芥川賞作家・高瀬隼子『うるさいこの音の全部』映画化決定 川床明日香が主演、2026年冬公開…

2025/09/03 10:00 

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芥川賞作家・高瀬隼子の小説『うるさいこの音の全部』を川床明日香主演で映画化

 芥川賞作家・高瀬隼子の小説『うるさいこの音の全部』(文藝春秋)の映画化が決定した。主演は川床明日香。今秋に撮影を開始し、2026年冬に公開を予定している。

【画像】原作者の高瀬隼子(芥川賞受賞会見時に撮影)

 本作は、ゲームセンターで働く主人公・長井朝陽が、ペンネーム「早見有日」として小説家デビューし文学賞を受賞したことから始まる。世間に“早見有日”の名が注目され、兼業作家である朝陽の正体が職場や友人、地元に知られていく。やがて周囲の接し方が少しずつ変化し、次第に小説の世界が現実を侵食していく──そんな物語が描かれる。

 主人公・長井朝陽を演じる川床は、「同じであるのに違う自分への違和感たちをどう映像に映し出せるのだろうと今から胸をときめかせています」とコメント。

 川床は、2014年「第18回ニコラモデルオーディション」にて応募総数11256人の中からグランプリを獲得。雑誌『nicola(ニコラ)』(新潮社)専属モデルを4年半務め、連続テレビ小説『虎に翼』、ドラマ『先生さようなら』『約束 〜16年目の真実〜』ほか現在公開中の映画『長崎-閃光の影で-』にも出演するなど、活躍の幅を広げ、本作で初主演を務める。

 監督は『ぬけろ、メビウス!!』(2023年)の加藤慶吾。脚本は同作でもタッグを組んだ村上かのんが手がける。人間関係の複雑さを緻密に描き出してきた村上が、原作の持つ繊細な心理描写と特殊な構成を、映画ならではの表現で再構築する。

 今回の映画化にあたって、原作者の高瀬は「自分の書いた小説が映像化するのは初めてで、人物が、物語が、スクリーンの中でどのように息をするのか、全然想像できなくて、すごく楽しみです」とコメントを寄せている。

■原作:高瀬隼子のコメント

 思春期の頃の「ほんとうの自分ってなんだろう」という悩みを、成長するにつれ、「青くさい」と笑って、なかったことにしましたが、結局はずっと捕らわれ続けているのかもしれません。
 こう見られたい自分、そう見られてしまう自分、意識している自分と、意識されている自分。
 自分にとってのわたしと、他者にとってのわたしを、イコールでまっすぐ結べないことが、時々叫び出したくなるほどくるしいです。
 この物語を書いたのは、そういった「くるしい」が頭の中でがんがん鳴り響き、うるさくてたまらなかった時でした。
 自分の書いた小説が映像化するのは初めてで、人物が、物語が、スクリーンの中でどのように息をするのか、全然想像できなくて、すごく楽しみです。

■長井朝陽役:川床明日香のコメント

 脚本を読んでみて、仕事をしている私と生活している私。同じであるけど違う。私はこれまでにそのことについて何度考えを巡らせたのだろうと思いました。でもそれは家族や友達といる時の自分、学校や会社での自分といったどんな人も感じたことのあるものなのではないのかと思います。同じであるのに違う自分への違和感たちをどう映像に映し出せるのだろうと今から胸をときめかせています。
 撮影はこれからではありますが、皆様に素敵な作品を届けられるのではないだろうかと確かに感じています。初主演、身が引き締まる思いです。これまでとこれからの全てに感謝して長井朝陽を生きていきます。よろしくお願いします。

■監督:加藤慶吾のコメント

 高瀬隼子さんの書く物語に心から引き込まれ、そして出会ったのが『うるさいこの音の全部』。自分なんかがこの作品を映画化することを考えていいものか…映画化するには難易度が高すぎやしないか…と逡巡しましたが、頭に駆け巡る映像をどうしても形にしたいという初期衝動から、この企画を立ち上げました。
 個人的な話になりますが、私は平日日中に会社員をしながらの映画監督です。そんな自分だからこそ、主人公・朝陽の置かれた境遇に深く共感し、その感情をよりリアルに描けるのではないかと信じています。
 この作品のテーマに共鳴してくれた、素晴らしいキャスト・スタッフの方々と共に、秋からの撮影に向けて準備を進めています。本作と向き合えるかけがえのない時間を噛み締めながら、皆様に届けられる日を楽しみに、撮影を進めていきたいと思います。

■脚本:村上かのんのコメント

 主人公は「小説を書いている人」から「小説家」になったことで、外野からのうるさい音と自身の中で生じる軋轢(あつれき)音に戸惑います。耳を塞ぎたくなるそれらの音は、新しいステージや節目において誰しもが感じるものなのかもと思ったりします。受け入れると諦めるは似て非なるもの。絡みつく音の中でもがく主人公を応援してください。
 高瀬さんからお預かりした大切な物語を壊さないことを第一に、映画には映画の味付けをしました。小説を先に読んでいらっしゃっても、映画を先にご鑑賞になっても、どちらも楽しめる作品になっています。リバーシブルで味わってください。
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