人気配信者スタンミ “手の震え”から極限引きこもり生活…病を克服し夢を実現、今“オールドメ…

2025/07/25 08:50 

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人気ストリーマー、スタンミじゃぱんに話を聞いた。(画像提供:スタンミじゃぱん)

 YouTube登録者74万人、SNS総フォロワー数200万人超を誇る人気ストリーマーのスタンミじゃぱん(以下、スタンミ)。ハイクオリティーなコスプレやモデル業でも注目を集める一方で、飾らない物言いと温かさ、独特な感性で視聴者からのお悩み相談など素のキャラクターがにじみ出るコンテンツでも人気を博している。そんな彼が長年、憧れ続けていたのが俳優業。病気のために一度は夢を諦め、引きこもり生活に陥るも、手術により克服。今、再び、その夢へと向かって邁進しているスタンミに、自身のこれまでと現在地、そしてこれからを聞いた。

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■青春を失い、引きこもった少年が見出した“もうひとつのステージ”

 人気ストリーマー・スタンミが俳優への憧れを抱いたのは、映画『タイタニック』を観た幼少期の頃だったという。

「たぶん、俳優になりたいというよりも、何かになりきって、人前で演じたいという思いが強かったんだと思います」

 その思いの強さを表すこんなエピソードがある。小学6年生の時の音楽祭でのこと。指揮者に立候補したスタンミは、当日、先生にナイショで映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』の主人公のジャック・スパロウのコスプレで登壇。会場を沸かせつつ、指揮をこなしたのだという。

 そんな明るい目立ちたがり屋だった少年が、その後、一転、高校時代には俳優への夢を諦め、引きこもりに近い生活を送ることに。きっかけは、本態性振戦という手の震えが出る病気だった。

「両手の震えは自分にとって生まれてからずっと悩まされていた症状で、生活にも支障が出るレベルでした。なので、ハッキリ病気と診断された瞬間は、突然、夢への道を閉ざされて落胆するというよりは、ああやっぱり仕方ないのかなという思いのほうが強かったです。それまで俳優になりたくて、オーディションを受けたり表舞台に立つ仕事も何度か経験していましたが、どうしても手が震えてしまって、物理的にこれでは俳優をめざすのは無理だなってどこかで思っていましたから」

 しかし、俳優への憧れは本気で強かったのだろう。病気には完治しうる治療法がないと知り、俳優の夢をキッパリと諦めたものの、「目標を見失い、家に引きこもってゲーム配信ばかりするようになり、高校時代3年間はあまり学校に行かず、卒業後もみんなが大学でワイワイ楽しく過ごす中、家でひたすらゲームに熱中する毎日だった」と振り返る。

 その時期、スタンミはゲーム配信でその界隈では名をあげる存在になっていくのだが、「配信者を志したわけではなく、俳優に代わる何かをずっと探していたのだと思う」と回想。当時の自分を「僕の青春度数は、めちゃくちゃ低い」と断言する。

「とにかく引きこもりのオタクでしたから。俳優への道を断たれて、外見を磨くことに興味がなくなって、体重は80kgあったし、顔もニキビとそばかすだらけ。日焼け止めを塗ったこともなければ、ドライヤーで髪を乾かしたこともなかったです。水を飲むだけで手が震えちゃう、女の子と対面するのも怖くて、デートしたこともありませんでした。だからカッコよくなりたいという欲求はまったくなかったんですよね」

■右手の震え克服で、再び“夢の舞台”へ挑戦

 そんなスタンミに大きな転機が訪れたのは、2021年26歳の時だった。日本で本態性振戦の新たな治療法である脳の手術が受けられるようになり、まずは右手の震えの症状を克服することができたのだ。

「表舞台に立つことを諦めたはずだったけど、やっぱり人前に立ちたいとか、みんなの注目の的になりたいっていう気持ちは残ったままだったんだと思います。右手の震えがなくなった瞬間、これで俳優を目指せる! と思って、それからは外見を磨く努力に励みました。そうやって外見が変わっていく中で、まずはモデルをめざそう、コスプレもやってみようって、新しいことにどんどんチャレンジしていく気持ちが芽生えていったんです」

 コスプレでは『呪術廻戦』の五条悟や、『ハウルの動く城』のハウル、『名探偵コナン』の怪盗キッドなどに挑戦し、クオリティーの高さで絶賛され、人気は急上昇。さらに、配信ではインドアからアウトドアへ。散歩配信などの外配信で人気を得るようになっていった。

「外配信を始めたのは、自分が一時期、極限の引きこもりだったからだと思います。引きこもりの人の気持ちがわかるから、こういう景色があるから見せてあげるよ、俺頑張るぜ、みたいな感覚です」

 その思いどおり、視聴者からは「渋谷ってこんなに人が多いんだ」「スカイツリーを真下から見たことなかった」などのコメントが寄せられ、スタンミは「それが何より嬉しい」と微笑む。

 人気となっているコスプレも、「引きこもりでオタクな自分だったからこそ、配信している面もある」と断言する。

「何かのオタクだったり、好きなことは発信できるものなんだよ、というのを示したかったんだと思います」

 それらの言葉からは、スタンミが自分自身をさらけ出して、好きなことを発信しようとしている姿勢が垣間見えるが、その通り、配信では「視聴者やフォロワー数を増やすことを目的にするのではなく、自分がやりたいことを貫いている」という。

「例えばコスプレは、自分要素を抜いたほうが世の中からの評価が高いんですけど、俺はそっちじゃないなって思うんです。化粧とか加工とかたくさんして、俺要素がなくなってしまったら、俺がやらなくてもいいじゃないですか。もちろん、完全に模倣できたことが嬉しい人もいると思うけど、俺はコスプレをしている自分が嬉しくて楽しいんで。例えば五条悟も自分の輪郭を残しつつ、縦型の尖った輪郭に寄せるというふうに、俺の要素とそのキャラクターの要素とのいい塩梅を狙っています」

■「消費的な時代に抗う」スタンミが描く“最先端×オールドメディア”の両立

 そうして、現在は本格的に俳優への道を歩み始めたスタンミ。昨年8月には岩井秀人プロデュースによる『いきなり本読み!in三越劇場』で初舞台を経験。さらに4月には再度手術を受け、左手の震えも克服し、6月には主宰のミュージカル『H12』を実現した。

 着々と歩を進めているように見えるスタンミだが、俳優業に関しては、現在も「手の震えとか長く引きこもりをしていた自信のなさなど、トラウマや苦しかったことを払拭しながら臨んでいる」そうで、「だからこそ、入念な準備が必要と考え、ワークショップに通って演技の勉強を続けている」と強いまなざしで語る。

 そしてその毎日は「本当に楽しい」と微笑む。

 「今は、演技をすることが本当に楽しいです。台本を読解しても、演技をするとなると自分の技術が追いついていないことも多くて、そこを生めるためにワークショップに通って先生とコミュニケ―ションをとって、作戦会議するということが、自分の伸びしろも感じられて本当に面白い。実際、できることが増えるにしたがって、自分の成長も感じていますしね。この1年でこれだけ成長できたのだから、次の1年はどこまで成長できているかって考えると、自分自身がすごく楽しみなんです」

 ところで、俳優業を再び目指し始めてから、自身のXに「芝居がしたいです!」「テレビに出たいです!」と投稿、宣材資料を貼り付けたスタンミ。ストリーマーではVRchatの先駆者と言われるほどの最先端の職業に就きながら、オールドメディアといわれるテレビにこだわるのはなぜだろう?

「それはもう、自分がテレビっ子なんでとしか言いようがないです。ガキの頃から『笑う犬の冒険』(フジテレビ系)を夢中になって見ていたし、テレビ番組が僕の面白いと思っているものの原点で、テレビの中にすごい憧れを持って育ってきましたから。僕の中では、最先端の配信に触れつつも、憧れを捨てるのではなく、その両立を狙いたいんです」

 そして、最先端とオールドメディアの両方にこだわっているスタンミだからこそ、今、エンタメ業界において危惧していることがあるという。

「今、インターネット内のコンテンツが、さらに消費的になっていくのか、逆に長いコンテンツが流行するのかの分岐点だと思っているんです。僕的には、ショートすぎるとストーリーに深みが生まれないと思うので、消費的な傾向には抗いたいと思っていて、先日も倍速で見れないように意図したショートドラマを作りました。

 例えば、『ONE PIECE』でルフィが戦闘しているシーンがあったら、なんで上腕が伸びてんねんとか、この技を打つためにどんだけ修行したねんとか、そういう背景のストーリーが面白いのに、今のコンテンツは戦闘しか見ていない感覚で、それがめちゃめちゃ悔しいんです」

 だからこそ、スタンミが俳優として成し遂げたいと思うのはこんな世界だ。

「消費的なコンテンツって俳優さんは記号的で記憶に残りませんよね。それって、今ハマっている人が多い推し活文化とも離れている気がするんです。なので、自分は消費的になっている世の中に抗って、ショートドラマやミュージカルが創れたらと思っています。

 例えば、映画が終わった後って、たいていどこで飯食べるとか話しがちで、帰り道まで映画の余韻に浸っているのは、けっこうハードル高いと思うんです。でも、僕は帰り道まで幸せである作品を創りたいし、そういう演技ができる役者になりたいと思っています」

取材・文/河上いつ子
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