『ふてほど』“未来編”誕生の経緯 女性総理・キャンセルカルチャー…時代を射抜く物語はこうし…
『新年早々 不適切にもほどがある! ~真面目な話、しちゃダメですか?~』より(C)TBS

【別カット】SPドラマの一部シーンを公開!阿部サダヲ、仲里依紗らに新展開
中学校の体育教師で昭和のおじさん・小川市郎(阿部)が、ひょんなことから1986年から令和の時代へタイムスリップし、令和では“不適切”なコンプライアンス度外視の発言を連発。コンプラで縛られた令和の人々に考えるキッカケを与えていく意識低い系タイムスリップコメディだ。
市郎のもとに未来からタイムマシン型バスの開発者、83歳の井上昌和(小野武彦)が現れ、「好きな時代に行きましょう!」とタイムトンネルに誘われる――。好きな時代に行けるようになった市郎は、娘・純子(河合優実)の未来を変えるために再び立ち上がり、今度は令和だけでなく、さらなる未来にも過去にもタイムスリップし、行く先々で人々をかき回していく。
磯山晶プロデューサーに、連続ドラマから続く世界をどのように再構築したのか、作品に込めた狙いを語ってもらった。
――女性総理が誕生するなど“世相”を捉えた物語ですが、今回のストーリーはどのように決まっていきましたか?
連続ドラマの最終回で井上が、「どの時代にも行けるタイムトンネルを発見した」と言って終わったので、「どの時代にも行ける話にしよう」というところから始まりました。
「そうなると気軽に未来にも行けるよね、じゃあ未来の日本ってどうなっている?」という打ち合わせになったんです。そうしたら「女性総理はもう誕生していますよね」という流れになって。「じゃあ誕生したあとに、現代でいうキャンセルカルチャー的な事件が起きて、その総理の立場すら危うくなる。そこに市郎が関わる騒動がいいですね」と。
その後、実際に「女性総理が誕生しちゃうかも」という政局になり、「これは本当に起きてしまうのでは…?」という話にもなったんですけど、もう撮り終えていたので(笑)。
サブタイトルになっている「真面目な話、しちゃダメですか?」は、早い段階で決まりました。日本人って真面目な議論を避けがちで、ディベートや論争が人間関係に影響することを恐れて、自分の意見を抑えちゃうところがあるので、「もっと言っていこうよ」という話を(脚本を担当した)宮藤(官九郎)さんとして。その結果、今回のスペシャルドラマになりました。
――前作から続く“市郎が昔を引き合いに現代を語る”という構図も生きているんですね。
そうですね。でも今回、「なんで真面目な話しちゃいけないの?」と問い直すのは、仲里依紗さん演じる犬島渚なんです。市郎の時代って、“言い合いするのが当たり前”みたいな政治家がいた時代ですし。現代日本が「当たり障りない会話」に持っていこうとしがちですよね、という視点ですね。
――宮藤さんから「脚本の方向性の確認があった」と伺いましたが、どんな会話をされたのか覚えていたら教えてください。
あらすじを決めてから書き始めていただいたのですが、途中で宮藤さんがすごく悩まれたんです。普段は台本が上がってくるのがとても速いのに、締め切りになっても全然できないという、すごく珍しい状況になって。
「途中まで書いたので送ります」と連絡をもらって読んだら、私は普通に楽しかった。「お正月にテレビでこんなわちゃわちゃしたドラマやってたら絶対楽しいと思う!」と話したんです。でも宮藤さん的には、好きな時代に行けちゃうから“この人はここでこの情報を知っていて大丈夫?”みたいな整合性を取るのがすごく大変だったみたいで…。
本当に珍しく煮詰まっていたので、とりあえず私は「頑張ってください」としか声をかけられなかったんですけど、2週間くらいして「最後まで行きました」と連絡が来ました。
――完成した脚本は、その時点から大きく変わった部分はありましたか。
そこからはほとんど変わっていないです。市郎と純子の未来をどうするかは前々から決めていたので、その部分まで進んでいましたし。そこから先の“2036年に行った市郎が、2026年の自分に何をすべきか”が難しかったみたいですね。でも読んでいる分には楽しかったです。
――今回は阿部さんをはじめ、キャストの皆さんの現場で印象に残ったことはありますか。
今回はいろいろな時代の阿部さんが出てくるので、このスペシャルドラマ内だけでも、100回以上着替えたらしくて。一応「1年くらいの差ならメイクで老けさせない」と決めていたので、服だけで年齢差を出したんです(笑)。
連ドラの終わりから「運命の日」までが8年ですが、そんなに変わらないよね、と。だから顔は一切変えず、衣装だけで。しかも一度にたくさんの“違う年齢の市郎”が出てくるシーンが多かったので…とにかく阿部さんが大変そうでした。
最後の方は、100回以上着替えることに楽しみを見出していらっしゃって、何秒で着替えられるか、衣装さんやメイクさんと楽しんでいましたね(笑)。さらにミュージカルシーンでも、7人の市郎が踊るので、その撮影は本当にハイになっていました。
実際に見ていただくと分かるのですが、1人ミュージカルなのに7人分という…阿部さんのご苦労が報われてほしいなというシーンです。
――仲さんの印象はいかがでしたか?
渚は報道局に異動になってから、もともと興味はなかったのに主婦の目線で「こうしたらいいのに」という考えが生まれてきて。そこから江口のりこさん演じる都議会議員・平じゅん子さんと出会って強く共鳴するようになって。どちらかというと渚は視聴者目線の存在ですね。前作では(向坂)サカエ(吉田羊)がそうでしたが、今回は渚がその役割かなと思っています。
――江口さんについてのエピソードも教えてください。
江口さん、本当にお忙しい時だったのに、歌も踊りもあって準備が大変そうで申し訳なくて…。さらに雨に打たれたり、体を張ったりするシーンも多かったんですけど、すごく楽しんでくださって、終わった後に「楽しかった」と言ってくださってうれしかったですね。
阿部さんとの掛け合いもテンポが良くて、「こんな政治家が実在したらいいのに」と思うくらいでした。
――最後に、視聴者へのメッセージをお願いします。
連ドラの時にすごく反響をいただいて、視聴者の方が「市郎のおかげで家族や職場でいろいろ話し合えた」と言ってくださったことが本当にうれしかったんです。今回も2026年のお正月に2時間半放送することで、「自分たちの常識は他の世代では非常識」ということや、日本が外交や経済の岐路にある中で、明るい気持ちで、自分の国の未来について周りの人と話し合っていただけたらうれしいです。
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