「置き去りの花嫁衣裳」一体なにが? 婚約者の裏切りで気づいた自分の問題…クリーニング店で“…
『クリーニングくじらー人生はときどき、洗いなおしてー』(シーモアコミックス)(C) 岡畑まこシーモアコミックス

【漫画】婚約者の浮気、親の干渉…花嫁衣裳はどうなる!?
■ドレスのクリーニングが仕上がっても、一向に受け取りに来ない女性
2月からコミックシーモアで連載がスタートした『クリーニングくじらー人生はときどき、洗いなおしてー』(シーモアコミックス)。家族で経営する街の小さなクリーニング店を舞台とした本作、1話(前後編)では婚約中の女性・月満(つきみ)のエピソードが描かれる。
主人公の灯(ともる)は祖父母が営む「クリーニングくじら」の三代目で、常連の月満に憧れていた。ある日、お店にやってきた彼女は、婚約中であることを告げて花嫁衣裳のヴィンテージドレスを預けていく。「これを着るために生きてきたような気がしたんです」――月満はそんな印象的な言葉を残して店を後にするが、クリーニングが仕上がっても一向に受け取りに来ない。実は月満は婚約者に裏切られ、婚約を破棄されていた…。
月満からその事実を明かされ、驚く「クリーニングくじら」の面々。だが彼女は、「原因は自分にある」と語り出す。彼女のこれまでの人生も、婚約者との関係も、実は「誰かに与えられた物だけでできていた」という。空っぽな自分に気づき、岐路に立った月満。これから一体どう生きていくのか? ヴィンテージドレスに袖を通すことはあるのか――。
『クリーニングくじらー人生はときどき、洗いなおして』は2月に連載がスタートしたばかりだが、この印象的なエピソードは早くも注目を集め、「ちょっと考えさせられる」「続きが気になる展開」との声が寄せられている。本作について、作者の岡畑まこ先生に取材した。
■「着たい服すら決められない」、自身の幼少期と重ね合わせた作者
――本作はクリーニング店を舞台に様々な物語が交錯する独特なストーリー。着想のきっかけは?
「元々は担当さんと、新連載で描くキャラの案出しをしていた際に、『毎日シワのないパリッとしたシャツを着ている男の子っていいよね』みたいなことを言ったのが始まりです。シャツと言っても“社会人のスーツ”というよりは“学生服のワイシャツ”のイメージ。その部分に、同年代の他の子よりもどこか静かで繊細な空気感を感じて憧れる女の子がいたら、瑞々しくて可愛いボーイミーツガールが描けそうだな…っていう、最初はとても漠然としたものでした」
――そうだったんですね!
「そこから“クリーニング屋の倅”という今作に登場する灯の設定につながり、舞台はどんな街にするのか、現実にSFの要素をどの程度おり交ぜるのか(結局はほぼ現実寄りの話になりましたが)、クリーニング屋の店主を月満にしてみたりなど、迷走に迷走を重ねて今の形になりました」
――1話『ヴィンテージドレス』(前後編)では、花嫁衣裳のヴィンテージドレスをクリーニングに出したまま、なかなか受け取りに来ない女性が描かれます。それだけでも「なにか事情が…」と気になってしまいますが、どのように物語を考えていったのですか?
「取材をさせていただくなかで、クリーニング店さんで対応している物の中には、ウェディングドレスもあるというのを初めて知り、それは1話を描くきっかけになりました。当初の予定では、地域密着型のクリーニング店をテーマに、どちらかというと日常にありふれた何気ないエピソードを描くことを想定していたんです。でも、人生の節目や特別なタイミングでクリーニング店を訪れる人も多いのだと気がついて、現在は日常と非日常の両側面から、クリーニングと人との物語を考えていっています」
――月満は恵まれているようでいて、「誰かに与えられた物だけでできていた」という女性。このような女性を描こうと思った理由、月満というキャラクターへの思いを教えてください。
「思えば、自分の幼少期がまさにそんな感じでした。こうあって欲しいという周囲の理想が極端に強い環境で育ったので、いつの間にか自分で自分が何を考えているのかわからなくなって、着たい服すら決められなくなっている、みたいな」
――たしかに、月満に近しい環境ですね。
「その反動でか、思春期以降はすごく我の強い人間に成り果てたように思うのですが、自分の本心を正しく処理して周りに伝えていけるようになるには、やはり時間がかかりました。どこからか借りてきたような言葉を使ってしまったり、無駄に極端な表現をしてしまったり。自分のような人に限らず、一人の人間が『これがいい』『これは嫌』と自分の身の回りの生活や人間関係、考え方を改めて積み上げていく様子を描きたい、それを肯定していく話にしたいと考えた結果、月満のようなキャラクターが生まれたように思います」
――クリーニングくじらの面々も、月満を心配します。中でも主人公・灯のまっすぐさが救いになってもいて。読者も、灯がいることで共感しやすいように思いますね。
「この作品の話を本格的に作り始めるぞという頃、ある程度大人になっても『他人の否定的な意見に染まらずにまっすぐな言葉をかけたり、自分なりの優しさを捨てずにいられる人』って貴重だな、すごい人だな、と実感する機会が多々あったのが影響していると思います。そういう存在が身近にいることで勇気づけられる人は、私を含めやっぱりとても多いんだろうなと思うし、主人公にはそういう役割を担っていてほしい。作中でも、灯自身は何の気無しにしていることなんだけど、それを受け取って密かにあたたかい気持ちになっているお客さんや周りの人たちが居ればいいなという思いです」
――灯が月満にかける言葉は、月満の心もあたたかくしていきますよね。灯が発案した、ラストの屋上のシーンは本当にグッときました。
「作品全体を通して描いていきたいと考えている、『灯たちの手によってお客さんの人生が洗い直される』の象徴的なシーンにできたらと思いました。より月満自身の“開放”的な意味合いや空気感が協調できたらと思ったのと、東京で生活する彼らにとって高い建物に視界が遮られない広い空は、深く息を吸うきっかけになりそうということで、場所は屋上を選んでいます」
――本作は始まって間もないですが、先生の前作『縁もたけなわ』からのファンの方も期待を寄せています。読者のみなさんに、どんなメッセージを届けたいですか?
「過去作についても言及していただけて嬉しいです。“たけなわ”では狭い範囲の人間模様で、なおかつゴールが決まっているものを描いたので、今回はより広い範囲の、多様な人々の話に踏み込んでいけたらと思っています。またお客さんだけでなく灯や月満たちの人生にも、前作時よりアップデートした価値観や切り口で目を向け、あたたかく描いていきたいです」
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