「安全運転しないと、おしおきだぞっ」推しと一緒にドライブできるカーナビに反響 居眠りや危険…

2025/08/08 09:10 

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LINEヤフーのカーナビサービス・Yahoo!カーナビ「推しドラ」

 推し活がライフスタイルのさまざまな場面で浸透している中、社会問題化している危険運転への注意喚起に「推し」の存在がひと役買っている。Yahoo!カーナビに昨年10月より実装された「推しドラ」は、声優やVTuberの声による音声ナビゲートに加え、マップ上で推しが目的地へと案内するサービス。まるで推しが助手席にいて一緒にドライブしているようだと人気を集めている。その一方で、「穏やかな気持ちで運転できる」「眠くならない」などと、安全運転への啓蒙にも繋がっている。LINEヤフーのカーナビサービス・Yahoo!カーナビ「推しドラ」担当者の増田翔さんに、同サービスについて聞いた。

【画像】「ヒロアカ」や「アイマス」も…推しの渋滞情報や雑談で楽しくドライブ「君の運転、すごく落ち着くな」

◆推し活を取り込んだ、一般的なカーナビとの差別化で人気の「推しドラ」

――『僕のヒーローアカデミア』や『アイドルマスターシンデレラガールズ』といったアニメや、VTuberなどのキャラクターの音声案内でドライブが楽しめるYahoo!のカーナビサービス「推しドラ」は、2024年10月リリースからあっという間に人気を得ました。サービス企画経緯を教えてください。

【増田翔さん】 昨年8月に10周年を迎えた「Yahoo!カーナビ」は、ユーザーの利便性、安全性の向上に積極的な機能拡充を絶えず行ってきました。そんななか、より多くのユーザーにドライブを楽しんでいただくための次の時代への新機能として、開発がスタートしました。

 20~30代は、カーシェアやサブスクリプションサービスの利用に抵抗がなく、ライフスタイルの一部に浸透しています。そのなかで、カーナビアプリを通してドライブを楽しむためにもっとカジュアルに利用するツールにしたいという思いがありました。そこから生まれたアイデアが「推しドラ」です。

――数あるカーナビアプリとは異なる「推しドラ」ならではの機能とは?

【増田翔さん】 一般的なカーナビと異なるポイントは、「自車アイコン」「ゆかりの地・雑談機能」「音声コレクション」の3つです。「自車アイコン」は、カーナビ上で自車マークが推しの自車アイコンになり、運転しながら進行方向などによって見え方が変わることで、より推しと一緒にドライブしている感が得られます。推し活の王道グッズであるアクリルスタンドがヒントになって生まれました。

――「ゆかりの地・雑談機能」と「音声コレクション」は、どういった機能ですか。

【増田翔さん】 雑談機能は、推しの音声で道を案内するだけでなく、アニメの聖地などゆかりの地では「もうすぐ◯◯があるよ」などと、その場所にまつわる会話を楽しめます。また、聖地だけでなく記念日などによる発話もあります。そして音声コレクションは、「推しドラ」での台詞を繰り返し聴ける機能です。ドライブ中の会話は、家などの車以外の場所でもアプリで聴くことができるユーザーリクエストから追加された新機能です。こうした推し活と組み合わせるさまざまな機能によって、ドライブがより楽しい体験になるように工夫しています。

◆「無理は禁物だよ?」雑談機能による推しからの注意喚起に「眠くならない!」

―― 一方、ほとんどのカーナビアプリが無料のなか、月額550円(税込)の課金制サービスになります(年間割引契約あり)。多くのファンは、推し活にかける費用を惜しまない傾向にありますが、カーナビというサービスへの出費は、一定のハードルがありませんか。

【増田翔さん】 新しい挑戦となるサービスなので、慎重に進めているところではあります。「Yahoo!カーナビ」は、現在2500万ダウンロードを超えています(2025年1月時点)。この数字は、時代の流れに合わせた機能拡充を10年間続けてきた結果です。そのなかでも「推しドラ」は、健闘している機能になります。特にVTuberのAZKiさんの人気は目覚ましいものがあります。もともとAZKiさんが、「カーナビの声をやりたい」と公言していたこともあり、サービス開始時には「夢を叶えてくれてありがとう」という声をたくさんいただきました。私たちもVTuberの新たな活動のステージを担えたことに嬉しく思っています。

――ユーザーからはどのような声が寄せられていますか?

【増田翔さん】 アニメキャラクターやVTuberと一緒にドライブをしている雰囲気が味わえることへの反響が大きいです。例えば、「あずきちとデートしながらいろんな所に出かけられる最高のアプリ」「コラボしたキャラクターがナビをしてくれるんだけど、ヲタクに優しすぎてたまげる」といった声のほか、「推しのナビのおかげで安全運転につながる」「眠くならない」など、穏やかな気持ちで運転できるという投稿もあり、安全運転にもつながっていると感じています。

――昨今、あおり運転などに対する注意喚起が多く、危険運転への問題意識が日々高まる中、安全運転の啓蒙においても「推しドラ」がひと役買いそうです。

【増田翔さん】 カーナビアプリは、安全・安心を基本に開発に取り組んでいます。それがありつつ、安心・安全を基に、ドライブの楽しさをさらにプラスアルファできていると感じます。安全運転を促すボイスが入るのは自然な流れであり、推しと一緒にドライブを楽しむさまざまな音声の中には、「安全運転しないと、おしおきが必要だぞっ ふふっ」(AZKi)、「運転に疲れちゃったらすぐに言ってね? 無理は禁物だよ?」(AZKi)といったボイスもあります。

 ほかにも居眠り運転防止や休憩の提案といった安全運転を呼びかけるボイスを複数収録しており、多くのユーザーから「毎日楽しく安全に走れています」「AZKiが乗ってるんだから、いつも以上に安全運転!」といった声が寄せられています。

◆推し活市場の拡大で高まる、推しと一緒に過ごす体験価値

――安全運転の啓蒙に関する部分の手応えもありますか?

【増田翔さん】 SNSで「#AZKiナビ 安全」で検索すると、AZKiさんのサービス利用者の声を見ることができますが、安全運転につながるという投稿がこれほど多く寄せられるとは想定していなかったので、われわれも驚いています。安全運転の観点で社会貢献できていることを嬉しく思っています。

――帰省とUターンラッシュの交通渋滞が風物詩になっているお盆シーズンは、「推しドラ」の活躍の場になりそうです。

【増田翔さん】 お盆休みは特にそうですが、長距離運転の機会が増えるとあおり運転など危険運転に出くわすケースが増えます。あおり運転などの危険運転の要因のひとつがストレスと言われていますが、推しの声を聴く「推しドラ」にはストレス軽減効果があり、安全運転につながるでしょう。需要は高まると考えています。

 アンケート調査では、「推しドラ」利用によって、運転中に「穏やかな気持ちで運転できるようになった」など、ポジティブな気持ちの変化があったという回答が半数以上になりました。渋滞シーズンこそ、心穏やかな安全運転につながる“推しと一緒のドライブ”を、ご自身の安全に役立つ推し活のひとつとして、ぜひご利用いただきたいです。

――「Yahoo!カーナビ」ローンチ時の10年前と現在では、オタクという言葉のイメージも周囲の環境も大きく変わっています。3人に1人が推し活をしていると言われる現在の推し活市場をどのように見ていますか?

【増田翔さん】 昔との大きな違いは、いまは人それぞれに推しがいて、それぞれの好きを応援しようという空気があることです。そこには、かつてのオタクのようなネガティブなイメージはありません。そういった時代と社会の変化によって、推し活市場はどんどん多様性を帯びて広がっています。そこに「推しドラ」が許容される理由のひとつがあると思います。

◆推しとの時間が唯一無二のものに…安全運転に貢献する社会的意義のあるサービスへ

――さまざまな推し活のなかで「推しドラ」の位置づけをどう考えますか?

【増田翔さん】 推し活がどんどん一般的になっていくなか、推しと一緒に時間を過ごす体験の価値が高まっていると感じます。そのなかでYahoo!カーナビ「推しドラ」は、運転中の時間を推し活にする、唯一無二のサービスです。SNSには、「『推しドラ』でドライブ回数が増えた」「運転が楽しくなった」という声もあり、ユーザーの推し活の一部を担っている実感があります。

――これから注力していくポイントを教えてください。

【増田翔さん】 若い方を中心に、SNSでシェアするのが当たり前の時代なので、シェアしやすいプロダクト開発は注力したいことのひとつです。また、新規ボイスの追加では、AZKiさんと同じ事務所に所属する兎田ぺこらさんの実施が決定しています。現在マーケティングを進めていますが、この先もどんどん増やしていく予定です。キャラクターの個性に合わせた「推しドラ」を通じて、ドライブをもっと楽しく、安心安全なものにしていきたいと考えています。

――機能面ではいかがですか?

【増田翔さん】 「Yahoo!カーナビ」には音声操作機能があります。ドライバーにとって音声操作は非常に便利だと考えています。現時点ではアイデアの段階ですが、音声操作のような既存の機能と「推しドラ」を組み合わせることで、さらに面白い体験を提供できるのではないかと考えています。より多くのユーザーに、もっとカジュアルに使ってもらいながら、安全運転が広がっていく。そんな推しとの時間が、ユーザーの生活や、社会の役に立つサービスを目指しています。

――今後、「推しドラ」で推しと一緒に過ごす体験は、どういった形で広がっていきますか?

【増田翔さん】 ファンの方は、車の運転時以外にも「推しドラ」を利用しているそうです。電車移動や徒歩での移動、在宅時なども自分なりの推し活を楽しんでいます。アプリさえあればどこでも使えますので、それぞれのライフスタイルにあわせて、推しとの会話や一緒に過ごす時間を楽しんでもらいたいです。伸びしろは無限にあります。

(文/武井保之)
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