昭和12年のワンピースを再現した結果…「一周回って上品で可愛らしい!」令和目線でも“ときめ…
再現したのは赤いリボンがポイントの水玉ワンピース。仕上がりは…?

【写真】古雑誌から再現した昭和初期のワンピースとは…?
■モガたちの“ときめき”を蘇らせ、令和の乙女たちにも感じてもらいたい
――昭和初期の裁縫雑誌に掲載されていたワンピースの再現動画、とても興味深く拝見しました。まずは制作のきっかけについてうかがえますか?
「このワンピースを選んだのは、完全に一目惚れに近い直感でした。古本市でたまたま見つけた昭和12年の雑誌を開いた瞬間、目に飛び込んできたこの水玉模様のワンピースがとにかく可愛くて『このデザインのワンピースは、現代に蘇らせても絶対に可愛いはず!』と思ったんです」
――それで実際に作ってみよう、と。
「そうですね。ワンピースの再現を動画にしてSNSに投稿することで、なかなか光が当たることのない、当時のモガたちが愛した乙女の“ときめき”を令和の乙女たちにも感じてもらい、改めてときめいて貰えたら…と考えました」
――再現は型紙作りからのスタートだったそうですね。
「雑誌の表紙には『実物大型紙付録付き』と大きく書いてあるのですが、約90年という時を経て私の手元に来た時には付録は当然のように失われていたんです。そこで今回は誌面に小さく載っている裁断図(布の上に型紙をどう配置するかを示した図)を頼りに、雑誌を熟読し、記事に書いてある寸法を拾いながら型紙をイチから作ることにしました」
――制作を進める中で、特に調整が難しかったポイントはどこだったのでしょうか?
「サイズ感の違いです。昭和初期の方々と現代人とでは体格が全く違うため、雑誌の誌面に書かれた数値をそのまま再現すると小さすぎる。当時の可愛いシルエットを壊さないようにしつつ、現代の私たちが着ても綺麗に見えるバランスへ落とし込む作業は非常に難しかったです」
■ロックミシンのない時代の知恵 誌面に詰まった“始末”の工夫に感動
――縫製していく過程では、現代の服作りとの違いを感じた部分はありましたか?
「縫製の面でも、現代の効率的な服作りとの違いを痛感しました。誌面には『ミシンでも手縫いでも可』と書かれていたのですが、実際に縫い進めてみると、現代のミシンでは到底入り込めないような細かい場所がたくさんあったんです。複雑な曲線も随所にあるため、縫いながら『無理にミシンで縫うより、手縫いの方が綺麗に仕上がる』と判断し、何度もミシンを止めて手縫いに切り替えました」
――当時ならではの技術や考え方に触れて、印象に残った点はありますか?
「布の端を始末する時に使用するロックミシンやジグザグミシンは当時無かったため、どのように端を始末するかなどが丁寧に書いてあって勉強になりましたね。当時の女の子たちもこんな気分で縫っていたのかな…と考えながら作業する時間はとても有意義でした」
――限られた写真や図版、文章から衣装を再現する作業全体を振り返って、最も神経を使った点を教えてください。
「私は普段から、文献や資料を読み解いて歴史的な舞台衣裳を仕立てる仕事をしているため、制作の過程自体はその延長線上にありました。ただ、紙面に載っている寸法が『尺貫法』で表記されており…。雑誌に記された数値をメートル法に置き換えながら何度も計算し、現代人の体型に落とし込むという作業は、想像以上に集中力が必要で苦労しました」
――逆に「ここが面白かった」と感じたポイントはありますか?
「当時の丁寧な言葉遣いや解説の端々から感じられる読者への愛情が、古い裁縫雑誌から読み取れたことですね。例えば、今では省略されがちな細かい始末の仕方も、当時の雑誌には『こうすると尚美しいのです。』や『このほうが良いのです。』など、優しく語りかけるように書かれているんです。まるで当時の先生から直接教わっているような、あるいは当時の女の子たちと一緒に裁縫箱を囲んでいるような不思議な感覚になりました」
■オペラ衣装にも既製品の波が…「作り手の温かさが宿った服は、人の心をときめかせるパワーを持つと信じています」
――普段は、双子の姉妹でオペラなどの舞台衣裳を手がけている愛型女帝さん。制作にあたり、特に大切にされていることを教えてください。
「私たちが一番大切にしているのは、お客さまに『本物』を届けるということです。上演されている間だけは、舞台の上をルネサンスやロココ、江戸時代といった“その時代”そのものにしたい。客席のお客さまはもちろん、舞台に立っている役者さんにも、衣裳を通して当時の空気の中へタイムトラベルして欲しい…そういう願いを込めて一針一針縫っています」
――時代を再現した服作りの面白さとはなんでしょうか?
「時代衣裳は非常に構造が複雑なので、再現するのは並大抵ではありません。しかし、実際に手を動かしてドレスやジャケットを作っていると、当時の職人さんがどこに苦労し、どんな想いでこの形に辿り着いたのか、時を超えて会話をしているような感覚になるんです。そういったところも、面白さなのではないでしょうか」
――時代を超えた対話というお話が印象的です。完成した衣裳を役者さんやお客さまが目にしたとき、どんな瞬間にやりがいを感じますか?
「出来上がった衣裳を纏った役者さんから『この衣裳を着ると役のスイッチが入る』『当時の感覚が掴めた気がする』と言っていただけたり、お客さまから『まるで当時の世界にいるようだった』というお声をいただいたりした時が、何より幸せです。昔の職人さんたちが注いだ計り知れない情熱を現代に蘇らせ、誰かの心を動かす力に変える。そこに、『オペラ衣裳家』としてのやりがいや面白さを感じています」
――既製品やファストファッションが主流となる現代において、あらためて手作りの服ならではの魅力について、どのように考えていますか?
「実は近年、オペラの舞台でも海外製の安価な既製品を衣裳として使うケースが増えています。だからこそ、現代の手作り服には作り手の情熱や、着る人のことを想って針を進めたという目には見えない大きな『愛』が詰まっているはず。そんな『愛』に包まれた、世界にたった一着しかない特別な服に袖を通すことは、人生において言葉では表しきれないほど美しく豊かな瞬間になることでしょう。誰かが誰かを想って作った、作り手の温かさが宿った服だからこそ、人の心をときめかせるパワーを持ち続けるのだと私たちは信じています」
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