年賀状からの脱却…家庭用プリンターの現在地、「中学受験」に活路を見出すエプソン「いかに印刷…
中学受験の三種の神器のひとつに「A3対応プリンター・複合機」が入っている

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■つい余分に印刷したくなる過去問のコピー、中学受験に必須のプリンター
家庭用プリンター市場は、長年「12月の年賀状需要」に支えられてきた。しかしその山は年々低くなっているという。同社マーケティング担当課長の長谷村純氏は、市場全体が縮小傾向にあることを認めつつ、次のように説明する。
「年賀状は2010年ごろから減少傾向にあり、ここ15年でかなり落ち込みました。背景には郵便料金の値上げや、コロナ禍を経た生活様式の変化があります。一方で、印刷需要そのものが消えたかというと、そうではありません。
最近は12月の山が下がる一方で、平常月の印刷需要は安定しています。学習教材のプリント、学校から送られてくるPDF資料、在宅勤務での書類出力、さらにはラベル印刷など、用途は多様化しています」(エプソン販売株式会社 マーケティング本部 課長 長谷村純氏、以下同)
特に、学習用途は近年重要な柱となっているという。特に中学受験家庭では、過去問印刷のためにA3対応機を導入するケースもある。
「中学受験では、過去問・スケジュール帳・プリンターが“三種の神器”とも言われています。いくらデジタル教育が進んでいても、紙に書くことで理解が深まるという価値観は今後も揺らがないと考えています。当社のプリンターには、1台ごとに専用のアドレスを持たせることができます。家庭学習支援サービスを展開する学習塾と協業し、各家庭に最適化した問題を配信することも可能なんです」
クラウド経由で直接プリント指示を送れる技術を活用し、塾側は自社サービスにこの仕組みを組み込み、生徒の自宅にあるプリンターへ問題データを配信できる。保護者がUSBやメール添付などで出力する手間を減らし、「紙で解く」学習習慣を日常に組み込む狙いがある。
「単なる販売促進ではなく、紙で学ぶ文化を次世代につなぐ試みでもあります。家庭学習を支えるインフラとしてプリンターを位置付けることで、若年層世帯との接点を長期的に築いていきたい。この技術は一般事業者にも公開し、サービスに組み込んでもらっています。塾に限らず、印刷を軸にしたさまざまな事業と一緒にサービスを広げていきたいと考えています」
■スペックより”使い方の提案”を重視「今のお客様の楽しみ方は、もっと多様」
家族世帯であれば、大人は仕事や推し活、子どもは学習――と複合用途を重ねることができる。家庭に1台プリンターが必要な流れを作りやすいと言えるが、家族世帯以外はどうしても保有率の低さが課題となる。若年層は「実家にはあったが、独立してからは持っていない」というケースが目立つという。
ただし、それを悲観材料とするのではなく「“印刷する楽しさ”に気づいてもらうことができれば、プリンターを家庭に根付かせることができる」と長谷村氏。販売する際の訴求方法として“スペック”は必要不可欠な要素だが、近年はあえてそこに捉われない販売戦略をとっている。
「かつて家電量販店では「高速・高画質・低価格」が最大の訴求軸でした。スペックを中心にお伝えし、それをいかに安く提供できるか。これが各社競争のポイントでした。しかし今のお客様の楽しみ方は、もっと多様です。品質があったうえで、“どう生活に役立つのか”。使い方の提案を重視する戦略にシフトしています」
実際に、プリント活用事例を集めたサイト「MyPrintStory(マイプリントストーリー)」では、写真、学習、推し活、テレワーク、暮らしの5分野の使い方を提示することで、生活者の印刷のハードルを下げている。
特に推し活には力を入れており、同社は昨年から「氣志團万博2025」をはじめエンタメからスポーツまで各種イベントに参加。会場では推し活と絡めたプリント体験を提供し、印刷の機会自体を増やす取り組みをしているという。
「来場者の反応は想定以上にポジティブで、「別に印刷しなくてもいい」と言う人はほぼいませんでした。会場で体験型ブースを出し、キャラ画像や写真を印刷できるようにすれば、イベント期間中はブースでのプリント枚数がぐんと増えますが、課題となるのは家庭利用の方向にいかにつなげるか。「ここまで綺麗に印刷できる」ではなく「推しのカードが簡単に作れる」と言うほうが、お客様も自分事化できることに気づいたんです。リアルイベントは、印刷の楽しさをお客様に気づいてもらう場でもあり、私たち自身がプリンター利用の方法を発見する場でもあると感じました」
■「日常的な積み重ねが、年賀状に代わる新しいプリント文化を形作っていく」
様々なプリンターの活用方法を提示するなかで、課題となる年賀状市場の縮小を補う余地はどこにあるのか。同社が注目しているのが、日々スマートフォンで撮影されている膨大な写真の存在だ。
「私たちは日常的に数え切れないほどの写真を撮影していますが、その多くはクラウドや端末内に保存されたまま、画面をスクロールして眺められるだけにとどまっています。家庭用プリンターの市場も縮小傾向にあると言われますが、この“眠っている画像”の1.5%でも印刷に回れば、年賀状減少分を補える規模になる可能性があります」
同社が強調するのは、これは単独企業で達成できる目標ではないという点だ。メーカー同士の競争を前提としつつも、プリント文化そのものを底上げしなければ、市場は広がらない。「当社のプリンターでも、他社製でも、コンビニのプリンターでもいい。とにかく“印刷する”体験そのものを増やしたいんです。特定ブランドの囲い込みではなく、写真を“保存するもの”から“暮らしを彩るもの”へと変えていければと考えています」。
データとして眠らせたままにするのではなく、印刷して壁に飾ったりアルバムとしてまとめたり、家族や友人との日常を振り返る。あらためて印刷した写真たちを見直すことで、「画面越しでは得られない価値が生まれる」という。
「プリントを単なる出力するものとしてではなく、「記憶を生活空間に定着させるもの」と位置付けます。推し活で作ったカードを部屋に貼る、旅行写真をコルクボードに並べる…そうした日常的な積み重ねが、年賀状に代わる新しいプリント文化を形作っていくと考えています」
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