令和の育児世代が抱える”孤独”「悩みの本質は50年前と変わらない」、無料の育児相談がとらえ…

無料の育児相談「エンゼル110番」

【グラフ】子育て期、約半数が「孤立感じる」…7割が「ネット検索」するも“解決は3割”
■高度経済成長期の光と影…電話相談は「気持ちを楽にするための貴重な手段」
「エンゼル110番」は、森永乳業が運営している無料育児相談サービス。妊娠中から利用でき、小学校入学前までの子どもを持つ人を対象にしている。無料・匿名で電話相談することができ、一度かけると以前の相談内容を引き継げるため、就学前まで続けて利用するママ・パパも多いという。
サービスがスタートしたのは、1975年の高度経済成長期。同時期にはTBSラジオで『ズバリ快答!テレフォン身の上相談』(1970年)がスタートし、いのちの電話(1971年)が開設。経済成長の陰で様々な思いを抱える人々にとって、匿名で相談できる電話相談は、心の悩みを打ち明け、少しでも気持ちを楽にするための貴重な手段。エンゼル110番も同様で「少しでも育児の助けになれたら」とスタートした社会貢献の取り組みだった。
「1970年代は、高度成長期で核家族が急増し、育児環境が大きく変化した時代でした。“コインロッカーベイビー”といって、赤ちゃんをコインロッカーに遺棄する事件が社会問題化し、“育児不安”という言葉も聞かれるようになった時期です。社会全体が『働け、働け』という空気感で、家族で都市部に移ることも増えてきました。今まで、地域のなかで顔見知りのおじさん、おばさん、おじいちゃん、おばあちゃんがお子さんを見守るというのが当たり前にあったのが、縁もゆかりもないところで子育てをスタートせざるを得なくなってしまう…。ひじょうに痛ましい事件があって、育児不安をどう助けられるか考え、始まった取り組みでした」(エンゼル110番 育児相談員Uさん)
「明るい未来になる」「所得も上がる」と希望に満ち溢れた時代でもあった。その“光”が強いぶん、不安や悩みの影も強く現れる。「今の時代も言われていることですが、“孤独で育児をしている”という不安は強くあった」という。
「核家族で育児の色々なスキルや状況が親から伝承されないまま、見ず知らずの土地で育児をしている方が増えると、孤独であることの不安を抱えたまま育児をすることになります。1975年の当時の報告書によると、相談の大半は、0歳児とくに3ヵ月未満のお子さんの相談が最も多く寄せられていたそうです。当時はネットもなく、自治体の相談もほぼ無かった時代なので、得られる情報がとても限られていました。ミルクの他に果汁をあげていた時代だったので、果汁のあげ方、ミルクや離乳食を拒否するなど、食事にまつわる相談、便や鼻づまり、湿疹についてなど、身体にまつわる相談が多かったそうです」
育児雑誌もまだ出ていない時代で、育児書も『スポック博士の育児書』(1946年)があった程度。近所の繋がりは今よりも助け合いが濃かったかもしれないが、「圧倒的に情報が少ないなかで、よくお母さんたちは育児を頑張っていたな…と当時の育児世代を尊敬したいと感じるのも、この仕事ならではの思いかもしれません」。
■「とにかく大人と話がしたい…」ママが置かれている状況は50年前と”変わっていない”
開設当初と今を比較すると、共働きの環境、得られる情報量の多さ、育児サービスの広がり――状況はさらに変わっていると感じる。しかし、寄せられる育児の悩みを紐解いていくと、「本質は変わっていない」という。
「誰とも話せない、子どもと2人きり…ママが置かれる状況は昔も今もそんなに変わっていないのが現状です。ただ一つ変化をあげるとすれば、今は育児休暇後に復職するのが当たり前になっています。社会と繋がっている、仕事の時間(自分の時間)があるほうが安心するという声もあり、逆に繋がりのない方の方が男性も女性もより深刻な悩みを抱えている印象があります」
電話口で「今日はじめて大人と話しました」という相談者も。「どこに相談していいかわからない、“相談迷子”になっている現状があります。電話をかけてくださった目的をたどっていくと『とにかく大人と話がしたい』という声が多いです」。
今年3月にエンゼル110番が発表した年間統計によると、1件あたりの相談時間が過去最長(19分09秒)という結果が出ている。相談内容は、ネットが普及してから、簡単に得られる基礎的な知識については減っているが、「自分の気持ちは検索しても出てこない。そういうことをいかに受け止められるかが求められていると感じます」とUさん。
「すぐに知りたい情報を得られる一方で、深い孤独を感じている方が安心して話せる場所がどこにもないんです。身近な家族に心配をかけたくない、友達には何度も同じ話は聞かせられない、地域では身バレが怖いなど、孤独を感じる理由にも様々な事情があります。エンゼル110番は匿名性があるので、顔が見えないですし、どこの誰ともわからない人に聞いてもらう安心感があって、相談時間が長くなる傾向があるのではと思います。大人の話し相手のような感覚で回数を重ねて連絡してくださる方もいらっしゃいます。
また、お子さんを預けることが増えているので、保育園と幼稚園との関係の悩みは増加しています。『こんなことを言ったら、モンスターペアレントと思われるんじゃないか』やお昼の休憩時間には『朝こんなに大変だったんですよ』と愚痴を聞く相談もあります。こういったことはリアルでもSNSでも、なかなか話せないですからね」
■親や友人に理解してもらえない”孤独”、良い母親像から抜け出せない令和のママたち
現在では夫婦で育児をする認識が広がりつつあるが、そのバランスは依然として女性に偏る傾向がある。男性が育児休暇を取って、すごく積極的に育児をする人がいる一方で、「育児よろしく」と丸投げされるケースも。「パートナーからの理解が得られないのがもっとも深刻ですが、実母や近しい友人に悩みを共有できたとしても、自身を“良い母親像”の枠に当てはめて、理想から抜け出せなくなっている人もいる」と令和のママたちがはまりやすい現状を話してくれた。
「育児はお母さんがしなければいけない…という価値観を自身に当てはめ、こだわってしまうケースです。実際、実母から『私も頑張ったんだからあなたも頑張りなさい』『頑張りが足りない』『育てやすい子だからいいじゃない』と言われてしまうと、何も言えなくなってしまいます。他に相談しても自分のやり方を否定される、話をまず聞いてくれない、指導をされてしまったという状況になりがちです。
お母さんが『子どもを預けたい』『家事支援も使いたい』という場合であれば、色々なアドバイスができるのですが、お母さん自身の価値観が『良い母親、良い妻でいなくてはいけない』『すべて自分でやりとげたい』と思っていると、こちらは手も足も出ない状態になってしまいます。なかには『少しでも話すと楽になるので、電話してもいいですか?』という方もいるので、話を聞くことしかできないですが、またいつでもお電話くださいねと返しています」
直近では、男性が産後うつになるという報道も注目を集めている。SNSでは「男性の産後うつって信じられない…」「本当の辛さを分かっていない」など、辛辣なコメントが飛び交うが、「興味深いと感じたのは、男性女性に関わらず、育児に没入すると皆同じ状態になってしまうこと」と育児相談員のUさん。
「奥さんに自分を認めてもらえない」、「育児の価値観が合わないから離婚したい」という相談もあります。男性も女性と同じで、社会との繋がりが得られていない、孤独を感じる、“パタニティブルー”とおっしゃる方が多いです。真剣にお子さんに向き合っていると、ママ・パパの差は無くなって、似たような悩みを持つようになる。男性の産後うつというトピックスがあることも、とてもよく理解できます」
■”本当の悩み”が見えてくるまで会話し、心配性ママが肝っ玉母さんに成長
とはいえ、相談は幅広いジャンルにわたる。子どもの個体差、環境差もあるなかで、どのように指針を示していくのか。電話で大切にしていることを聞くと、「相談者さんといかに心を通わせられるか」だと話してくれた。
例えば、「離乳食を食べなくて困る」という悩み。「お母さんはお子さんが食べないことで何が一番心配なのかしら?」と質問すると、「うちの子は大きく生まれたのに、体重が伸び悩んでいて、少しでも大きくしたいんです…」という話になったり、「保育園の食べさせなければいけないリストに焦っているんです」と言われたり、“具体的な気持ち”が見えてくるまで会話を繰り返すという。
「相談者さんに寄り添い、自分の道を自信を持って進めるように、ご自身で気づいてもらえるような会話を心掛けています。入口は育児の悩みであっても、本当の悩みがどこにあるのか見つけていきます。どうしたらその悩みが解決できるのか、一緒に探していきましょうとお話していくと『あ、これだったらできるかも』と納得いただける部分があるので、次の行動ができるような会話で終われるように意識しています」
こういった会話を繰り返して、お子さんが複数いる場合だと長くお付き合いができ、信頼関係が築かれていく。
「3人のお子さんがいるご家庭で、第1子~3子までを振り返って共有すると、お母さん自身も育っていることを実感します。最初はオロオロしていたのに、『3番目だからいいんですよね』と肝っ玉母さんに成長している。そんなお母さんを見守り、就学前まで見守ることができたご家庭のことは特に印象に残っていますね。
就学前までのお子さんを持つ方が対象なので、毎年3月は喜びつつもお母さんたちとお別れしなくてはいけないなという悲しい別れの時期になります」
■SNS全盛期で電話相談に感じるハードルも「電話1本でつながる“拠り所”であり続けたい」
近年は、オンラインの育児相談やテキストで専門家に回答をもらえるサービスなど、様々な種類の育児サービスがあるが、そのなかで“電話相談”は電話を日常で使わない若年層にとってはハードルが高く感じるかもしれない。
しかしUさんは「一度、かけてもらえれば良さが伝わる」と話す。
「電話の強みは、“ぬくもり”を感じてもらえることだと思います。声のトーン、抑揚があるので、感情を伝えやすく、こちらも感情を受け取りやすいです。最初の名乗りで声を聴いて泣き出しちゃうお母さんもいるので、人の声はすごく安心するみたいです。「子どもが泣いて泣き止まないんです」と電話をかけて話しているうちに、子どもが泣き止むというケースが度々あります。それは、電話をされてきたお母さんの“とがっていた声”が安心して、ゆったりすることで、お子さんの様子が変わるみたいです」
“無料の育児相談”であり、社会貢献度が高い取り組みとなるため、これまであまりあえて積極的に発信はしてこなかった経緯がある。しかし今回50周年ということで、パンフレットやチラシを作り、児童館など親子が集まる施設に置いてもらっているという。森永乳業で同サービスを担当する大門さんは「無料で電話できるという部分も含めて、認知度を高めていきたい」と意気込む。
「なるべく目に留めていただける場所に置けないかと模索しています。当社が社会貢献として続けてきた事業ですが、「エンゼル110番」の育児相談員になるための研修は、4ヵ月(190時間)にも及びます。相談員の皆さんが基本的な育児の知識をアップデートし、少しでも悩んでいるママ・パパの助けになりたいと、気持ちに寄り添えるよう日々研鑽しています。電話1本でつながる“拠り所”として、これからも育児に関わるすべての皆さまにとってのサポート・ネットワークの一つであり続けたいと考えています」
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