも感じて、頼もしい存在だなと思いました。

【伊藤】 当時、私は生徒役で戸田さんは先生役でしたが、なかなか同じシーンがなくて多分2、3回ぐらいですかね。ただ同じ生徒役の子の中に戸田さんと共演経験ある子がいて、その子が「恵梨香ちゃんだ!話しかけに行こう」と言っているのを聞き、「恵梨香ちゃん!?」「ダメだよ!」って(笑)。戸田さんはすごく優しくて、私とかがふざけても「あははは」と笑ってくださり、とても優しい方だなって。

――そんな戸田さんと今回しっかりと共演するのは?

【伊藤】 いつかいつかと思いながらも、なかなか共演の機会がなかったのですが、満を持して、しかもこの作品でご一緒できることになって。ただ久々すぎたうえに、同じシーンでしっかり絡むのが初めてだったので、どのような役作りをされるタイプの役者さんかわからず、最初は横目でチラチラ見るみたいな感じでした(笑)。

【戸田】 あはは!

【伊藤】 いろいろと話しかけてくださいましたし、人生の先輩として、役者業の先輩としても質問攻めしてしまいましたが、いつも嫌な顔一つせずに答えてくださり、話もいっぱい聞いてくださって、現場に行くのがとても楽しみでした。毎日会えることがうれしかったです。

――すてきですね。ところで戸田さんは、最初の頃は伊藤さんが緊張されているのに気づいていたのでしょうか?

【戸田】 60代を演じる初日で私自身も芝居に関して悩んでいた部分もあり、余裕はあまりなかったので。現場で一緒にいた細田善彦さんに「その見た目だと話しかけづらい」と言われて。自分では全く気づいていませんでしたが、知らないうちに沙莉ちゃんや細田さんに威圧感を与えていたんだなと(笑)。言われて驚きました。

――お二人でされた会話の中で、特に思い出に残っている話題があれば教えてください。

【戸田】 一番印象に残っているのは巻き肩にならない方法ですね(笑)。特殊メイクなのに涙を流しながら笑っていました。本当に耐えられなかったですね。

【伊藤】 本当にこれでもかってくらい笑っていました。

――急な笑いのツボってありますよね(笑)。

【戸田】 「姿勢を変えたい」という話から始まって。

【伊藤】 そうです。たしか「ピラティスとかやっているけど、どうにもこうにも」「でもこれは無理じゃないですか」みたいな話でしたよね。

【戸田】 それでフライパンを持つときどうするみたいな(笑)。半年以上前の話なのに今でも思い出し笑いするぐらい面白かったです(笑)。沙莉ちゃんの笑い方もあって、本当に大好きです。

【伊藤】 周りからしたら謎ですよね(笑)。

■俳優としての“どん底”を感じた瞬間とは…

活躍を続ける2人だが、それぞれが口にした「どん底」の記憶が示すように、その道のりは決して平坦ではなかった。ただ、その乗りこえ方には努力を怠らないストイックさが垣間見えた。

――タイトルの『地獄に堕ちるわよ』にちなんで、人生で「どん底だと感じた瞬間」はありますか?

【戸田】 仕事を続けてきたなか、役者・戸田恵梨香としての成長を達成するために時間を費やしてきたけれど、役者ではない自分自身になったとき、「あれ?私何もないかもしれない」と恐怖に襲われたことがありました。

――どう乗りこえたのでしょうか。

【戸田】 お休みをいただいて、一人になる時間を作りました。瞑想ではないですが、自分を見つめる時間や物理的な断捨離、いろんなものを捨てて自分の空間を作ることで乗りこえました。

――伊藤さんは?

【伊藤】 18歳で進路を決めて、役者になろうと決めた一歩を踏み出した途端、全てのオーディションに落ちるようになってしまって(苦笑)。19歳の頃は示し合わせているのかなと感じるぐらい、全部落ちていました。不思議と一つ受かると合格が続くけど、落ちたときは連なってずっとうまくいかないことが続くんです。

――そういうときはどんな感情になるのでしょうか。

【伊藤】 芝居に対しての勉強の仕方もわからない状態で白黒映画を観るけど、頭の中が「マジカルバナナ」(※連想ゲーム)過ぎて、これと言ったらあれだけどみたいな感じで集中できない結果、自分の感覚として何もないとなってしまって。集中できていないから、何もかも自分の中からなくなったような気持ちになったときはありました。

――今のご活躍からは想像できませんが、どう乗りこえたのでしょうか。やはり経験や時間が解決した部分は少なからずあるのでしょうか。

【伊藤】 一つ一つをそれまで以上により大切に向き合うことで乗りこえてきた気がします。

■アプローチは異なれど、共通するのは絶え間なき向上心

 俳優業には欠かせない“貪欲”さ。「満たされないこと」をエンジンにする強靭な精神こそが、2人が俳優として輝き続けさせている要素の一つなのかもしれない。

――本作で描かれている細木数子という人物は、目的に向かってパワフルに突き進む姿が印象的です。言い換えれば “貪欲”とも言えますが、ご自身が貪欲だと思う部分は?

【戸田】 自分が成長することに対して貪欲だと感じます。

――どんなことも役者としての成長につながると捉えるのでしょうか?

【戸田】 そうですね。映画を観る、作品を観る、本を読むなど、今の自分に何が足りていないのかを客観視して自分を鼓舞することが好き。だからやり続けてこられたのかなと。

――その思いを持続するのは大変そうですが……?

【戸田】 自分に負荷をかけてしまうほうなのだと思います(笑)。

――おっしゃるとおり、とても貪欲ですね(笑)。伊藤さんは?

【伊藤】 貪欲というか満たされないことで言うと、自分がやった作品や役は、初号(試写)の段階で毎回「すみませんでした……!」という気持ちでしか帰宅したことがないです。もちろん撮影は精一杯やっていますが、客観的に見ると「何やっているのだろう」と自省の思いが湧いてきちゃって。「何この顔」「不思議なテンションの音でしゃべっているな」とか気になり出すと、嫌だなって。

――表現に“答え”はないとはいえ、つらすぎませんか?

【伊藤】 ただそれがないと、満足しちゃったらつまらないんです。

【戸田】 そうだね。わかります。

【伊藤】 自分の芝居に対して、ずっと「変なの」と思っているから続けられていると思う。観る前は期待しすぎていて、もうちょっとやったという実感があるのでしょうけど、いざ観たら「えっ~!?」となる、追いかけていくものとして、ずっと満たされない意味では、貪欲な自分を期待しているのかもしれないです(笑)。

■ホストクラブでの撮影に大盛り上がり 事務所確認も?

――占いに限らず、何かを決断する際に大切にしている“指針”があれば教えてください。

【戸田】 シンプルに自分が「心地よい」、「幸せ」、と思える気持ちですね。

【伊藤】 基本的には家族に相談することが大体です。臆病なのか一回、止まっちゃうんですよね。自分の判断もあまり信用できない方だから、話すことで知恵の輪のようにほどいてもらって、やっと決める感じです。誘ってもらうことが多いですね。

――戸田さんは誰かに相談は?

【戸田】 例えば楽屋などでスタッフさんと、「今こういうことを思っている」といったセッションをしてもらう機会はありますけど、最終的にジャッジするのは自分。いろんな人に話を聞いてもらって、自分を見つめ直すみたいな流れ。ただ、やっぱり誰かに話すことで見えてくるものがあります。

――本作で注目してほしいポイントがあれば聞かせてください。

【戸田】 細木数子という人物が話していることが、どこまで“本当”でどこからが“嘘”なのかもそうですし、それに振り回されていく人たちの表情や感情の揺れが一番の魅力であることが、まずは大前提です。そのうえで沙莉ちゃん演じる美乃里がホストクラブに行ったシーンをお楽しみいただければ。

【伊藤】 楽しかったですよね。

【戸田】 盛り上がって、沙莉ちゃんと行きたいと事務所に確認までしました(笑)。もちろんダメでしたが。

――事務所確認までするとは!(笑)

【戸田】 実際のホストクラブをお借りし、そこで働いているホストの方たちに協力してもらって撮影しました。私は特殊メイクで60代の見た目なのに「かわいい!」と言ってくれるので「本当に思っているの?」と(笑)。褒めてくれるのが面白くて。あのような世界に入ることがないので新鮮でした。実際に映像を見ても、息を呑まれている感じの美乃里が面白く、ホストクラブのシーンになった瞬間、大爆笑してしまいました。ぜひお見逃しなく!

【伊藤】 細木さんの人生をたどっているようで目が離せなくて、細木さんに関わる人たちも含め、魅力的で個性的な人たちがたくさん出てきます。なかでも一押しポイントが、細木さんのクセである仕草があって、その仕草に後に私のセリフがある場面で、戸田さんが忘れてしまって。私がセリフを言わないので何でと思った直後、「あっ……!」と思い出すと同時にその仕草をされて(笑)。その瞬間を視聴者の方は観られませんが、細木さんにお金を燃やされるという怖いシーン。あのときの戸田さんの表情、めっちゃ怖かったです。

【戸田】 私は甘かったなと思っていますが(笑)。

【伊藤】 食らっている側からすると怖かったです!あのシーンは正直、あっけにとられるというか。行動もそうだけど、動けなくなる感じが実際にあったので注目してほしいシーンの一つです。


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